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魔物に囲われの続きを書きました〜


しばらくはこちらでも告知をしようと思います。
よろしくお願いいたします。

パーティーに置いてけぼりにされたら魔物に囲われたんだけど

リンク間違いなどありましたら教えていただけると嬉しいです

お久しぶりです!


こんばんは。台風が接近していますが、皆様大丈夫でしょうか?
私は九州ですが、今のところ大丈夫です。

さて、ようやく準備が整ってきたのでご報告をさせてください。
この度、BL小説サイト「薇仕掛け」は引越しします。

引っ越すといいましたが、サイト、そしてこの日記もそのままにしていきます。主に活動する場を移すと言ったほうが正しいです。新しい薇仕掛けは「薇仕掛け2nd」という名前で、ブログ形式になります。
見づらいところも多々あると思いますが、どうかよろしくお願いいたします。

こちらからどうぞ↓
薇仕掛け2nd


私事ですが、2019年の11月に、できればかかりたくなかった病気がわかり、「これは2020年はサイトを続けられないかもしれないぞどうしよう。ただでさえ遅筆なのに!」と焦りました。そのせいで子豚がとっても駆け足で完結してしまいました。本当にすみません。
もっと丁寧に書きたかったのですが、治療が始まったら書けるテンションに持っていけないかもしれないと思ったのです。今読むとびっくりするぐらいの駆け足ですね。ごめんねティカル〜。プラムももっと書きたかった〜。

しかし現在は治療のおかげで、またいろいろ書いてみたいなという気持ちが戻ってきました。体の様子を見ながら、また楽しく書いていきたいと思います。
先日Twitterで、こっそりお名前を募集したところ、チャラン・ポラン様が快くご提供してくださり、引っ越し第1号はルツとアロンのお話になります。チャラン・ポラン様ありがとうございました。

ルツとアロンの話は、最近、広告等で「パーティーをクビなったらうんたらかんたら」という類をちょこちょこ見るので、そんな感じの話にしていきたいと思っています。タイトルで察しのいい皆様には、今後の展開がモロバレな気がするんですが、そういうタイトルをつけてみたかったのです。HAHAHA。


いきなり引っ越し先に飛んでいただくのも申し訳ないので、同じものをこちらに載せておきます。
気に入っていただけたら、新しい薇仕掛け2ndにて、楽しんでいただけると嬉しいです。

では、これからもよろしくお願い致します。

*****
パーティーに置いてけぼりにされたら、魔物に囲われたんだけど
*****



荷車を牛に曳かせて、森の中を進んでいく一行がある。

「俺がまだ若いときは、このあたりの道はもっと荒れていて、とても進めたもんじゃなかったさ」


いまでも十分じゃないがと、話し、牛を操っているのは商人。この一行の主だ。ほかに息子と助手と、そして彼らを囲むように6人の男女が歩いていた。囲んでいる彼らは商人ではない。冒険者である。

ゴトゴトと揺られながら、商人は自分の昔話を続ける。


「見習い時代の親方はひどいもんで、荷車のほかに俺らにも商品を詰めた袋を背負わせて、山を歩かされたっけなぁ」


冒険者と言っても、今は商人が雇った護衛が彼らの仕事だった。町々を移動するには森や川、山や海を越える時もある。そしてそんな場所には、魔物の危険が潜んでいる。さらにこのあたりは、魔王の住む城から比較的近いため、遭遇する魔物も強く、得物を持っていれば勝てるような雑魚ではない。知性もそれなりにあり、一筋縄ではいかない者もいると聞く。

 

「昨日も聞いた話だよな…?」

「酔っていればカウントしないんだろうさ」

商人たちを守るように等間隔に歩いている冒険者の一人が、仲間にそっと近づいてヒソリと呟く。同じような小さな音量で返されて、「はぁ」とため息をつきながら位置に戻った。

 

魔物のレベルが高ければ、護衛のレベルもそれなりに必要で、そうなると雇い料はおのずと高額になる。腕の自信のある冒険者たちには、いい稼ぎ口となっていた。彼らがまさにそうだ。

 

