スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

「たまに食べると美味しい」と少しで満足する予定が、手が止まらなくて、結局、一人で、ほとんど食べた後に、自分の中の欲望を知る(依瑠)


(とある、お店にて)

銀「すんませ〜ん。パフェ一つ〜」

あや「きゃあ!銀さん!!私に逢いに来てくれたのね!」

銀「何で居るんですか。すんません。帰るんで、パフェ取り消しで」

あや「そんな!今から、変な所に連れ込もうとしてるのね!?でも、銀さんとなら、どこにだって行くわ!私を好きにするが良いわ!」

銀「いや、もう帰るんで」

あや「酷いわ、銀さん。私達、あんな事した仲なのに!」

銀「どんな事!?お前と、した事なんて浮かばないんですけどぉ!?」

あや「銀さんが私のピーをピーしてピーしたじゃない!?忘れたなんて言って逃げるのね!?」

銀「肝心な所、ほぼ、ピーだから卑猥な感じになってんじゃねぇか。勘違いされるんで、止めてください」

あや「いいの。わかってるわ、銀さん。男は、いつだって、そうやって誤魔化すのね。私が受けとめてあげる。だから、銀さんのピーを私のピーにピーすればいいわ!」

銀「だから、何の事だよ!?大体、お前が話してんの、知らねぇおっさんだからぁ!おっさん、困ってんだろうが」

あや「銀さんがヤキモチ焼くなんて!私は銀さんしか見えてないわ!」

銀「それ、さっきと違う、おっさんだからぁ!」

あや「今日は眼鏡が無いから、ちゃんと見えないけど、私は心の目で銀さんだけを見てるわ!」

銀「見えてないだろ!今度はコップに話しかけてるからな!?もう人じゃねぇからぁ!!」

あや「こんな人前でなんて、大胆なのね、銀さん」

銀「あの、もう疲れたんで帰っていいですか」

あや「ああっ、そんな!冷たい目も素敵だわ!」

銀「それ、フォークだからぁぁ!!」

頑張れ ミケさん 負けるな ミケさん(依瑠)


ミケ(俺は何故、このタイミングで来てしまったのだろうか・・・)

エル「だから違うと言っているだろう」

リヴァ「なら、俺が見た光景は嘘だと?」

エル「誤解だと言っているんだ!」

リヴァ「確証がねぇ」

エル「私が信じられないと言うのか?」

リヴァ「この件に関しては譲れねぇ」

エル「リヴァイ!!」

ミケ「まぁ落ち着け、2人共。一体、何があったんだ?」

エル「ちょっとした行き違いだ」

リヴァ「女装してやがった」

ミケ「ん?すまん。よく聞こえなかった」

リヴァ「エルヴィンが女装してやがったと言ったんだ」

ミケ「・・・え」

エル「誤解だ、ミケ。たまたま布が腰に」

リヴァ「鏡の前でポーズとってたじゃねぇか」

ミケ「・・・え」

エル「だから、それはっ」

リヴァ「言い訳は見苦しいぞ。さっさと認めろ」

エル「だからっ誤解だとっ!!」

ミケ「そうか。わかった。取り敢えず俺にも見せてくれ」

リヴァ「・・・は?」

エル「・・・ん?」

ミケ「・・・いや、すまん。続けてくれ」

リヴァ「・・・は?」

エル「・・・ん?」

ミケ「・・・本当に、すまなかった」

鳥ヲ乞ウ<オリジナル小説>(依瑠)


コツン、コツン。

職場の自販機コーナーで休んでいると、何かを叩くような音がして、ふ、と窓の外に目を向けた。

・・・雨か。

朝のニュースで見た降水確率60%は裏切る事無く窓を濡らし、程なくして、ザァという耳障りな音へと変わった。

傘、忘れたな。

そんな事を、ぼんやりと思う。

まぁ、帰るまでには止むだろ。

買ったばかりの缶コーヒーを開けず、熱だけを奪いながら、そういえば、と思い返す。

そういえば、初めて逢ったのも雨だったな。

あの日も俺は傘を忘れて・・・







「止む気配が無いな・・・」

黒雲が立ち込める土砂降りな空を見上げ、ぽつり、独白を漏らす。

周りに人は居ず、溜息に似た息を一つ、吐き出した。

もういっそ、風邪を引くのを覚悟で濡れて帰るしかないか、と重い腰を上げようとした時。

「お〜い!」

背後から誰かを呼び止めるような声と足音がした。

前方に人の影は見えず、まさか気付かなかっただけで、後ろに誰かが居たのかと、先程の自分の行動を思い返し、恥ずかしさを覚える。

「なぁ!」

大声にも関わらず、その声の主以外の気配は感じない。

という事は、離れた場所にいるのだろうか?

