とある

魔王「……さて」
魔王「書庫で見つけた古い本に載っていた古代の魔術とやらを復元して試してみたはいいが」

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛ……
ｶﾝｶﾝｶﾝｶﾝ
ｶｧｰｶｧｰ

魔王「……どこだ、ここは」

ﾆｬｰﾝ

魔王（魔界でも人間界でもこのような所は見たことがない）
魔王（あの尋常じゃない速さで動いている塊はなんだ？何やら人のようなものが入っていたが乗り物なのか？）
魔王（さきほどまでやかましいほどに鳴っていたｶﾝｶﾝという音も四角い物体が通りすぎてから止んだようだが）
魔王（……それよりも、さっきから見かける人のようなものは何故こんなにも巨大なんだ）
魔王（いや、あれ以外にも全てが巨大なようだ。我がこの空間において小さいだけなのか？）

ﾆｬｰﾝ

魔王「この猫……だろうな、も規格外の大きさだ。多分そうなのだろうな」

ﾆｬｰﾝﾆｬｰ

魔王「とりあえずお前は我にまとわりつくのを止めろ」

ﾝﾆｬｰ

魔王「離れる気配は無し、か。まあいい」

ﾆｬｰﾆｬｰ

魔王（恐らくここは我がいた世界とは異なる世界なのだろう）
魔王（世界を跨ぐ魔術があるという書物を読んだことがあったが本当に存在していたとは）
魔王（転移術によく似た構造をしていたからそれ系統なのだろうと呑気に構えて気安くやるんじゃなかった）

魔王「とりあえず、元の世界に戻るか。術式を開いてっと」ﾎﾟｽﾝｯ
魔王「……あれ」
魔王「も、もう一回」ﾎﾟｽﾝｯ
魔王「まだまだ！」ﾎﾟｽﾝｯ
魔王「これでもかっ！」ﾎﾟｽﾝｯ
魔王「……」
魔王「魔術が……使えん……」ｶﾞｯｸﾘ

魔王（な、何故だ……何故魔術が使えないんだ……）
魔王（もしや、元からこの世界が巨大というわけではなく、ここに来る際に我が縮小してしまったというのか？同じように我の魔力も小さくなったと。それで魔術に必要な魔力の量が足りぬと）

魔王「……」
魔王「……どうしよう」

ﾆｬｰﾝ

魔王「ﾆｬｰﾝでは何をすればいいか分からないではないか……」

ﾆｬｰﾝ

少女「あっ、いたいた！もう、どこに行ってたの、ねこ！」
魔王「ん？」
少女「今日は中々帰って来ないから心配したんだからねー」
魔王「これはお前の主人か？」

ﾆｬｰﾝ

魔王「そうか」
少女「もう、ほら、帰るよ。……って、なんかいる？」
少女「黒い……え？何これ人形？」
魔王「失礼だな。我はこれでも人形でもないぞ」
少女「ｼｬﾍﾞｯﾀｧｧｧｧｧ！？」
魔王「やかましい……」
少女「ううううう動いてるし何これ？！本当何これ！？」
魔王「だからこれではない。我は魔王だ」
少女「あうわわわわまさかこれ呪いの人形的な？霊が入っちゃってます的な？どうしよ私呪われるのかな何回捨てても舞い戻ってきますな展開になったりするのかなどうしよぉぉぉぉ」
魔王「違うと言ってるだろうが！」ｸﾞｲｯ
少女「ひぃ！」
魔王「我は魔王だ！呪いの人形でも霊が入っちゃってます的なものでもないわ！分かったか！」ｸﾞｲｸﾞｲ
少女「わわわわわわわ分かりました！分かりましたから髪の毛引っ張るの止めてぇぇぇぇ！」
魔王「ふん、ならよい」ﾊﾟｯ
少女「うう……痛い……」

少女「……ええっと」ｼﾞｯ
魔王「なんだ？」
少女「魔王？さん、なんです、よね……」
魔王「我は何度もそう言っただろう」
少女「夢とか幻とか幻覚じゃないんですよね？」
魔王「もう一度髪を引っ張ってやろうか？」
少女「ごめんなさい止めてください。……魔王とかその辺は置いといて、本当に存在してるものなんだこれ」
魔王「これではない」ｸﾞｲｯ
少女「魔王さんです！ごめんなさい魔王さん！」
魔王「ふん」ﾊﾟｯ

