14/06/10 00:01 (:創作BL小説)
†紅の涙†


淡い肌、腰まである白髪、紅い瞳の、アルビノの青年。一際目を引くのは、獣のように尖った耳と、シャツの裾から伸びる長い尾。
竜人のラゥは、潤んだ瞳で男に迫る。 「ねぇ……シよ?」
軍人×竜人の、シリアスなシリアヌスBL。異種姦、モブ輪姦、バッドエンド注意。


――――…
淡い肌、腰まである白髪、紅い瞳の、アルビノの青年。一際目を引くのは、獣のように尖った耳と、シャツの裾から伸びる長い尾。
竜人のラゥは、潤んだ瞳で黒髪の男に迫る。


「ねぇ……シよ?」
「お前…明日演習だぞ…。」
「ちょっとだけ、ね、エイヴァン?」
「ラゥは後方支援だろーが。俺は前線だっつーの。無理。」
「ムリ…?ダメ?」
自分より上背のある男を、壁際に追い詰めて。その膝に熱い下半身を押し当てる。
「ね…一回だけ、だからぁ…。」

「だめだ。お前も疲れるだろ?」
「一回くらいじゃ、疲れないしっ。お願い、シないと、おさまらない、からぁ…」
「ッあーもう!わかった!ヤるから!」
「やった!」
ぎゅうーっと、待ち切れずに相手の膝で擦りながら。
「ったく我慢してるこっちの身にもなれや…」


―――…
「…ん…っん、っぁ……ン!」
「っは、ラゥ、あんま、やると…」
「前線じゃないからっ…、いいのっ。」
俺は、そんなにもたないぞ?
自らの上で発情したように欲しがる恋人に、半ば呆れながら。
いつもは強がってる癖に。ヤるっなるとすぐ別人になる。

「ん、ぁッ、エイヴァ、ン!」
「ラ、ゥ?」
「も…、イクッ!ッァ、あ…っ……ッん!!」
「―っク…!」

「…はぁ…ぁ、は…」
「今日はこれで、終わりだから、な?」
「もう…?まだ、足りな…」
「明日早いから。続きは、演習帰ってきてからでも、いいだろ?」
「ん……いいよ。」
愛しいラゥの上気した体を撫でてやる。
「一緒に、風呂行こうか。」
堅物な軍人は、やんわりと微笑んだ。


―――…
「後方って演習の時は何やってるんだ?」
「えーと…」
タオルで髪を拭いてもらいながら、耳をぱたぱたさせる。
「物資の調達とか、戦闘補助員だしたりとか、陣地確保とかー。いつもと変わらないよぉ。」
戦ってないときは、みんなを眺めていられるし。エイヴァンの、茶色い目と黒い髪、軍服に似合うんだよなー…なんて、ぼんやり思いながら。
「前線とか大変そー。死なないでよぉー?」
「演習ごときで死ぬかボケ。死んだら誰がてめぇの相手すんだよ。」
「他にいないもん!みんな途中で尽きるし。」
「……。よく耐えてきたな、俺…。」
「帰ってきたらまたちゃんと耐えてよー?」
「毎度持ってかれそうで怖いんですけど?」
「持っていってあげてもいいケド?」
にやってして、しっぽを布団の中でくねらせる。わざとらしく擦り寄ってみたり。
「…ねむいー。」
「そりゃあんだけ動いてりゃ…。明日寝坊するなよ?」
「んー…起こして…。」
あったかいなぁ。いい匂いするぅ…。

「…落ちんのはやいなお前…。お休み、ラゥ…。」


――――…
一緒に起きて、朝飯食べて、現地に向かう。
案の定ラゥは寝坊しかけて、ただでさえ紅い目が大変なことになっていた。
尖った耳の辺りまで寝癖つけて、こいつ本当に支援してくれるんだろうかと不安になる。

「さっさと降りろ。後方の集合はここだろ?」
「うん。」
「…何をじっと見てる?遅れるぞ?」
「…けっ。いってらっしゃいのキスとかないの?」
つくづくこいつの考えてることがわからん。
「……これでいいだろ?」
昨日の名残か、甘い匂いがする。
「…ん。行ってきます。」

