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あの日


話題:涙の理由

あの日私たちは、雨に打たれる桜を車の中から見ていた。
Kさんが元カノや今までの過去の話を始めて、そして私に言った。
「○○ちゃんは彼氏の世界に縛られちゃいそうな癖があるよね、だから俺に縛られないでほしいんだ」
私のためを思って言った言葉だったと思う。
でも私には、俺と距離をとって欲しいと聞こえて、ここまで想った人が私を必要としてないんじゃないか、邪魔だと思われてるんじゃないか、元カノが忘れられないんじゃないか、と余計な思想が頭を駆け巡った。
微笑みながらわかってるよと言ったつもりだった。
でも心が痛かった、私が伝えたかったことは、聞きたかった言葉は、こんなんじゃない、と、期待に裏切られて。
車を走らせてコンビニに寄った。
その間にも、何故か涙がぽつり、ぽつり。
異変に気付いたKさんが助手席から「どうしたの?」と問い掛ける。
私は声が出なかった、今これを言っていいものか、こんな混乱して胸が痛い状態で、Kさんに無責任な答えを伝えていいものか、分からなかった。
無言で車を走らせて、駐車場に着く。
涙は枯れない。
素直な気持ち、ただ脳裏に浮かんだこと。
私はKさんを抱き寄せて、泣きながら「離れないで、依存しないから」と言ってしまった。
なんて矛盾した答えだろうね。
しくしく涙を流す私を抱き返すKさん。
「離れるもんか」
Kさんは優しく私をなだめた。
ねぇ、私わがままかな?彼のために生きたいと思えたことが嬉しかったのに、彼はそれを望んでなかった。
「○○ちゃんの人生の主役は、○○ちゃんなんだよ。だから俺のために、とか、尽くさなくていいんだよ」
私は、知らない。
自分のために、自分を主役に生きることを。
なんだか突き放された気がして、涙が止まらなかった。
私の愛し方は間違ってますか?
望まれていませんか?
私はあなたの人生に必要とされていませんか?
涙を流す私にKさんは、こんなに想ってくれてありがとう、と言った。
きっとKさんは、私のことを想って、幸せを願って、自信を持って欲しくて、そんなこと言ったんだろうよ、でも他に愛し方を知らない私からしたら、Kさんの優しさは痛くて。
だからね、決めたんだ。
新しく始めよう、と。
疑いの眼差しは置いておいて、Kさんを信じることから始めようと。
好きだって言ってくれるなら、それを鵜呑みにしよう。
正直まだ胸が痛いよ。
でもKさんを今までの彼氏と同じパターンで愛するのはやめる。
今までの私は置いていく。
私は私で、KさんはKさん。
難しいよ、全部白紙にして新しく関係を築くんだから。
彼氏と一心同体なんてことは、絶対にしない。
ただ信じて、近くに並んで、違う道を歩きながら、同じ太陽を見つめる、そんなんでいいのかも。
それって恋人って言えるの?なんて疑問は置いといて、今は手探りで愛を探す。
弱音は見せないつもりだったのに。
不意を突かれてつい頭が混乱して、嫌われたわけじゃないのに、振られた気持ちになって、涙が溢れ出た。
いつの間にこんなに好きになったんだろう。
きっとしばらく手探りで、不安で、どうしようもない気持ちにもなるだろう。
でも信じるよ。
いつか、思い描く未来が同じになるように。

嘘か真か

Kさんを疑った。
私の存在が邪魔だと思った。
Kさんの成長の妨げになるようなら消えようと思った。
でもKさんは私の涙をすくい上げてありがとうと呟いた。
こんなに思ってくれて、ありがとうだってさ。
私は未熟で、思い通りにいくことなんてひとつもなくて、それはある意味いいことで。
優しい人は嘘をつく、そう言ったら、俺は嘘は一度しか言わないよ、と言われた。
だったら今度から怪しいことは何度も聞こう。
Kさんは優しい。
朝まで一緒に居たけど、もっと大切にしなくてはと思った。
疑うのは簡単、信じるのは難しい。
だったら難しい方を選ぶ。
私はKさんを、最後の彼氏にしたいと思った。
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