少女「うう……何故魔王さんはこんなところに？」
魔王「使いなれない魔術によって飛ばされ帰れなくなった、といったところか」
少女「魔術……なんてファンタジー……。帰れないって、またその魔術を使えばいいのでは？」
魔王「……ふかーい事情があって魔術が使えんくなったんだ」
少女「そ、そうなんですか……」
魔王「そうだ」
少女「大変ですね……」
魔王「全くな。元の世界に戻るまでどう生きていけばいいか見当もつかん」

少女「……」
魔王「……」
少女「……」
魔王「……」
少女「……」
魔王「……」
少女「あの」
魔王「なんだ」
少女「魔王さんがよければの話なんですけど、その魔王さんがいた世界に戻れるまで私の家に来ませんか？」
魔王「いいのか？我としては都合のいい話だが」
少女「正直提案しといて後悔がちらつき始めてもいるんですが……。もしこのまま魔王さんを放っておいて野生生物の獲物にされたり車とか電車に轢かれて……その、……大変なことになったとしても後味悪いし……」
少女「だったら、その間だけうちにいてもらった方がマシかなーと」
魔王「そうか。お前がいいと言うのなら我も遠慮はしないぞ。お前の言う大変なことになる気も更々ないしな。我を連れていけ」
少女「はい、じゃあ」ｽｯ
魔王「……なんだこの手は」
少女「なにって、手の上に乗ってもらおうかと。じゃないと運べないし」
魔王「魔を統べる王ともある我が人間の手の平に乗ると言うのか……。それはまたどうにも気は進まないが……仕方ない、か……よっこいしょ」
少女「うわじじくさい掛け声」
魔王「うるさい悪いか」
少女「悪くないから睨まないでください。よし、それじゃあいきましょうか。ねこ、帰るよ」ｽﾀｽﾀ

ﾆｬｰﾝ ﾀｯﾀｯﾀｯﾀ

魔王「ふむ、これから世話になるんだ。改めて挨拶でもしようか」
魔王「我は魔王だ。お前の名は何と言う」
少女「私は少女。そしてこっちの猫はねこです」

ﾆｬｰ

魔王「猫の名前にねことはこれいかに……」
少女「ねこって呼ばないと反応しないんですよっ。ともかく、これからよろしくお願いしますね」
魔王「まあ、よろしくしてやらんこともないな」
少女「う、なんか上から目線……手乗りの魔王のくせにぃたたたたたたたた！痛いです髪の毛引っ張らないでください！」
魔王「ふん」ｸﾞｲｸﾞｲ

ﾆｬｰﾝ










―――

以前ツイッターでちょろっと呟いた手乗り魔王ネタを書いてみた我ながら意味が分からない
続きは書かないというか書けない

魔物１「あ、側近様ー。こんちはー！」
魔物２「こんにちは、側近様」
側近「……ああ」
魔物１「またたんまりと書類かかえちゃって！仕事大変そっすね！」
魔物２「……？その書類は本来私たちがやるはずのものでは？」
側近「いや、これは私がやっておく。お前らはこれの代わりに勇者の相手でもしておけ」
魔物１「マジっすか！マジっすか！わーい！また勇者ちゃんと遊べるー！」
魔物２「……」
側近「ではな」ｽﾀｽﾀｽﾀ

魔物１「側近様ばいばーい！ひゃほーい！早速勇者ちゃんのとこ行っちゃおーぜ魔物２！」
魔物２「側近様……随分と気がたっていらっしゃる」
魔物１「え？マジで？え？どこが？」
魔物２「魔王様曰く「側近はいらつくとひたすら一つの事しかしなくなるからのぉ」らしいですよ。今回は書類にでも没頭するのかと」
魔物１「なーる。ん？でも何にいらついてんだろな！？」
魔物２「まあ、恐らくは……」
魔物２（勇者様のこと、だろうか）