今度は安堵の息を吐いた。

「なぁ!」

近付いてくる声と気配に、息を潜める。

早く通り過ぎれば良い。

そんな気持ちとは裏腹に、足音は、どんどんと近付き。

「なぁ、てば!」

肩に、ぽんっ、と手が置かれた。

反射的に、その手を振り払うように立ち上がり、振り向いた。

・・・誰だ?

そこには知らない人物が立っていた。

「運動神経、良いんだな!」

振り払われた事を気にする様子も見えず、ケラケラと笑う目の前の奴に警戒心が募る。

「お前、誰だよ」

「オレ?オレは真田信二!」

挙手をするように手を上に勢い良く突き上げて、名前を名乗られた。

何だ、コイツ。

「で?」

何の用だ、という意味合いを込めて返したはずが。

「お前、篠崎渉だろ」

いきなり俺の名前を答えた真田と名乗った奴に、訝しさで眉が寄った。

何で、コイツは俺の名前を知っている?

「傘、忘れたのかよ?」

無言の俺に対し、先程から変わらない、少し苛つくニヤケ顔で真田は続ける。

「放っておけよ」

今、人と話す気分じゃない。

こんな奴が来るより、雨が止んで欲しい。

そうしたら、無視して帰れるのに。

そんな事を考えている俺の背後で、雨は止む気配を見せないどころか強さを増しているようにさえ感じる。

「一緒に帰ろうぜ」

やけに明るい色の傘を片手でふりながら、真田は俺の言葉を無視して、そんな提案をしてきた。

「お前、ウザい」

「はっきり言うな〜。オレだって傷付くんだぞ!?」

「何なんだよ、お前」

「も〜細かい事は良いからさ、さっさと帰ろうぜ」

傘を、ぱんっ、と開いたかと思えば、腕を強引に引かれ、傘と共に、外に連れ出された。

「離せよっ」

近過ぎる距離に嫌悪感が沸き上がり、振りほどこうとするものの、意外にも強い力で、引き摺られるようにして、その場所から離されていく。

「いいじゃん、いいじゃん。ほら、行こうぜ」

何が良いんだ!?