「魔物に襲われた時も、俺は荷を背負っていたよ。魔物は理屈が通じない。

死に物狂いで逃げて逃げて。それでも荷を放ったりはしなかった」

その時に親方という人物が死んで、背に残った商品を元手に、なんとか食いつないで商人として成り上がったんだろ?周りの者たちはそう心の中で思っている。しかし護衛の報酬はほとんどが後払いなので、大人しく謹聴するのが吉だとわかっているので黙っているのだった。

 

「父さん、休憩しませんか」

 

だが黙っていられない者がいた。商人の息子である。

話を打ち切りたかったのか、本当に疲れていて、徒歩の者たちの気持ちを代弁しようと思って休憩を提案したのか定かではないが、きっと彼は父の武勇伝をもう何百回も聞かせれているに違いないと、冒険者たちは彼に少し同情した。

しかし商人は、「だめだ」と一蹴した。

 

「このあたりの魔物は気が荒いので有名なんだ。

お前も一度魔物に遭遇してみればわかるさ。こんな森は早く抜けるに限る」

息子はこっそりとため息をついた。

 

そこで先頭から声がかかった。

「ご主人。しかしずっと歩き通しでは、返って遅くなる。

牛も少し休ませないと。」

 

発言したのは冒険者側のリーダーで、名をルツという。

背が高く、腰には二本剣を携えていた。砂塵を避けるためのマントから覗く腕はそれなりに頑丈そうで、少し太めの眉が頼もしさを感じさせる顔立ちをしている。

 

商人はむむむ、と唸って、しかたなさそうに「じゃあ、いい場所があったら」と頷いた。

 

「この先に沢があるはず。そこで休みましょう?」

 

顔の上半分を帽子ですっぽりと覆った女が、すかさず言う。

「近いのか?」

仲間の問いに、彼女は大きく頷いてみせた。

「さっき、地理探査の魔法を使ったから。間違いないわ」

「父さん、そこに行きましょう」

「・・・チッ、よかろう」

商人はしぶしぶといった顔で了承した。その顔を見て、さっきも「昨日聞いた話だ」と毒ついた者が、こそりと「いやな感じだな」と呟く。

リーダーであるルツが、そっと視線を彼に走らせて黙らせた。まだまだ道のりは長い。後払いの文字がちらつく。

 

無事に、魔法を使う女の言う通りの沢にたどり着き、しばしの休憩をとなった。

思い思いに休んでいると、商人の息子が冒険者たちにそっと近づいてくる。

「先ほどはすみませんでした」

父の態度を詫びているらしい。代表してルツが「いや」と返す。

「ご主人が昔襲われたとき、魔術を使うものがいたと聞いている。

魔法も魔術も、一般人から見ればそう違わないだろうさ」

「トラウマのようです。商品を一瞬で燃やされたと」

息子も困った顔した。

商人がしぶしぶだった理由は、先を急ぎたいという思いと、もう一つ、魔法と聞いて拒否感が働いたからであった。

魔法は誰でも使えるわけではない。素質があり、鍛錬に耐えられる者のみ扱うことができる。

常人にはない力を恐れている人間もやはり多く、魔物の素養があるのではないかという者もいるほどだ。仲間が、「いやな感じだな」と言ったのも、それを感じたからであった。

 

「魔法がなければ、襲われたときに対処できない。

それに、彼女たちが魔物が近くにいればわかるよう、結界を張ってくれているからこうやって休むことができるわけだしな」

ルツの言葉を聞いて、商人の息子は驚いた顔をした。

「結界を?そうなんですか」

「あぁ。でも100%ではないんだ。力の弱い魔物や、狡猾な奴は見逃してしまうこともあるからな」

結界の話をすれば、父を安心させてやれるうえ、魔法嫌いも少しは改善できるかもしれないと考えていた商人の息子はいささか残念そうに「なるほど」と肩を落とした。

 

「そろそろ行くぞ!」

しばらくして、せっかちな商人が、のんびりと座っていた牛を引き立てながら号令をかけた。

「行くか」

ルツたちも腰をあげ、再び荷車の周りを囲うよう、配置につく。

 

辺りに爆音が轟いたのは、その直後だった。

子豚な王子様57

急ですが、今回で子豚は完結します。
ながーく引っ張っておきながら、ちょっと駆け足になってしまいました。
お付き合いいただきありがとうございました。

お返事返せないかもです。すみません!