―――



側近「………………」ｶﾘｶﾘ……ﾍﾟﾗ

側近「…………」ｶﾘｶﾘ……ﾍﾟﾗ

側近「……」ｶﾘｶﾘ……ﾍﾟﾗ

側近「……」

側近「これで全部、か。思ったほど時間はかからなかったな」
側近「他に何かやることはあっただろうか」

側近（……何かに集中していなければ、苛々としてくる）
側近（あの勇者が来た日からだ）

側近（魔王様も魔物たちも勇者勇者とあのふざけた体質のせいで骨抜き状態）
側近（勇者は勇者で呑気に魔王城で暮らして）
側近（本来勇者と魔王様始め魔物たちは血で血を洗うような戦闘を繰り広げるものではないのか）
側近（やれ遊ぼうだのやれお茶をしようだの）
側近（これは明らかに異常ではないのか？それともそう感じる私だけが異常なのか？）
側近（……）

側近（「勇者」と「魔王」が仲良くしているのは歴史から見ても異常なんだろうが、相手に敵意を持たなければ仲良くするのも頷ける、か）
側近（敵意どころか好意の塊のようなものだしな。それは、仲良くもするだろう）
側近（勇者を疎ましく思うのはきっと私一人だけ）
側近「……やはり、私だけが異常なのか」ﾊｧ

側近（私は勇者が嫌いだ）
側近（暇を持て余す勇者の相手になるよう部下に指示をだしたりしているが勇者が嫌いだ。のどが渇いたという勇者に紅茶を入れたこともあったが勇者が嫌いだ。暑いという勇者に氷系の魔物を呼び出して向かわせたりもしていたが私は勇者が嫌いだ）
側近（感情とは裏腹に行動が勇者に尽くしまくっているが、それでも勇者が嫌いなんだ）

側近「嫌いでは、あるんだ……」

側近（そう、嫌いだからと無視をするくせ、変に世話を焼いて後で自分は何をしているんだと後悔する）
側近（その度にどす黒いもやが胸にかかるようだ）
側近（いっそのこと魔王様や他の魔物同様に心底勇者に骨抜きになっていればこんなものを持て余さなくてすむのだが）
側近（私だけが中途半端に勇者にほだされているのは、きっと……）

側近（……いや、もう考えるのは止めよう）
側近（仕方ないことだ。どうしようもない）



魔王『そんなくだらぬこと、気にするなよ、側近』



側近「魔王様……」
側近（あなたはああ言って下さいましたが）
側近（やはり、）
側近（……あなた方とは違うのだと、こういった時に思い知らされてしまいます）

勇者「うーん、今日もいい天気ー」のび〜

勇者（魔王城に住みだして早数日か……）
勇者（正直な話ちゃんと暮らしていけるか不安だらけだったんだけど）
勇者（不要な心配だったなぁ）
勇者（むしろ色々と甘やかされてる気もするし）
勇者（流石人外に好かれる体質……なんてね）

勇者（みんな優しいし親切だし）
勇者（おかげさまで不自由なくやってけてるし）
勇者（……うん、やっぱりここに来てよかったかな）
勇者（一部熱が入りすぎちゃってるひとがいるのも否めないけど）苦笑

魔物１「あ、勇者ちゃんだ！おはよう！」ﾆｺ
魔物２「ほんとだ、勇者様、おはようございます」ﾆｺﾘ

勇者「魔物１、魔物２、おはよう」ﾆｺ

魔物１「うひゃー！勇者ちゃんに笑いかけてもらえた！可愛い！超可愛い！今日も俺頑張れる！」
魔物２「はいはい、では今からお仕事に励みましょうか。昨日同じこと言ったわりにやり残したやがった書類をまずは片付けてくださいね」
魔物１「は〜い……」

勇者「くすくす」

魔物１「やべ！勇者ちゃんに笑われた！けど可愛いからいいや！」
魔物２「では、失礼しますね、勇者様」
勇者「うん、頑張ってね」
魔物１「勇者ちゃんにそう言われちゃ頑張るほかないよ！じゃあね！」