そう食ってかかりたくなったが、面倒になり、諦めて歩を進めた。

それに気付いたらしい真田は、漸く俺の腕を解いた。

「・・・お前、何で、俺の名前を知ってるんだ?」

口から、ぽつり、疑問が零れた。

「え?篠崎、有名じゃん」

何でも無い事のように言われた言葉に驚愕する。

「は?俺が?」

「知らなかったのかよ、オレがビックリなんだけど!」

何が面白いのか、一層、笑い声が大きくなった真田に苛々が募る。

「馬鹿にしてるのか?」

「全然。篠崎って案外、面白いんだな」

「俺は面白くない」

「笑ってみれば?」

「楽しくも無いのに笑えない」

「やっぱ、篠崎、面白いよ」

脈絡の無い会話に疲れて口を閉ざしたが、さして気にならないようで、真田はベラベラと話続けている。

良くこんなに話題があるものだと感心する程だ。

俺が返事をしなくても関係無い。

真田が何を言ってるか、なんて興味も沸かなくて聞き流していた。

元々、俺は人付き合いが得意ではないし、進んで、しようとは思わない。

それよりも、俺は気になる事がある。

「なぁ」

未だ止まる事無く、話続けている真田の言葉を強引に遮って問い掛けた。

「ん?」

「お前、どこまで行く気?」

もう俺の家まで近いが、歩みが止まる気配もない。

「篠崎ん家」

「は?」

思わず、冷たさと低さを全面に出した声が漏れた。

「冗談だって。そんな怒るなよ」

「ふざけんな」

「オレの家、この先なんだよ。この間、たまたま篠崎が帰ってるのを見掛けただけだって」

俺が、あまりの剣幕だったからか、焦燥を滲ませた表情で真田は理由を口にした。

何故、迷いも無く、この道を進めたのか疑問が解けたと共に、見られた事がある事実に寒気がした。

ふ、と気が付くと雨は小降りになっていて、家との距離に、これなら濡れても大して問題は無いと、するり、傘から身を離した。

「助かった、じゃあな」

「あ、おいっ」

礼を言うのは癪に触るが、濡れないで帰れた事が真田のお陰なのは否定できない。

俺は一言、告げ、未だ何か言っている真田を放り、そのまま早足で家へ向かう。

真田が追い掛けてくる気配が無い事に安堵しつつ、今までの日常が壊れて行く予感を感じていた。





それから。

真田は俺を見掛ける度に声を掛けてくるようになった。

気付かなかっただけで擦れ違う機会は、結構、あったらしい。

だが、俺は、ことごとく反応しなかった。

それにも関わらず、毎回、諦めずに声を掛けてくる真田に、どれだけ物好きなのか、と呆れる程だった。

その内に、真田の根気に負け、一言、二言と返すようになって、いつの間にか、互いに苗字を会話に出すようになり、それから暫くして名前で呼び合うくらいに仲良くなった。

人生とはわからないものだ。

あんなに鬱陶しいと思っていた真田が今は、俺の一番になるなんて。

そんな風に信二と親しくなって1年半が過ぎた時の事。

毎日のように逢っていた信二と俺は、暑い夏の日、2人で公園のベンチに座りアイスを食べていた。

「あっついな〜」

「あぁ」

「渉、暑そうじゃないじゃん」

「馬鹿、言え。俺だって暑いものは暑い」

蝉の声が煩いくらいに響いていて、暑さを誇張させているように感じた。

「オレさ〜、鳥になりたいな」

「鳥?」

「うん。あんな風に自由に空飛べたら気持ちよさそうじゃん」

「ふぅん」

ぐったりと体をベンチに預けて信二は笑う。

「でさ、渉の周りでピヨピヨ飛んでやるよ」

「鬱陶しいから止めろ」

「酷いな〜」

しゃくり、しゃくり。

シャーベット状のアイスが咀嚼されていく音がする。

「渉とは、これから先も一緒に過ごせたら幸せだろうな」

「馬鹿か」

信二が、いつもと変わらないニカリとした笑顔を浮かべながら、言葉を紡ぐ。

「オレは渉が羨ましいんだ」

「何、言ってんだ」

「渉って揺らがないからさ〜、オレの憧れみたいなもんなんだよ」

「・・・そうか」

「そうなんですよ」

「・・・信二」

「何?渉」

「アイス、溶けてるぞ」

「うわっ、本当だ!」

なぁ、信二。

俺はな・・・






ガコンッ。

缶コーヒーが床に落ちた音で、はっと我に返る。

無意識に手の力が抜けていたようだった。

「・・・何、やってるんだ、俺は」

独白が口から零れ落ちて耳を揺らした。

信二は、もう居ない。

文字通り、生が消えてしまった。

もう二度と触れられなくなるなんて想像すらしていなかったのに。

あの時、こう答えてやれば良かった、とか、もっと、ああしてやれば良かったなんて、今更ながらに思う。

素直になれず、憎まれ口ばかり口から出していた気がする。

信二が大切だと、ちゃんと伝えれば良かった。

愛してる、なんて。

今、言おうとしたって、もう遅い。

子供で馬鹿だったのは、信二では無く、俺の方だった。

雨の日になると、信二のいつもの笑顔を思い出す。

近くにいるんじゃないか、なんて。

そんなはず、無いのに。

雨の日だって、晴れの日だって、信二を忘れる事なんて一度も・・・。

何年、経とうが、この痛みと懺悔は薄れる事も無く、俺の芯の部分で燻り続けている。

なぁ、信二。

今の俺を見ても、気にするな、なんて、いつものように笑ってくれるか?

抱き続けている疑問に答えは返ってきやしない。

俺は、持っていた缶コーヒーを一気に飲み干し、缶入れに投げてみる。

ガコン、と小さな音を奏でながら、元々あった空缶の中に、捨てた缶が混じったのを見届けて、その場を後にした。

日常に戻っていく為に。






俺の元に、鳥は未だ来ない。

鈍感なくらいが丁度良い<オリジナル小説>(依瑠)


