日本中のお疲れな皆さん!お疲れ!
その中でも電車が通勤手段の皆さん!お疲れ!
その中でも不意を突かれてカップルに挟まれちゃった拙者!お疲れ!


やれマックが新商品で生姜焼きを挟んだヤッキーだとか出してる中ですね、
世の課長が部長と係長の板挟みに悩んでる中ですね、
便乗したつもりもないのに、挟まれました。
気づいたらカップルに電車で。


あたし横浜から20分くらいのとこに住んでるんですけど、
いつもなら座れない横浜ですぐ座れまして、
こりゃラッキー!うひひ!と思いながら座ったわけです。
少しスマホに気を取られながら。
言うとWeb漫画に気を取られながら。

したら電車でよくある、
離れてるけど空いてるから別々に座りましょう的なやり取りが目の前で行われていた
ことに、

挟まれる二秒前に気が付きまして、




もうここでまず遅いの。







もっと早く気づけば、あたしがちょちょいと一つ隣に移動し、カップルをカップルとして隣に座らせ、
カップルが漂わせる雰囲気を傍から見守り、
「暑いな今日は。ふふ。」
なんて思いながら帰路につくわけですよ。
甘酸っぺーなって。


それがね、

EXILEがステージで各人のポジションにつくように、
流れるような速さで両隣、着席。
あたしもポジションで言えばセンターを思わせるんですけど、
気持ちはまだEXILEのオーディションにエントリーするかしないかで葛藤するくらい
の、弱さっぷり。



将棋で言えば斜めの角がくるかとおもいきや、歩。
オセロで言えば知らぬ間に黒に角取られてて、1列白。って感じですよ。




完璧に避けるタイミングを逃した。
定時間際に繰り出される打ち合わせくらいの逃げ場の無さ。


えっと、あたし全然この席じゃないと駄目とかなくて、
さっきはたまたま、たまたまWeb漫画読んでて、
主人公がヒロインと一線超えるかどうかみたいな盛り上がりだったから、
夢中になっちゃっただけで、
なんなら座席に限らず、ケツを支えてくれるならなんでもいいっていうか、

あと、空気っつーのも人並には読めるし、
ラーメン屋では麺硬め味濃いめでお願いしたいところを、混んでると麺硬めまでにしとこうと。
茹で時間の短縮にもなるしね!

コンビニで炭酸水とおにぎり2個買ったのに、「袋に入れますか?」って聞かれても、表情一つ変えずに「是非お願いします」って返しますよ。
そこは店員さんとの間柄を壊さないために空気読んで。


入れて欲しいよ!そりゃ入れてほしいよ!
そのままお店から出ちゃったら堂々とした泥棒か
店員に嫌われて入れてもらえなかった可哀想な人か
自らエコロジーを選択した変な人じゃん!

全部嫌だ!!


でね、

あたしがあなたたちを遮ってるっぽいって分かってる。
応援側だよー味方だよー。
交換するよー席。ズレるよー右でも左でも。



でもこのカップル、結構TPOがしっかりしてるお二方でして、
きっと近くのコンビニとTUTAYAでもちゃんと服装変えるタイプ。
あたしなんてコンビニも一駅隣の歯医者も部屋着で行くのに。



控えめなコミュニケーションで収めてくれてる分、
逆に立ちづらい譲りづらい動きづらい。

やや前屈みで座るあたしの頭の後ろ越しで、
アイコンタクトを取ってるカップルへの、遅ればせながらの気遣いで、
あたしが突然、「交換します?席」なんてどちらかに言っても、
「っえ」みたいな微妙な空気が流れると思うんですね。

その前にライオンハートという名の繊細なハートで生きてますから、
控えめなスキンシップくらいじゃ声かけらんないですよ。
もっとこう、ラテン系くらい激しくいちゃついてくれないとっていうか、
サンシャイン池崎くらいの勢いを所望するっていうかね。



今ならクッパにでもさらわれたい。
割とさらわれたい。
あーんいでよクッパー。



あたしの悲痛な思いを知ってか知らずか、
クッパじゃないけどわりと救世主が、きた。





いける、と。
これ以上ない理由だ、と。

席を譲ってあげるべき人。
ごく自然な離席を叶えられる人!!
(まぁ普通に65歳くらいのおばあちゃんなんですけど。)