勇者「今日も元気だな〜あのひと」
魔王「今日も今日とて勇者ちゃんは愛らしい」ﾃﾞﾚ
勇者「魔王さん。おはよう」
魔王「ああ、おはよう」
勇者「魔王さんも今日も可愛く幼女してるね」
魔王「ふふふ、そうか？」ﾆｺ
魔王「んむ、それにしても勇者ちゃんも随分とここに馴染んできてるようだな」
勇者「おかげさまで。みんな優しくておもしろいからありがたいよ」
魔王「一人除いて、か？」
勇者「……あはは」

側近「……」ｽﾀｽﾀ
魔王「ん？おお、側近じゃないか。おはよう」
側近「おはようございます魔王様。今日も良い天気でございますね」
勇者「おはようございます、側近さん」
側近「……」ﾌﾝｯ
勇者「今日も今日とて不機嫌でいらっしゃる」
側近「誰のせいだと？」
勇者「間違いなく私のせいだろーけど」
魔王「こらこら側近、いい加減まともに挨拶の返事くらい返してやれ。勇者ちゃんが可哀相じゃないか」
側近「……申し訳ありませんが、急ぎの用があるので失礼いたします」ｽﾀｽﾀ

魔王「……逃げおったか」
勇者「なんていうか頑なにツンだよね、側近さん。もうそろそろ分かりやすくデレが来てもいいと思うんだけど」
魔王「デレが欲しいのならいくらでも予がデレてやるぞ勇者ちゃん。ほぅらぁ〜〜」ﾃﾞﾚﾃﾞﾚ
勇者「や、魔王さんのデレはそろそろ胸やけしそう」
魔王「ひどい……」ｸﾞｽﾝ
魔王「ま、良いがの。勇者ちゃんが可愛いから」

魔王「それより、分かりにくくはデレておるのか？側近の奴」
勇者「ん〜、まあ私が勝手にデレと解釈してるというか」
勇者「嫌われてはないんだよな〜きっと。って思えることが何度か」
勇者「たとえば……」



―――



勇者『あーあー、なんか暇だなぁ』
側近『……』

魔物１『勇者ちゃーん！』
勇者『あれ、魔物１に魔物２。どうしたの？』
魔物２『何やら勇者様が暇を持て余していると側近様より伺ったもので。私どもでよろしければ、是非暇潰しにお使い下さい』にこ
勇者『側近さんが……？』
魔物１『つーわけで！遊ぼーぜ勇者ちゃん！勇者ちゃんと遊べるのも職務のうちとかラッキーすぎるぜー！』
魔物２『まったくですね』



―――



勇者「ってな感じにいつも私が暇してるとわざわざ部下のひとたち呼びつけて私の相手をさせてるんだよ。私は嬉しいけど」
魔王「そんな回りくどいことせずとも側近が直に話相手にでもなればよいのにな。それか予を呼べばよいのに！予も勇者ちゃんと遊びたい！」
勇者「ほかにもねー」
魔王「あれ、予は無視？」



―――



勇者『なんだか喉が渇いてきちゃったなー』
側近『……』

勇者『あー、でも飲みに行くのもめんどくさいしなー』ｶﾁｬﾝｯ
勇者『？ 紅茶……？』

側近『……』ｽﾞｽﾞｯ

勇者『もしかして側近さんが煎れてくれたの？わぁ、ありが』
側近『勘違いするなよ勇者。私が紅茶を飲みたかったから煎れたのであって貴様のためなどでは決してない。ただ少々作りすぎてしまって捨てるのがもったいないなかったからくれてやるだけだ』ﾌﾟｲｯ
勇者『……』

