螺旋状に突っ走って死にたいプロフィール
2013/2/26 Tue 16:54
パブロフの犬

話題:怖い話


俺が昔、コンビニのアルバイトをしていた時の話だ


コンビニは大量生産大量廃棄

毎日毎日ゴミ袋いっぱいの弁当、パン、おにぎりなどの食品が廃棄される

コンビニは全国に30万店舗ある
つまり最低でも30万袋の食べ物が廃棄されているのだ

俺が働いていた店では廃棄を持ち帰ることを許されていたが、厳しいとこは厳しいの聞く

まだ食べれそうなものを捨ててしまう虚しさは計りしれない


一緒に働いていた同僚や店長は廃棄の食べすぎで太っていた

しかし俺は痩せていた

夏に一週間放置しても変色しない弁当を見て、保存料の恐ろしさをかいま見たのもあるが、なによりある出来事が原因で食欲が失せたのだ


廃棄された食品はゴミ袋に詰めて、外にある倉庫に入れる
それを業者が回収するシステムであった

最初はカギをかけなかった

ホームレスがたまに漁って持っていったが黙認していた

なぜならまだ食べれる物を捨てるという負い目が俺達にあり、食い散らかされたり、ばらまかれたりするわけでなく、一つか二つをこっそり持っていくのならなんら問題はないと思っていたからだ

廃棄を漁るホームレスの中に犬を連れたおばあさんのホームレスがいた

廃棄を漁るおばあさんと横に寄り添う犬
その姿がなんだか心に刺さり、目をそらしたことを覚えている

どうやらそのおばあさんと犬には巡回ルートがあるようで、出勤時、退勤時、休日のとき
近所の色んなとこで見かけた

様々な場所で犬とゴミを漁り、様々な場所で犬と何かを食べていた

その度に俺は目をそらした


そんなある日、店にクレームが入った

どうやらうちの廃棄弁当をホームレスの一人が他人の敷地で食い荒らしたらしい

怒りの矛先はうちの店に向いた

そして倉庫にはカギをかけることとなった

どんなとこでも一人の馬鹿が全てをぶち壊しにする

ホームレスになっても社会の煩わしさからは抜けられないのだ


おばあさんと犬がカギのかかった倉庫を悲しげに見つめているのを何度か見かけた


さらにある日、倉庫のカギがトビラごと壊されていた

そして、廃棄された物は店内の冷蔵室に保存され、業者に渡すようになった

空っぽの倉庫を覗くホームレスもいたがやがて消えた

ホームレスにも情報網があるのだろう


しかし、おばあさんと犬は毎日決まった時間に倉庫を見回りにきていた
そこに何もないとしても、巡回はやめられないのだろう

決まったようにグルグルと同じ箇所を回り続けるのだ



ある寒い時期、おばあさんの姿が見えなくなった


どうしたのだろうと少し心配になった

店長も同じだったらしい
近所の常連客から情報を引き出し、教えてくれた

寒い時期は大量のホームレスが命を落とす
冷気は冷酷に無慈悲に体温を奪う

公園でおばあさんは冷たくなっていた

このあたりでは有名なホームレスだったようだ


疑問が湧いた

犬はどうなったんだろう


店長はそれにも答えてくれた


犬はおばあさんと回っていたルートを今も巡回しているらしい

その話を聞いてなんだか涙ぐんでしまった

人間の勝手な解釈だが、おばあさんとの思い出を辿っている犬の姿は涙を誘う


しかし、店長は険しい顔でいった

「そんなかわいいもんじゃないよ。死んだおばあさんな…食われていたらしい」


犬は巡回してればまた
「おばあさんのように」肉をたらふく食べれる

そう考えていたのではないか



俺はしばらく肉もコンビニ弁当も食べたくなかった





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