…ふてくされてやがる。何か間違ったことしたか?
黒髪をわしわしとかきあげながら、軍人は戦地へと足を向けた。


―――…
「センパーイ、薬とか足りてますか〜?」
「足りてるぞー。補助戦闘員が足りな…ってラゥにはきついか。」
「すぐヘタれていいなら補助しますけど?」
「いやいやお前に無理はさせられんよ。」
大きな手のひらで、ぐしゃぐしゃと撫でられた。
「また髪縛らなきゃいけないじゃないですかぁ。」
「それくらいやってやるよ。ゴム貸せ。」
「はーい。お願いしますね。」
「……お前さ、笑顔だけ見てたら可愛いのにな…。エイヴァンにあざといとか言われない?」
「アレはカタブツですから気付いてくれませんよぅ…。」
「そうむくれるなって。効くときは効いてると思うぞ?」
「毎回効いてくれなきゃ困ります。」
「…愛されてて幸せだなぁ、アイツは。愛想つかしたらうちに来な?可愛がってやるから。」
「オレなんか囲ったら大変ですよ〜?遠慮しときます。」
「つれないなぁ。」
だって一番好きなのはエイヴァンだけだもん。

「でもしばらく会えないから寂しいです。」
「あー、演習長いよなぁ。部隊違うし一週間は会わないか。」
あれ無しで生きていける気がしない。しょげて自然に耳が下がる。
「次会ったときに思いっ切り発散すりゃいいさ。…そういえばお前、今日肌ツヤよくないか?」
「そーなんですよっ!昨日エイヴァンが…」

―――…
「…んんっ…ダメ…ッ…」
センパイとついつい話が弾んじゃって。そしたらエイヴァンのことが頭から離れなくなっちゃって。
どうしよう。おさまらない。
もう、消灯時間が…。みんな、休んでるのにっ…
「エ…イ…ヴァン…っ。」
布団の中で、このまま、こっそり…ダメ、きっと止まらない。
握り締めたシーツにシワがつく。もそ、もそり、と身動ぐ。荒い吐息、忙しなく動く獣の耳。

「…っは…ぁ。」
ぐっと、声を殺す。

「ん…は…、ゥ…」
やっぱ…抑えらんないっ。
いつの間にか、片手に熱を握っていた。
そっと、静かにやれば…ばれないよね?

「…んっ…ぁ、ん……ッ」
くちゅ、くちゅり…
「…やっ…ば、とまんなっ……!」
エイヴァン、エイヴァン…!
「ん、ぁ…うッッ!」
ビクッ…。
足りな、い…お尻の中が、熱くて、むずむずしてっ…。
震える華奢な指が、白い双丘の間に伸ばされる。
つー…ぬ、ぷ。くちゃ、つぷり、っ。
シーツが汚れることも忘れて、動きは激しくなる。
「ッア、とまん、な…い、よぉ…、んぁッ!」
エイヴァンの、おっきいので突かれてるみたいで…。


「…ラ、ゥ…?こんな時間に…?」
「っ!?セン、パイ?」
起きてたのっ!?
「…寝れない、か?」
「……センパイが、昨日のこと、詳しく聞くからぁ…っ。」
「すまんっ、泣くな…つい、気になってしまって…」
「あれからおさまんないんですよぅ…どうしてくれるんですかぁ…っ!」
「ごめんな…。…深呼吸して、10秒数えてみな?」
「ん、は…い…」
両手を、ぎゅっと握り締めて我慢して。
「っ……はぁー、いち…、に…」

さん…し、ご…ろく、しち、はち…
「きゅう、じゅー…。」
「…少しは、落ち着いたか?」
「ん…はい…。すみません…」
「謝るなって、な?俺が悪かったから。…シャワー浴びてこいよ。見回りのやつには適当に誤魔化しとくから。」
「ありがとうございます…。」
恥ずかしくて、申し訳なくて…。顔から火が出そうになりながら、重い腰を上げたラゥだった。


―――…
曇りガラス越しに透ける、華奢な裸体。ドアの隙間から漏れる湯気と石鹸の香りが、もわり、と灯りに溶ける。
水音に混じる、小さな溜め息。初日でこれ。何回離れ離れになっても、変わらない。

軍の中で一番無鉄砲で、バカで、お人好しで。そんなアイツだから、演習でもうっかり散っちゃうんじゃないかって不安で。
心配し過ぎだって言うけど、心配かけられたくなかったらその向こう見ずな所に薬でもつけて治して欲しい。

…隣にいてくれなきゃ、ヤダよ…?