勇者『……』
勇者（ポットどころかヤカン一杯の紅茶を少々作りすぎた、ねぇ……）



―――



勇者「ってことがあったり、」



―――



勇者『……うーん、なんだか今日は日差しが強くてちょっと暑いなぁ』
側近『……』

ビュォォォォ……

勇者『……で』
勇者『なんで私は氷系の魔物たちに囲まれてしまっているのでしょうか』

＼ﾕｳｼｬｻﾏｰ!／
＼ﾕｳｼｬｻﾏｶﾜｲｲ!／
＼ﾓｳｱﾂｸﾊﾅｲﾃﾞｽｶ?／
＼ﾜﾚﾜﾚｶﾞｽｽﾞｼｸｼﾃｻｼｱｹﾞﾏｽ!／

勇者『涼しい通り越して最早凍りそうなんだけど』
勇者『ところで君たちはどうしてここに？』

＼ｿｯｷﾝｻﾏﾉﾒｲﾆﾖﾘ!／

勇者『……うん、なんかそんな気はしてた』



―――



勇者「ってなことがあったり」
魔王「なんだ、側近も予に負けず劣らず勇者ちゃんを甘やかしておるではないか」
勇者「うん、やっぱ甘やかされてるんだね私。まあそれはいいとして」

勇者「どう考えたって嫌われてるようには思えないんだよなー。表面上はアレだけど」
魔王「むしろ側近は勇者ちゃんのこと大好きすぎるだろう。予以上に構いおって。しかし側近自体に自覚があるだかないんだか分からんが……いや、ないか。表面上はアレだもんな」
勇者「ああ、じゃあやっぱ今までのやつはデレ部分で決定なのかな」
魔王「そうさな。あいつはあまり素直な方ではないとは思ってはいたが随分とめんどくさいツンデレだったのだな」
勇者「指摘でもしたら全力で否定してきそうだよね」

魔王「からかうネタには持ってこいだが」ﾆﾔ
勇者「わぁ、魔王さんのあくどい顔初めて見た」
魔王「くっくっく……」

魔王「勇者ちゃんは可愛いなぁ〜ほんと可愛いなぁ〜」ﾃﾞﾚﾃﾞﾚ
勇者「あ、はははは……(後ろから死線が……)」
側近「……(羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨まry)」



―――

ブログ更新してねぇ！ってことで間に合わせのモテ勇者一行落書き

魔物「側近様ー！」
側近「ん、どうした」
魔物「そ、それが……」

側近「な、なんだって……！魔王城に勇者が……！？」



―――



側近「っち、私が城を離れている隙にとは何と間の悪い」ｻﾞｻﾞｯ
側近「その上単身にも係わらず未だ傷一つ負っていないだと？」ｻﾞｯ
側近「心配などいらないだろうが……魔王様……」ｻﾞｻﾞｯｻﾞｯ
側近「どうか、ご無事で」ｻﾞｯ

側近「城が見えた……！」



―――



側近「魔王様ぁぁぁぁぁぁ！！！」ﾊﾞｯﾀｰﾝ！

側近「遠征先の魔物より勇者来訪の報告を聞き急いで戻ってまいりました！」ぜぇぜぇ
側近「杞憂などとは分かっておりますがお怪我などしt」

魔王「うへへへ、勇者ちゃんのほっぺたぷにぷにだお〜」ぷにぷに
勇者「あ、あの、その、もうそろそろ離れてくれると嬉しいかな〜なんて」
魔王「控えめな拒絶がまた愛らしい。だがしかし予は離れんぞ。勇者ちゃんが可愛いから」ﾃﾞﾚﾃﾞﾚ

側近「」

魔王「可愛いな〜可愛いな〜勇者ちゃんは世界一可愛い」ﾃﾞﾚﾃﾞﾚ
側近「」
魔王「あ〜可愛い…… と、ん？そこにいるのは側近ではないか。遠征はどうした？」
側近「」
魔王「？ どうしたのだ、石のように固まりおって」
側近「」
魔王「側近？」

側近「……だ」
側近「夢だ。夢だ夢だ夢だ」
側近「夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ！」
側近「これは悪夢だ！！」

魔王「何を言っておるのだ側近。ここは紛れもなく現の世よ。でなければ勇者ちゃんまで淡い夢となってしまうだろう。それは予が許さん」
側近「嘘だー！夢だ！夢であってくれ！美しく誇り高き私の魔王様がよもや小娘勇者一匹に骨抜きのべたべたのデレデレだなんて！」
魔王「勇者ちゃんは髪の毛もサラサラで気持ちいいのお〜。何時までも撫でていたくなる」ﾃﾞﾚﾃﾞﾚ
勇者「何時までもは勘弁」
側近「言ってる側から！」

