話題:珈琲


珍しくオヤジとセブンイレブンに行った神田です

荷物を送る目的で

そしてまだ時間があったので、珈琲でも飲もうってことになった

いつもなら俺がレジでカップを買って、セルフのマシンを操作して珈琲を淹れるんだけど、この日はオヤジが全部やってくれた

財布の中から小銭を出して、店員さんに「小さい珈琲カップを2つ下さい」と言っていた

これまでこういうことは無かったのよ

オヤジは稼ぎがなかったので、俺が一緒の時は全て俺が買っていた

でも去年から陶芸教室を始めたもんで、今はある程度稼ぎはある

だから小銭くらいは持っているんだ

店員さんが「新しくキリマンジャロが出ましたが、どちらになさいますか?」と言った

するとオヤジ、少し考えて「キリマンジャロを下さい、2つ」と、流暢な日本語で答えておった

ここまでで俺は涙が出そうだった

オヤジに何か買ってもらうのは何年振りだろうか

2人だけではあまり出掛けたことがないから、もしかしたら中学の頃以来かな

バスケシューズを買ってもらった記憶があるが、あの時はオカンがお腹の調子が悪くなってトイレに行ってその場に居なかっただけだったかな

もうだいぶ前のことなので忘れちゃったよ

とにかくオヤジが金を払うという行為を見たのは凄く久しぶりで、ちょっぴり不思議な感覚だった



オヤジが買ってくれた青いカップのキリマンジャロは、いつも白いカップの珈琲より濃かった

キリマンジャロって酸味が強いで有名な豆だと思っておったが、たいして酸味は感じなかった

なんで酸味がないの?と聞くと、「深煎り」とオヤジは言った

そして「日本人は酸味が強い珈琲は好まない」と付け加えた

なるほどと思った

珈琲に関してオヤジは詳しい

まだ教わることがあってよかった




全部は飲んでいなかったが、そろそろ帰ろうという時に、オヤジのケータイが鳴った

「まだコンビニにいるならパン買ってきて!」という妹の声が聞こえた

「はいはい」とオヤジは答え、1人で店内に戻って行った

そこにまたついて行って、オヤジが金を払う様を見てやろうかと思ったが、車から出るのが面倒になったのでやめた

冷めないうちに珈琲を飲み干したかったし


セブンイレブンのキリマンジャロは『青の贅沢』と書いてあった

オヤジの病気のことを忘れさせてくれる、何となく贅沢な時間を過ごせてよかったような気がする神田でした