*****

ティカルとエンは、木々が生い茂る森のようなところに降り立ちました。

「あ、ここ…。きっとここだ」

「わかるのか?」

エンの問いに、夢見心地でうんうんと頷きます。

「うん。なんとなく、だけど」

「とりあえず、ティカルの服をどうにかしなきゃだなぁ…」

あぁそうだ。僕、裸なんだっけ、と思うのと、あの、何度となく経験のある光がティカルを包みました。

「え!?」
「ブヒ?!」

そうして、気が付くとティカルは子豚になってしまっていたのです。

「えぇ?どうしたんだよティカル?!」
(僕もわからないよ!)

いよいよプラムに会えるかもと思った瞬間に、ほんの少しですがティカルは「怖い」と思ってしまったのでした。
会って、もしもプラムが、別の人と一緒にいたらどうしようと、怖気づいてしまったのです。

しかし、二人がそのことを話し合う時間はありませんでした。

少し離れた茂みから、獣の唸り声が聞こえてきたのです。

エンが、再び子豚になったティカルを抱えて、走り出します。そこで、時空の渦を使わないあたり、まだまだエンも慣れていないのでした。

***


「お久しぶりです。テアさん」

「プラム王子、よく来てくれたね。
あぁ、もう王様だったか」

一方プラムは、彼が納める国のはずれのほうにある田舎の牧場に来ていました。
ティカル探しと政治で、煮詰まっていた彼のもとに、息抜きにおいでと手紙を送ってくれたのが、このテアという人なのです。

「大変だったんだって?」

「はい…」

噂として、プラム王が大事な人を失ったことは知っていたのですが、城から遠い場所にあるテアの牧場までは細かい情報は来ていませんでした。お茶でもしようかと、プラムを招き入れた彼でしたが、その時でした。

「ワン!」

大きな白い犬が、急に外で吠え始めたのです。テアは険しい顔をしました。

「王子、悪いけど少し待っていてくれ。
森で何かあったみたいだ」

「俺も行きます」

つい昔の癖で「王子」と言いながら、テアは首を振ります。

「普通の馬じゃ、この森は無理だ。待ってるんだよ」

そう言って、彼は外に向かって「シド!」と呼びました。するとすぐに彼の元へ黒い馬が走ってきます。
壮年といっていい年のテアですが、慣れた様子で愛馬に飛び乗ると、あっという間に森に行ってしまったのでした。

あの馬は普通じゃないんだろうかと、不思議な顔をしたプラムを残して。

***

森を縫うように走っていたエンでしたが、大きな木が通せんぼをするような場所に追い込まれてしまいました。

「白い大きな犬なら、よかったんだけどな…」

昔飼っていたのでしょうか、そうつぶやくと、銀色の狼が低く吠えます。敵意むき出しです。

食べられちゃうのかな、どうしようとティカルはドキドキしました。

この世界だと思うのですが、プラムの姿がありません。おまけにまた子豚の姿です。
しかし会わないままで終わりたくありませんでした。
ティカルは、エンに抱えられたまま、お腹に力を入れます。

「ピギぃーーー!」

「うわぁっ」

ティカル自身、思っていたよりも大きな声が出てびっくりしました。エンはもっと驚いたのでしょう。思わずティカルを持つ手が緩んでしまいました。
狼は襲ってくると思いきや、ティカルの声を聴いて、うん?と言いたげに首をかしげています。

