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勝手に持ち上がりそうな頭を、慌てて、でも決して悟られないように、平静を装いながらディスプレイに隠す。 今日も、聞き分けられてしまった。自分の才能が怖い。とか言っちゃって。 さっきの人と連れ立ってやってくるのか、だんだん話し声が近づいてくる。 さっきまで流れるようにメールをしたためていた私の両手は完全に止まっていて、これまた慌てて、努めて自然な動きで再開させたけど、ほとんどバックスペースで消すことになった。 メールの文面なんかこれっぽっちも組み立たない。 何をしているのが一番不自然じゃないかな、と悩んだ挙げ句、書き進めもしてないメール作成画面は隠して作業途中の資料を映し出す。 あっこれめっちゃ単純なやつ、せめて他部署の人が見たらちょっと難しいくらいの資料なら格好つくのに、とひとりで顔を熱くしたとき、 頭の上を、焦がれてやまない声が素通りしていった。 私の席のさらに奥、部長にサインをもらっている彼を横目で盗み見る。 いつものあの人。いつでも余裕100%みたいに涼しい顔をして、すんなりと事を終わらせてしまう。 きっと私みたいに、パソコンの画面で見栄を張ろうとなんてしないんだろう。いや絶対しない。 ささっと用事を済ませて席を立つと、その隣の課長と二言三言交わして、思わずまた上げてしまった私の目線なんかとは絡むことなく、彼はあっさりと帰っていった。 仕事、がんばろ。 話題:突発的文章・物語・詩 _____________ (あ、来る)耳をそばだてて、いつの間にか聞き分けられるようになった足音を拾う。首から下げたカードケースが、迷いない足取りに合わせてカチャカチャ鳴る。途中で誰かに捕まったのか、からからと心地よい笑い声。いつものあの人の輪郭を形作る、いつもの音。 |