流れた滴を、ごしごしと乱暴に拭い去る。
明日からもっと忙しいんだから、しっかりしなきゃ。これでも軍人のはしくれだし。
強がって笑う横顔が、冷たい鏡によく映えた。


――――…
薬や食糧の調達、重い武器運び、自分より大きなセンパイ達との仕事。
どれもこれも、ラゥには大変で。みんな優しくしてくれるけど、毎日が筋肉痛。どうも必要なものがつきにくい体らしい。
疲れた、退屈。
でも何より、隣がすーすーしてて。かれこれ一週間以上が過ぎていた。

それも今日が最終日。全部隊が集結して、一連の戦闘をやることになってる。
やっと、会えるんだ。それだけで、身体を奮い立たせて、馬に乗った。

「しっかり援護してくれよ、ラゥ?」
朝靄にすける力強い声。
「ん、わかってる。とりあえず置いてかれないように頑張るね。」
「ついてきたらいいってもんじゃねぇし…。」
ふわふわと風になびく白い髪を弄びなが、撫でてやる。
「お前魔力はあんのになぁ。…なんでそんなに体力ねえんだ…」
「…そんなことオレが聞きたい。」
ある程度の魔法が使えて、戦闘のサポーターになれて、人間にはない特別な機能があって。だから竜人はパートナーとして重宝されてんのに。
どれだけ凄まじい魔力があっても、それを支える体力がなくては、長期戦では使えない。正直、パートナーを換えろとか周りに言われるくらい。

それでも、そばにいるのはラゥじゃないと落ち着かない。


戦いが怖くて、泣きたいくらいだろうに。
どんなときでもめげずについてきてくれる彼を、交換なんてできる訳がない。

「ついてこれなかったら、逃げてもいいから、な?」
「な゙!?大丈夫だよ!」
かっと目を見開いて怒るあたり、今日はやる気満々だったらしい。
「エイヴァンこそ後ろから吹き飛ばされないよう気を付けてよ?」
「援護役が軍人吹き飛ばしてどうすんたっ!?」
一度魔法を扱ったら凄まじい力を発揮する上に、行動が読めないこいつのことだ。やりかねない…。

「戦闘員、位置につけっ!これより演習を始める!!」
「はっっ!」

号令とともに、軍馬を走らせる。気配でついてきているのを確認しながら、ひた走る。目標物として喚び出されたモノ達に向かって。
獅子やドラゴンのようなモノ、人や馬。数はこちらより少ないものの、その強さは今までの演習で体験済みだ。

「ラゥ、行くぞっ!」
最も大きなモノに狙いを定めて、剣を抜く。サイズ、威力ともに軍一を誇る、雷撃を纏う竜殺しの剣。

下半身だけで体をささえ、次々に斬りつけていく。触れた瞬間、傷口がはぜる。
右に、左に、ひたすら前へ。さながら狂人のように、敵の懐につっこんでいく。
気がつけば、牙が迫っていた。
「もっと周り見てっ!」
両の手が重なり、銃口が火を噴いた。持ち主の魔力を使うそれは、牙を砕き退かせる。
「何で今まで生き残れたのか不思議なんだけど!?」
「すまん、悪い。」
「ばかっ、左!来るよ!」
手のひらから直接放たれる魔力の塊に、間一髪で救われた。
銃じゃ間に合わないくらいに近かったらしい。

「前も周りも見て!お願いだからっ。エイヴァンの悪い癖。前しか見てない!」
「自覚してりゃ、治せるってもんじゃねぇよ!」
思いっきり刀身を叩きつけ障害物を散らす。先陣を切るのが、俺の仕事だから…
瞳に焔を灯して、エイヴァンは戦場を駆け抜けた。


――――…
「…ったくお前は!いくら先陣だからって周り見ない阿呆がいるかっ!」
演習で死ぬ思いをし、帰ってすぐ本部に呼び出しを喰らった。どうもエイヴァンの無鉄砲さが祟ったらしい。
「以後気をつけます。」
「毎度それだろう?」
そうそう、毎度死ぬかと思う。なのに次もやるもんだから、そりゃあお咎めも来るわけだ。
「ラゥがしっかりカバーしてくれてたから良かったもんさ。本番でそれやったら怪我じゃ済まんぞ。」
実際、2〜3回三途の川渡りかけてるからね。
…でもきっと、あの人の特攻癖は治んない。本能みたいなもんでしょ?