「あれ、もう帰るの?」

不意に背後から掛けられた言葉に、びくり、肩が上がった。

「は、はい。もう仕事が片付いたのでっ」

正直、この人は苦手だ。

会社の上司で無ければ、絶対に関わろうとはしないだろう。

不運にも残業で、他に誰も居なくなってしまい、2人っきりの今、気付かれない内に、こっそり帰ってしまおうと思ったのに。

「ふ〜ん。仕事、終わったんだ」

厭味を含めるような言い方に、無意識に足が、ずりっと後退る。

今、迂闊に答えてはいけない。

もの凄く嫌な予感がする。

「ははっ。あの・・・」

引き攣るような笑みを浮かべる僕の正面で、にっこりと最上級とも取れる笑顔を浮かべた上司は。

「そっか、そっか。じゃあ、ちょっと手伝ってもらおうかな?」

こてん、小首を傾げながら、至極、残酷な言葉を吐いた。

ボク、モウ、タイムカード、オシタンデスケド・・・

なんて、反論できる訳は無く。

「・・・はい」

情けない返事をするしかなかった。






「じゃあ、コーヒー入れてきてよ」

「・・・はい」

僕は渋々、部屋の隅に設置されたコーヒーメーカーに向かう。

手伝い、とは言っても、平社員の僕が課長の仕事の即戦力になれる訳は無く。

出来る事と言ったら、渡された書類をパソコンに入力するとか、書類のホッチキス止めとか、計算とか、簡単な物でしかない。

課長には課長だけの仕事があるし、平社員の僕が知らされていない物だってある。

現に頼まれた仕事がコーヒー出しとか。

何で僕、残されたんだろう。

しかも、サービス残業で。

コポコポと音を立てながら、抽出されていくコーヒーを見つめながら、そんな事を、つらつらと考えてみる。

が、答えなんて出てくるはずもなく、コーヒーが注がれ終わり、零してしまわないよう慎重に、課長の席まで持っていった。

「お待たせしました」

「本当だよ、遅い」

「・・・すみません」

謝りながら、何で、僕が、そんな事、言われなきゃならないんだろう?と考えていた。

明らかにコーヒーメーカーのセイじゃないのか。

そうは思っていても口に出せはしない。

「ま、いいや。取り敢えず、そこ座って」

「はぁ・・・失礼します」

曖昧に生返事をしながら、指定された課長の隣の席に腰掛ける。

椅子が、ぎしり、沈んだ音がした。

課長は、そんな俺を見る事は無く、目線はパソコンに向けたまま。

「何か歌って」

課長との間にある空間を遮断したくなる程の無茶振りを放ってきた。

「えっ!?無理ですよ!何でですか!?」

「無理とか聞いてない。何でも良いからさ〜」

「音痴なんでっ!!」

「そんなの、聞いてみなきゃわかんないでしょ」

「い、嫌ですっ!!」

顔面蒼白で、頭をぶんぶん振りながら、必死に拒否を示す僕を、課長は一瞥した後、直ぐにパソコンに向き直り。

「強情だな〜、嫌とか・・・」

「無理です!!本当、勘弁して下さい・・・」

弱々しく答える僕にクスクスと笑みを零す課長に泣きたくなる。

「そっか、そっか。そんなに嫌か〜」

「・・・あの?」

何だか笑っているのに不穏な空気を感じるのは気のせいだろうか、と疑問を、ぽろり、口から零すと。

「うん、じゃあ言い方を変えよう」

「・・・え」

くるり、体ごと、戸惑う僕の方を向いた課長は威圧感満載の極上な笑みを見せ。

「課長命令だ。歌え」

低い声で告げた。







「うん、やる気が下がる音痴な歌をありがとう」

「・・・いえ」

大声を出していた訳では無いのに緊張で、ぜぇぜぇと息が上がっている僕の肩を、ぽんっ、と叩いた課長から辛辣な言葉を浴びせられた。

因みに、僕が選んだ歌は、某、青い猫型ロボットが登場するアニメの主題歌だ。

