実は、
けんちゃんが別れを切り出したのは
これが初めてではない。


1度目は、 彼女が出来た時。

でも、
彼女にふられて戻ってきた。


2度目は、 今回と同じ気持ちになった時。

ずっと一緒にはいられないと感じ、
けんちゃんから離れていったけれど、

1週間後に戻ってきた。


私がいないことに、
けんちゃんが耐えられなくなったから。



『あの時戻ってきたのは、僕の弱さでした…


また別れ話をすると、
ねーさんがこうなることは分かっていた。

だから、
正直な気持ちが話せませんでした。


でも僕は、
ねーさんを幸せにはできません。

ねーさんには幸せになってもらいたいから…』




けんちゃんがメールで冷たくしたのも、
私を突き放すため。




頭では分かっていても、

7年もそばにいた愛しいヒトがいなくなるという事実…


すんなりとは受け入れられるはずもなく。




『もう、会えないの?



…… そんなの、やだ〜!!』




なりふり構わず泣きじゃくったら、
また過呼吸になった。



けんちゃんは、
泣き崩れる私を抱きしめて

背中をさすりながら呼吸を整えてくれた。



『ゆっくり息をして。

吐いて〜 吸って〜』



その時のけんちゃんの声が、
今までで一番柔らかく優しく感じた。

まるで、
出産に立ち会う人みたいに。



そして、ガリガリ掻きむしっていた私の手を
けんちゃんはすごい力で押さえていた。





ひとしきり泣いて、

私はひとつけんちゃんにお願いをした。



言っちゃいけないひとこと。









『けんちゃん、 私を……



セフレにしてください。』