おばちゃんが視界に入った瞬間に確信した。
誰も傷つかない傷つけたくない出来ればあたしも無事でいたい
って欲求を全てを満たしている。

ここであたしが笑顔で「どうぞー!」って言って!紳出して!なけなしだけど出し
て!
おばあちゃんが「あらいいのよ。すぐに降りるのよ。」って一回ジャブかわして!
それでもあたしが「いえいえ一駅だけでも!」って強めに紳士出して!なけなし全部
出して!
したらおばあちゃん観念して「そう?それじゃありがとうね(にこ)」って言ってくる
から!!
立ち上がってくるっとおばあちゃんと軽くワルツした後に、少しズレた位置に立つ。



完璧だ。完璧なシナリオ。
この計画で大事なのは折れない心。

そこまでのご高齢じゃない場合、
大抵1、2回は遠慮されること、
席を譲ったことがある人であれば、容易に想定が出来る。

たまに忘れそうですけどあたしも営業って職業ですから、
遠慮する人の気持ちとかね、強引さが必要な時とかね、
嫌よ嫌よも好きのうちってね、
なんとなく分かる、気がする。

だからこそ折れちゃいけない。
少し気を引き締めて、3回は遠慮する人だって想定しておけば、
いける。この計画は確実にいける。

グッバイ前傾姿勢!ハローつり革!!



あたしはもう一言目の「どうぞ」をすごいタイミング良く言おうっておばあちゃんが
あたしの付近を通る時にすごいタイミング良く言おうってちょっと少し立ち上がり気
味に言おうってタイミング良く言おうってタイミングが大事だって思ってもうこれは
タイミングの問題だって思って



(きた...!)

(いまだ!!!!)



「どうぞ!」

「あらあらいいのよいいのよ」

「いえいえどうぞ!!」

「いいのよ大丈夫よ」

「降りるんであたし降りるんで!!」

「本当に大丈夫よ、ありがとうね」

「大丈夫ですよ!座ってください!」

「立ってるの好きなのよ」









...うっそーん




みんな〜!
世の中のおばあちゃんが、
皆座りたいって、思ってない?

じゃあ、質問です。

素敵な服を着たモデルさんが、
ファッションショーの場で座っても良いよと言われて、
座ると思いますか?


座らない。立ちたいの。





いやいや待って。あたし折れたわけではないけど、

ちょっと想定よりは断られたけど。

なんならお互い譲り合い過ぎて、
その座席がなんか嫌われ者っぽくなったけど。

おばあちゃんがね、悪いからとか遠慮とか、
そういう気持ちで断ってくるならね、
あたしにも勝機は、あった。8割くらいで確信してた。

まさか「希望」が返ってくると思わなくて、
こんなに輝かしい2文字なのにどうして目頭が熱くなるのかしら。


立ちたい。って、

立てる。じゃなくて立ちたい。って、

したらもう、あたしに残されたカードなんて2枚しかないわけです。

「座り直す」or「ちょっと降りる」

そりゃあもう「あ...そうですか!(にこ)」
って、
「じゃあすいません座りますね!(てへへ)」って、
座るしかないじゃない。









今でも日本のどこかでブルゾンちえみが、
2人のマッチョの足に座っているかもしれないのに、
あたしはしょっと嫌われ者っぽくなった座席に座り直すしかなくてね、
おばあちゃん凛々しく立ってるから。



まぁその後もカップルの慎ましやかだけれども、
時折あたしの頭を挟んで会話をしたり、
LINEでやり取りしてるのか、
ふふって頬を赤らめ合うシーンとかですね。

キリンかな?ってくらいの視野の広さで見てましたから。
Web漫画見てるふりして。








もし今ここでもし救世主のバーガーが現れて、

「おめーなーに熱々のパティ共に挟まれてクォーターパウンダーチーズしてんだよ。
レタス。」

「フレッシュが売りのグリーンが、あいつらのお熱で台無しじゃあねぇか。」

「こいよ。パティも一人ならチーズなんて洒落たもんもねぇが、バンズが上と下にあ
りゃあ、
 やってけるさ。俺とお前なら。」


なんて優しく肩抱かれたら一夜を共にしちゃうかもしれない。
シングルベッドでキツく抱きしめちゃうかもしれない。



なんてこと考えてたら、最寄りについたので
颯爽と降りました。


日本はっていうか
あたしの付近はまだまだ寒いなって思いながら。