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▼ 不器用な愛情
「なあ、おれにしなよ」
散らばる髪を一房持ち上げて、恭しくそれを手元に運び、そっと口付ける。いつもは目に光なんてないのに、こんなときだけ爛々としていて、どこを見ていいか分からずに俯いた。一松、と名前を呼んだ声は思いのほか上ずっている。シーツに縫いとめられた手首はびくともしなくて、彼を抱きしめることさえままならない。こっち向きなよ、と半ば無理矢理顔を持ち上げられた後の、文字通りの噛み付くようなキスに、目を閉じた。荒々しく首筋に寄せられた唇は、対象的にひどく優しい動作で痕を残していく。濃く、薄く、散らされるたくさんのキスマークは、まるで嫉妬と独占欲の鎖のよう。
下へ、だんだんと降りていく。思わず薄く開いた唇から吐息が漏れた。
「どうして」
その言葉に目を開ける。こちらを見つめる一松の顔は今にも泣きそうだった。
「一松がすきだから」
手を伸ばす。頬に触れる。そのままこちらへ抱き寄せた。