▼ 独占欲


私は、壁と十四松の間に挟まれていた。つい先程まで夏は海に行きたいね、なんて話していたのに、どうしてこうなった。完全に話が切り替わってしまったのは水着の話をしてからだろうか。十四松たち兄弟と皆で海に行って、焼肉して、花火して、なんて話をめぐらせていたのだが。


「ねえ、どんな水着?」
「く、黒レース…のワンピース」
「へえ」


ぱあっと顔を明るくさせて、無邪気に笑う。楽しみだなあ、なんてはしゃいでいるように見えるのに、雰囲気が、こわい。


「でも、それだと兄さんやトド松にもきみの水着を見せるってことでしょ?」


長めのパーカーの袖で口元を押さえながら小首を傾げて、
まるで分からない、というように十四松が尋ねる。何分仮定の話なので否定も肯定もできないでいると、畳み掛けるように十四松が口を開いた。


「きみは、ぼくだけのものなのに」


ね?と問いかけながら、距離が縮まる。後ろに逃げ場は無くて、真っ黒な瞳をじっと見つめた。








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