余りの無茶振りに、流行りの歌なんて浮かばなかったし、何より、主人公がガキ大将に虐められている姿が今の僕にピッタリと当てはまったからだ。

あぁ、僕も、あの猫型ロボットが欲しい。

今、切実に欲しい。

「さてと、仕事も大方、片付いたし、帰るかな」

ん〜!と椅子に座ったまま、腕を上に伸ばした課長は、待ち望んでいた言葉を口にした。

「はい!」

漸く解放される!と喜んだ僕が腰を上げようとすると。

「あ、ちょっと待って」

課長は何枚か書類を手に取り、最終チェックをし始めた。

立ち上がるタイミングを逃した僕も座ったまま、何の気無しに課長を見てみた。

俯き気味で真剣に書類をチェックしている課長は、いつもより幼く見える気がした。

いつも茶化してくる時とは違う課長の顔。

そうやって真剣な顔で黙ってると綺麗なのにな〜と、ぼんやりと思う。

まぁ、絶対に言わないけど。

「よし、じゃあ帰るか」

数分後、ぱっと上げられた顔に、つい、顔を逸らす。

見ていた事がバレたら、何を言われるか、わかったもんじゃない。

「はい!帰りましょう!!」

誤魔化すように勢いよく立ち上がると、椅子が、がたり、大きな音を立てた。

そんな僕を尻目に、課長は静かに立ち上がると。

「そんなに帰りたかった?」

「はっ・・・いやっ、課長が早く終わって良かったな〜と!」

「ふぅん?」

危ない、危ない。

はい!って元気良く答えるところだった。

そんな返事をした日には、次の日から仕事が5倍くらい増えてそうだ。

恐ろしい。

きっと課長なら平然と増やしてくるに違いない。

「さ、さぁ、帰りましょうかね!?」

ここは、さっさと帰るに限る。

扉に向かおうと足を踏み出した俺の背後から。

「付き合ってもらったし、送るよ」

恐ろしい言葉が聞こえてきた。

「え?」

聞き間違いだよな。

うん、きっとそう。

そう願って、課長に向き直りながら、聞き直した僕の耳に飛び込んできたのは。

「どれだけ耳が悪いのかな?送るって言ったんだよ」

聞いてなかったとは言わせねぇぞ?という言葉が聞こえてきそうな程、冷たく口端を上げながら、課長は問題発言を繰り返した。

「いっ、いえっ!!そんな申し訳無い事、課長にしてもらう訳にはっ」

こうなっては知らない振りは出来ないと、手と首を、ぶんぶんと振り、遠慮を示す。

と。

ばしり、振っている手首を掴まれ、ぐぐっと力を込められた。

「・・・心遣いって言葉、知ってる?」

「すみませんっ!有り難く送って頂きます!!」

痛い!痛い!!

鬱血する!!

手を離して欲しくて叫ぶように、そう言うと。

「そ?何だ、遠慮してるのかと思ったよ」

激しく同意したい!と本当は言ってしまいたい気持ちを、ぐっと堪え。

「そんなっ!嬉しいです!ありがとうございます!!」

「良かった。断られたら、どうしてやろうかと」

ははっと歪んだ顔で渇いた笑いを零すしか無かった。

と、課長の手の力が弱まり、ほっ、と安堵の息を吐いた時、するり、撫でるように手首を触れて課長の手が離れる。

課長に触れられていた部分が、ぞくりとした熱を帯びて、じわり、じわりと、そこから体に広がっていくようで、戸惑う。

何と無く、課長から手を離された事に淋しさを感じてしまった。

・・・って、僕は何を考えてるんだ!?

頭を抱えてしまいたくなる感覚に抗おうとしている僕に。

「何、面白い顔してるの?さっさと帰るよ」

頭、大丈夫か?と言いたげな課長の声が掛かる。

「はい!帰りましょう!!」

さっきのは気のせいだと、無理矢理に思考を切り替えて、僕は課長の背中を追い掛けた。




まだ、当分、僕の安息の時間は訪れそうにない。

『キス、しよっか』<オリジナル小説>(依瑠)