ティカルは、ふと、近くにプラムがいるような気がして、気が付いたら走り出していました。

***

ティカルが大きな鳴き声を上げたころ、プラムは中で待とうか、外で牧場を見ていようか、それともやはり追いかけようかと思案している時でした。

はっと顔を上げて、森を見ます。

「ティカル?」

裏向きの首飾りを握りしめると、どうしてかポカポカと温かいような気がしました。
気が付いたら、プラムは走り出していました。お供も、馬も連れて行かずに。

迷ったらどうしようと、考える余裕もありませんでした。

走って走って、枝で服を破り、木の根に足を取られ、それでも走ります。

「ティカル!どこだ!」

何かが聞こえます。人の声のような、子豚の鳴き声のような。
子豚の姿でもいい、会いたい、抱きしめたい。

そしてとうとう。何かにつまずいて転んだらしい、ピンク色の塊がプラムの前に飛び出してきたのです。

「ティカル!」

駆け寄って抱き上げると、少しの間目を回していた様子の子豚でしたが、プラムを見て、嬉しそうに「ピキぃ!」と鳴きました。

「あぁティカル!よかった!

そうだ!首飾りを」

すぐにでも呪いを解こうと、今も裏返しの首飾りに手を伸ばしたプラムでしたが、ティカルが一声鳴きました。
まるで「待って」というようだったので、プラムは動きを止めます。

ティカルは、プラムに抱きしめられたまま、強く思いました。

彼の名前を呼びたい。
彼をぎゅっと抱きしめたい。

人間に、戻りたい。
そう、強く強く想いました。

そして想いはとうとう、ある魔女の強い強い想いのこもった呪いを、打ち破ったのです。

はっと息を飲んだ気配で、ティカルはそっと目を開けました。そして自分の、人間の手を見て、

「プラム!!」

大好きな人を、思い切り抱きしめました。

***

案の定、帰り道が分からなくなってしまった二人でしたが、途中で親切なクマやキツネの力を借りて、ようやく牧場に戻ることができました。

森で迷子になっていた旅人を見つけたテアは、牧場に戻ってくるとプラムはいませんし、旅人は「子豚を探しに行く」と言うのでほとほと困っていたところでしたが、プラムが、誰かを連れてもどってきたので、とても驚きました。

しかも彼が、旅人の探そうとしていた子豚で、本当は人で、そしてプラムの最愛の人だというので、その情報量に追いついていけないほどでした。


***

「田舎が吉、本当だったな」

「なんのこと?」

いつかの占いのことを思い出して、そうつぶやいたプラムを、不思議そうにティカルが見つめます。もう鼻も、豚ではありません。
首飾りの力がなくても、ティカルは人間でいられるのです。

「いや、なんでもない。
オクに嫌味を言われるだろうな。無理に休みを取らせたから、この場に立ち会いたかったと言うだろう」

その様子が想像できて、ティカルはニコニコ笑います。
プラムは愛おしそうにティカルを見て、そっと囁くように言いました。



「ティカル、目を閉じて」


**END**

子豚な王子様56

お久しぶりです。あっという間に(笑)寒くなりましたね。
お体にお気をつけて。それでは子豚にいきます

*****

「あ、あのね。エンは魔王になるかもしれないし、ならないかもしれない人なの。
でも、いい人だよ」

迷った末に、ティカルはユキたちに向かってエンのことを紹介しました。

「魔王になるかもしれないし、ならないかもしれない?
…まぁいいか。アオ、もう大丈夫」

しかしティカルの説明では、よくわからなかったようです。
ユキはしばらく困った顔をしていましたが、泉に避難していた小さい子たちがそろりそろりと近づいてくるのを見て、大きい丸い生き物をポンポンと叩きました。

「エン、この人は泉に住んでるユキさん。とその家族だよ」

続いてティカルは、エンに向かってユキたちを紹介します。
エンは、同じ男でも、ティカルもユキも全裸なので、やはり目線に困るらしく、あいまいにうなずいてアオを見上げました。

