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1-8





「島田も 村瀬も 相談員3年目で 、
ある程度 頼れるから」

「ある程度って!」
「綾瀬さん、失礼ですって!それは!」

女性陣 2人が 口を尖らす 。
先生 ……
いや 、 綾瀬さんは それを見て
笑っている 。

「まあ 、
俺が育てた 奴等だから 。
頼りに してやって」

そう 私に言った 。

綾瀬さんは 、
生徒思いで 有名だった 。

きっと ここでは 、
部下思い な人なのだろう 。

優しい目で 、
部下 2人を 見ていた 。

きっと 信頼を置いている からこその
その視線 。


それは 、 素直に
羨ましいと思った 。




1-7





「先生」


初出勤日 。

事務員さんに 『 医療相談室 』と
書かれた 部屋へ 案内され 、
その部屋で パソコンを打つ
先生に 声を掛けた 。

「先生…」
「先生か」

先生と 向かい合うように
デスクで パソコンを打つ
二人の女性が 笑った 。

「お前ら、うるさい」

先生が 苦笑いしながら 言った 。

「んで 、お前も 。
先生じゃ ないから」

私は頷き 、
「綾瀬さん 、
今日から よろしくお願いします」
と 挨拶した 。

「ん 。
お前と同じ 、
相談員が 2人いる」

と 先程の 女性二人を見た。

「相談員 、 島田 郁です」

「同じく相談員 、 村瀬 美緒です」




1-6




そこからは 、
早かった 。

もともと 先生の職場の人手が
足りていなかったこともあって 、
ほぼ 形だけの 面接をしてもらい 、
すぐに「採用」の 通知が届いた 。

退職願 もすぐに出した 。

「1年目のくせに」

「たいした仕事もしてないくせに」

散々 言われた 。
でも 、
どうでもよかった 。

このまま 、
いまの仕事を続けていたら 、
きっと 私は 仕事を嫌いになるだろう 。

好きで 目指した仕事を
嫌いになってしまうだろう 。

ならば 、
いま辞めることは 、
正解にはならなくても 、
不正解にもならないだろう 。

そう思った 。

暴言を吐かれながらも 、
退職日まで 勤務した 。

退職した その夜 。
上司から
「貴女には心底ガッカリしました」
「資格を取っただけの小娘」
「どこにいっても通用しない」
と メールが届いた 。

返す気にも ならなかった 。

そして 、
もう一通 届いていた 。

綾瀬 悠 。

先生 だった 。

「最終日、お疲れさま。

俺は、君に芽があると思ったから声を掛けた。

出来なくてもいいからやってみなさい。

俺が君の上司になるんだから」


明日から 先生ではなく 、
上司となる 、
そのひとだった 。



1-5




『お疲れさま。

いまの仕事にやりがいはあるか?』


“やりがい”

その言葉を 見た瞬間 、
我慢してきたものが 一気に
溢れてきた 。


やりがいなんて 、
感じることなんかなかった 。


『ありません』

気付けば 、
そう 返していた 。

『資格を取ったこと後悔してるか?』

『していません』

『なら、

うちに来るか?』

言葉の意味が 、
分からなかった 。

返す言葉を打つ前に 、
もう一度メールが来た 。

『うちの病院で勤務してみないか?』

それが 、
はじまりだった 。



1-4




主に 暴言 。

「何もできない子」

「本当に使えない」

「人間としてダメなのよ」

毎日 毎日
聞いていると 、
本当に狂いそうだった 。

仕事で失敗すれば 詰られ 、
他人の失敗を 押し付けられる 。


そんなとき 研修で
先生 に再会した 。

先生 はそこでも 講師 だった 。
運営側だった 。

研修終わり 、
「最近、調子どうだ?」
と 話し掛けられた 。

曖昧に 答えた私に
「メールしなさい」
と 静かに笑った 。


その夜 、
仕舞い込んでいた メモを
取り出した 。


『今日の研修 、
お疲れ様でした 。

先生がいて びっくりしました 。

相沢』

仕事には触れず 、
送信した 。

すぐに 返事は来た 。



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