「キス、しよっか」

突然、目の前にいるヤツの口から発せられた言葉に意味がわからず、俺は小首を傾げた。

「は?」

つい、マヌケな声まで漏れたが、それにヤツは、にっこりと微笑むと。

「だからさ、キス、しよっか?」

「意味がわからない」

急に、何なんだ。

「いやさ、この間、カラオケに行ったじゃん?」

「あぁ」

そういや、2週間前くらいに何人かで行ったな、と思い返す。

「でさ、その時のオレのテーマが恋愛ソングだったじゃん?」

いや、知らねぇよ。

心の中で突っ込みつつ、そういや、コイツ、そんな歌ばっか、歌ってたっけな?なんて、思い出すも、記憶に残って無い。

コイツのテーマになんて興味は無い。

「・・・ふ〜ん」

「それから、なぁんか、モヤモヤしてさ〜」

「何故?」

「切ないキスって、どんなんだろうな?って思って、あぁ、そうじゃん、お前いるじゃん!とかなったんだよね」

「・・・は?」

脈絡が無いだろ。

切ないキスの相手が俺とか。

コイツの思考は、ぶっ飛んでて理解不能だ。

なのに、目の前のコイツときたら、人の呆気に取られた呟きも無視して、何処か遠くを見ながら。

「もう、切ないキスが気になって夜も眠れねぇよ」

なんて言ってやがる。

いやいやいや、寝てるだろ、お前。

目の下の隈も無ければ、肌もツヤツヤしてんじゃねぇか。

「・・・麻実ちゃんとでもしとけば?」

「何で、麻実ちゃん?」

きょとん、とした顔で見られても困る。

「だって、お前、麻実ちゃん好きなんだろ?」

ここ最近のお前のお気に入りは麻実ちゃんじゃねぇか。

名前しか知らねぇけどな。

今日だって、麻実ちゃんがどうとか騒いでただろ。

「麻実ちゃんか・・・麻実ちゃんね・・・う〜ん」

「何が不満なんだ」

そう問い掛けると、尚も小さく「ん〜・・・」と悩むそぶりを見せた後。

「麻実ちゃんは、違うんだよな〜」

「何が違うんだ?」

お前、女の子が大好きじゃねぇか。

「麻実ちゃんは、そこまで何も感じないって言うか、慰め用っうか」

おい、既に体の関係があるのかよ。

敢えては聞かないけどな。

面倒だし。

「・・・へ〜」

「ま、そんな事、置いといてさ、キスしようよ」

置いとくな、持ってこい。

・・・違った。

麻実ちゃんの話題、持ってこられても困る。

「嫌だ」

「何で?俺、上手いよ?」

お前のキス事情なんて知るか。

「そういう問題じゃねぇだろ」

「じゃあ何の問題があるんだよ」

「第一、男同士じゃねぇか」

「オレにとったら無問題。キスしたい、させろ」

「断る、近付くな」

どれだけ俺をからかいたいんだ、コイツは。

顔を引きぎみにして、拒否を示す俺に、溜息を零して。

「む〜・・・わかった」

拗ねたような表情を浮かべて、乗り出していた体を引いたヤツに、納得したか、と安堵の息を吐いた瞬間。

「、っ」

唇に柔らかな感触が広がった。

「ご馳走様」

「なっ、お前っ!?」

「だって中々、首を縦に振ってくれないからさ〜、実力行使?」

そんな積極性はいらん。

「ふざけんなよ」

「とか言って、顔、真っ赤っ赤だし。そんな弱々しく言われても説得力に欠けるよ?」

「お前のせいだろ!?」

ムキになって言い返す俺に、飄々と躱すコイツが何を考えてるのか、さっぱりだ。

知りたいとも思えない。

「何、足りなかった?」

「・・・お前、馬鹿じゃないのか」

「しょうがないな〜」

「ばっ、」

馬鹿、止めろ!と怒鳴ってやるハズだったのに、再度、不意に近付かれて、防ごうと思ったが、時既に遅し。

今度は、しっかりと口を塞がれた。

押し返そうとヤツの胸元を押すも、びくともしない。

「っん、」

その内に、ヤツの舌は俺の歯をなぞり、舌を絡め、馴れないキスに翻弄されていく。

いつしか、俺は押していたはずのヤツの胸元の服を弱々しく掴んでいた。

段々と意識が、ぼぅとしていく中、上手く出来ない呼吸を必死にしようと足掻きながら、ヤツの動きに合わせている自分。

苦しさだけじゃなく、ずくり、下半身が疼く感覚がした。

「っは、」

漸く解放された時には、息を整える為に、浅く呼吸を繰り返すしかなかった。

「キス下手だよね」

「っ、うるっさい!」

まだ、乱れている呼吸を繰り返しながら、そう言い返してやると。

「大丈夫。オレが教えてあげるからさ」

にっこりと笑うヤツの憎たらしい顔が目の前にあった。

「結構だ」

「またまた〜、気持ち良かったくせに」

そう言われて。

キスは確かに手慣れている感じはしたし、気持ちよかったか、どうかと言われれば、否定は出来ない。

だからって、簡単に肯定なんて出来る訳が無い。

「っ、知らねぇよ」

すると、ヤツは微かに笑った。

こんなヤツに負けてるかと思うと悔しくて堪らない。

「まぁ良いけどね」

得意げにも見えるヤツを睨みつけながら、ふと、俺は、多分、またコイツに迫られたら、抗えないんじゃないかと、肯定したくない思いが頭の中を、ぐるぐると巡る。

そんな俺の考えを知ってか知らずか、コイツは、また無邪気ともとれる笑顔を浮かべながら。

「難しい事は考えなくていいんじゃない?」

なんて言った後。

黙ってる俺に向かって、再度、口を開いた。

「ねぇ、だからさ






キス、しよっか」