「はぁ…しかしでかいなぁ」

「この人が一番大きいの?」

ティカルがユキに尋ねると、ユキは自慢げに「そうだ」と頷きます。
そんなことを話していると、ようやくエンもティカルを見るのに慣れてきたようです。

「普通の子豚じゃないとは思ってたけど、人間だったんだな。
さっき、なんて呼ばれてた?」

「ティカル」

「ティカルか」

頷きながら、エンは微笑みました。そのようすで、大きな丸い生き物のアオも警戒を解いたようです。
すすすと泉に帰っていきます。

「ティカルは、ここの人間なのか?」

「ううん、違うんだ。待ってる人のいる世界が、別にあるよ」

エンは、ティカルをじっと見ました。子豚のときには感じたことのない、強さを、ティカルから感じた気がしたからです。

「エン、連れて行ってほしい。僕を待ってくれている人の世界へ」

「あぁ、いいとも」

さっき結構練習したからな。任せとけ。とエンはにっこり笑います。

「ティカル、」

踏み出そうとしたティカルに、ユキが話しかけます。
振り向くと彼は「忘れるなよ」と言いました。

「うん。忘れないよ。
想う力は、強いって」

ユキは「そうそう」と深くうなずきました。

「行くか」

エンの声に、うんと頷いて、ティカルは渦に包まれました。


*****


子豚な王子様55

ひえ。夏が終わってしまう。

*****

ティカルはぺたぺたと体や顔を触ると、はっと驚いたように鼻を押さえました。
「どうした?」
「ぼ、ぼくのはな…」
もごもごしながら、ティカルは恐る恐る泉のほうに、よたよたと膝で歩いていきます。
ユキや、透明の生き物たちもなんだなんだと不思議そうについていきました。

泉の岸に座り込んで、ちょこっと顔を覗かせたティカルは綺麗な水の中に鼻を押さえた自分がゆらゆら映っているのを確認して、そーっと手を離してみました。

「っ!
鼻が…人になってる」

水の鏡に映っていたのは、自分でも始めて見る、人間の鼻をしたティカルでした。ティカルの呟きで、ユキは、先ほどティカルが言っていた「厳しい世界」の意味を少し理解します。

「すごい…。どうして…?
これも想う力なのかな?」
嬉しそうに何度も、時には頭から泉につっこみそうになりながら、ティカルが覗き込んでいると、突然水面がゆらゆらが大きくなり始めました。
泉の真ん中あたりが、波の中心みたいだと理解するのと同時に、そこから大きな何かがドンと跳ね上がります。そして、ティカルを飛び越しました。

「アオ?どうした?」
振り向いたティカルが見たのは、ここにいる透明な生き物の中で跳びぬけて一番大きく、丸い生き物が、ユキのすぐそばに着地したのと、その後ろの、見覚えのある黒い渦でした。

「あっ」
ティカルと同様に泉の大家族もその渦に気づいたのでしょう。
小さい丸や少し大きな丸が慌てたようにティカルをよけながら泉にポチャンポチャンと潜っていきます。飛び出してきた大きな生き物と、ユキ、そして大きめの子たちは、ジリっと警戒したようにその渦を見ているようです。

「エン!」
ティカルが咄嗟に呼びかけると、渦は開いたり閉じたりを何度か繰り返して、ようやく中からエンが出てきました。うまくいかなかったのか、思い切り顔からでしたが。

「いって…」
「ティカル、知り合いなのか?」
大きな生き物の隣に立ちながら、ユキはまだ険しい顔をしていました。ティカルは慣れていたので何も感じなかったのですが、やはり魔王の力である時空の渦は、禍々しい気配を放っていたので、警戒したのです。

「うん。一緒に旅してたんだ」
ティカルは慎重に立ち上がって、久しぶりに二足歩行をしながら、次第に小走りになってエンに近寄りました。エンは鼻を打ったようで、ちょっと涙目になっています。
「エン、大丈夫??」
「・・・え、っと?」
エンは小走りに近づいてきた全裸の青年を見て、パチクリしました。
途中ではぐれてしまったティカルを探して、慣れないながらも、あちこち時空の扉をあけて、ようやくティカルの気配がする世界を見つけたのですが、キョロキョロしてみても、子豚の姿がありません。

しかし鼻の痛みが治まっていくのと同時に、自分の名前を知っている彼があの子豚なのかもしれないと思い至ったのです。
「もしかして、空豚なのか…?」
ティカルはぱっと笑顔になって、「そうだよ!」と頷きました。

「ティカル…、エンってのは何者なんだ?」
「うっわぁ!何だこのでっかいの!?」
ユキとエンが同時に話したので、ティカルはどっちに返事をしようと、オロオロしてしまったのでした。

*****
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