ふは、と小さな溜め息をつく。疲れたぁ。いつもより盛大に魔力使ったしなー。先に帰らせてもらえないかな?

「せんぱーい…。」
自分ゆり背の高いセンパイを、下からじっと見詰める。それに気づいたセンパイの、困ったように垂れた耳。
「疲れてるんだろう?わかってるよ。先に帰りな?」
「いいんですか?」
「ダメって言ったら倒れそうだし。無理しないでよ?」
「はぁい。ありがとうございます。お疲れ様でしたー。」
肩を叩いて見送ってくれるその手に後を任せて、疲れた足で帰路についた。



―――…
カッ…カッ、カッ…
軍靴の音が、人気の少ない路地に響く。
エイヴァンの説教が終わるの、待てば良かったなぁ…ちょっと怖い、かも…。別に、暗くなってきたからとかじゃ、ないもん…。

いつもと違う、慣れない道。いつもと違う匂い、音。
ふとした拍子に、迷ってしまいそうで。

ひたすら耳を立てて、辺りの空気を嗅ぐ。
カツ…カツ…カッ……コツ…
…?

足音が、増え…
「…―ッッん゙ー!?」
「じっとしてろ、って!騒ぐなよ?」
や、怖い、息が…苦しっ…!
「黙れっての!おい、早く薬打て!」
「ッン゙ー!!」
いや、やめて…ッ、誰!?なに!?くす、り?
首筋に痺れが走る。急激に体から力が抜けていく。こわい…エイ、ヴァン…ッ!助けて!

「さすがに竜人にも効くか。残念、しばらくは動けねぇよ。」
「チッ。漏らしてやがる。分量間違えてんじゃねーの?」
何の…何を、打たれたの?こいつら、誰…?
「まさか。アルビノだし、耐性弱いんだろ。」
ぐっ、と首を絞められて、涙が霞む。四人、五人、六人…自分よりも、おっきい人間が、いっぱい…

体が震えて、言うことを聞いてくれない。感覚はあるのに、思ったように、動かせない。声すら、まともにでてくれない…っ。

「しっかしアルビノの竜人ってだけでも珍しいのに、軍人ときたかっ!」
「これが軍人か?俺らにヤられるとか情けねぇな。」
ぐっ、と噛み締めた唇から血が滲む。情けないとか、恥ずかしいとか。今までにも言われた言葉が鋭く刺さる。でも、それよりむ、怖い、という気持ちが強くて。
ヤられる、という一言に、びくっとした。

「まー、さすがにお持ち帰りしたら追われるだろうしなぁ。なんも言えないくらいぶち犯したら、ばらさないんじゃん?」
「ーー!!や…ッ!?」
犯される―っ!!
状況を把握するには、遅すぎた。
がむしゃらにもがいて、爪をたてて。必死の抵抗も、軽々と流される。
いつの間にか、一糸纏わぬ姿にされていた。
「うわぁー…。めっちゃきれいな身体してんじゃん?」
「真っ白。柔らかいしうまそー。」
「っ、さわん…、なッ…!」
「おいおい、効果切れてきたじゃん。」
「さっさと突っ込もうぜ。」
「じゃあ俺からなー。」
「やめっ…い゙ッッッ!!」
棍棒でも突っ込まれてるみたいで、内臓ごとせりあがる圧迫感にえづく。無理矢理抱かれ、射れられて。しばらく使われていないそこは、血を滲ませ悲鳴をあげた。
ガンガン突かれて、あちこち弄ばれて。どれだけ痛くて気持ち悪くても、体は動いてくれない。

お腹の中で溢れる熱い液体。一度じゃおさまらず、一人じゃ終わらず、身体は重くなっていく。

「さすがにお口は使えないな、牙怖えーし。」
「こんだけ締まってりゃ、ケツだけで十分だっ!」

意識が朦朧とする中、耳をつんざく下卑た笑い声。
せめて、少しでも気持ちよくなれたら。エイヴァンだと思って、ひたすら快楽に浸れたら。
でも…。エイヴァンなら、もっと優しくしてくれる。もっと愛してるってキスしてくれる。あの人なら、もっと…。