魔王「そんなことより、もう一度聞くが遠征はどうしたのだ？」
側近「そんなこと！？勇者に骨抜きにされてあまつさえ膝の上でベタベタデレデレラブラブしてる現状をそんなこと！？遠征などこの由々しき事態に比べれば塵ほどの価値もございません！何故勇者などにベタ惚れに……！」
魔王「勇者ちゃんが可愛いからだ！」
側近「そんな回答求めていません勇者羨ましい！」

勇者「あの〜……」
魔王「ん？ん？どうしたのだ勇者ちゃん？」
側近「」ｷﾞﾛ
勇者「」ﾋﾞｸｯ
魔王「側近、勇者ちゃんが怖がっているではないか。睨むのをお止めよ」
側近「はい……」しぶしぶ

勇者「あの、側近さん」
側近「私？」
魔王「え？え？予にではなく側近に用なのか？そんな、予は眼中にもないとでも言いたいのか勇者ちゃん予を忘れないでおくれ勇者ちゃ」
勇者「魔王さんはちょっと静かにしててね」
魔王「はーい！」


勇者「さて、側近さんがさっき言ったこの現状についてなんだけど、」
勇者「十中八九、私の体質のせいだと思うんだ……」

側近「……」
側近「……は？」ﾎﾟｶﾝ
勇者「ですよねー、そんな反応だろうと思ってましたー」

側近「体質、とは一体どういうことだ」
勇者「なんていうか、昔から動物とか魔物とか……人以外にはめっちゃくちゃ懐かれてしまって」
側近「人外に好かれる体質……？」
勇者「のようなんだ」にへっ

側近（そ、そんな体質初めて聞いた……というよりそんな体質が存在するのか？いや、しかし、それなら魔王様がデレデレなのにも納得がいくような……）
側近（……今さら気付いたが、この部屋に数多の魔物たちがいるな。魔物様の膝元まで来るような輩はいないが一同勇者を熱く見ている……）
側近（……）

側近「と、りあえずは、そういうことで納得してやる」
魔王「くくっ、懐疑心丸出しな目をしておるのぉ、側近よ」
勇者「まあ、仕方ないと思うけど。私だって、自分がこうじゃなかったら信じられないし。きっと私も……」
魔王「私も？」
勇者「えっ、あ、いや、なんでもないよ魔王さん！」
魔王「そうか」

側近「……で、だ。勇者よ、お前は一体何をしにここへ来た」ｺﾎﾝ
側近「仮にもお前は『勇者』なんだろう？ しかしお前からは殺意はおろか敵意も何も感じられない。魔王様や我々を始末しに来たわけではないと見える」
側近「お前の真意は何だ、勇者」
魔王「そんなの、勇者ちゃんは予に会いに来たに決まってお」
側近「魔王様はお黙り下さい」ｼﾞﾛｯ
魔王「……勇者ちゃ〜ん側近が怖いよぉ」
勇者「私の真意、か」ﾎ

勇者「一体何なんだろうね〜」ﾆｺ

側近「……」
勇者「そんなあからさまに値踏みするような視線向けないでよ」」
勇者「敵じゃない、でとりあえずは手をうってよね」
側近「しかしな、」

魔王「もうよかろう側近。そんなに知りたければこれから知っていけばいいだけのことよ」
勇者「そーそ」
側近「ちょっと待てください」
側近「『これから』知っていけばいい、というのは……」

魔王「ん？勇者ちゃんは今日からこの城に住むことになったからな。時間はいくらでもかけられる」
魔王「予もまだまだ勇者ちゃんには聞きたいことが山ほどあるのだぞ。好きな食べ物とかー嫌いな食べ物とかー好みのタイプとかー趣味は何かとかー」
側近「う」
魔王「体はどこから洗うのかとかー寝る時に明かりはつける派なのかとかー朝食は何を食べるのかとかー」
側近「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」

魔王「むふふ、楽しみよのお」ﾆﾔﾆﾔ
勇者「こ……これからよろしくお願いするね〜」
側近「」











―――

見切り発車で魔王ＳＳ(っぽいもの)開始