現実から目を背けることもできずに、壊されていくのを、じっと耐えるしかなかった…



――――…
どこをどうやって帰ったのか、全く覚えていない。
気がつけば、風呂場で泣きながら震えてた。
こわい、さむい…。蛇口をひねって、これでもかというほど石鹸を泡立てて。

身体の内も外も、綺麗にしなきゃ。こんな、人間にヤられちゃうようなパートナーなんて、棄てられちゃう。エイヴァンに知られたら…、嫌われちゃうっ…。
そんなの、ヤダ…ッ!涙が、止まらない。


がちゃり、バタンっ!
この、荒々しい音は…

「エイヴァンっ!!」
「ラ、ラゥ!おまっ、体拭いてから出てこい!…ラゥ?どうした?」
「…寂しかった。」
辛かった、会いたくてたまらなかったんだよ…?

「泣くなよ、らしくない。本当に、どうした?」

ずくん、と。中が痛む。抱き上げられた腰も、限界だって叫んでる。
でも…。
「エイヴァ、ン。」
「ん?」

「…シよ…?」

身体中の気持ち悪さ、全部拭って忘れさせて欲しいから。


―――…
「んっ、ふ…ッあ、ン…」
「ラ、ゥ…?」
騎乗位で、忙しなく腰を動かすラゥを、止める術を知らなかった。
いつもより激しく、積極的に、貪るように。瞳はこちらを見てるのに、その視線は焦点を結んじゃいない。まるで、イかなきゃ死ぬからと、全力で自分を追い詰めているよう。
そんなラゥを、エイヴァンは止められない。
「エイ…ヴァ、ん!ッッあ!」
切なげに、鳴いて、イく。
どこかおかしい。なにかが違う。
まえから、こんなに、激しく欲しがってた、か?
いつも、こんなに、切羽詰まってた、か…?

違う。
だが、ラゥがイく度に締め付けられ、飲み干されて、まともに考えることができない。ただ、ラゥが治まるまで、じっとしてやるだけ。

息切れもしてるし、お互いもう、出せるものなんて残ってない。何度、生のまま搾り取られたか。もう、快感が辛さに変わっているだろうに。
それでもラゥは、自分で責め立てて。

「ラゥ……ラゥッ!っは、ク…」
恋人が泣いている理由が、わからない。狂ったように鳴くその姿に戸惑い、抱き締めてやることも、できずにいた。


―――…
「…エイヴァ…ン。」
掠れた声を振り絞り、胸に擦り寄る。
疲れた。腰の辺りが、鋭く軋んでる。お腹も、中身が捻られてるみたいに、痛い。

エイヴァンので、いっぱい満たしてもらったら、忘れられると思ってた。

「ラゥ…、疲れただろう。寝なさい。俺のことは、別に構わなくていいから。」
「うん…」
ごめんね。ごめんなさい、エイヴァン。

無理矢理犯されたあの時の感覚。消せなかったよ。

泣いてた訳なんて、多分一生話せない。話したら、きっと呆れて、僕のこと、手放しちゃうんでしょ?

離れなきゃいけないくらいなら、ずっと隠して、今まで通り、暮らしていけばいい。
いつか罪悪感で、胸が張り裂けてしまうかもしれない。
あるいは…嫌な感覚が、深いところで広がって。心が、おかしくなるかもしれない。

ごめんね。それくらい、苦しくて、嫌で、死にたいくらいのことだったから。

もしかしたら、黙って抱き締めてくれるかもとか、ずっと一緒にいてくれるかもとか、希望がない訳じゃない。


でも、万が一、嫌われちゃったら…?


「…泣くな。辛いなら、相談しろよ?パートナーなんだから、な…?」
「…大丈夫。心配かけて、ごめんね。」

手も足も、尻尾もしっかり体にくっつけて、温もりにすがる。

「…寂しくなったら、いつでも、一緒に寝ていい…?」
「好きなときに、隣に来い。」


たった一言に、安堵する。
「……おやすみなさい。」



――――…
まるで何事もなかったかのように、日々は過ぎて行く。

今まで通り、前線で活躍し、支援役として名を馳せて。


ただ前に進む軍人は、傍らの想い人の変化に気が付かない。

毎日変わらないようでいて、夜が過ぎるごとに崩壊していく、その精神に。


今や、二人が繋がらない日など3日とない。
心までの距離を埋めるように、一方通行に。


今夜もアルビノの竜人は、潤んだ瞳でねだる。


「ねぇ……シよ?」

〈end〉

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