話題:二次創作小説
短文集。
三番主従詰め合わせ。
イヅルの日間に合わんかった。許せ。
「この身も、心も、魂すらも貴方に捧ぐと誓います」
「だからどうか、貴方様のお心のまま僕をお使い下さい」
「市丸様……」
跪き、頭を垂れる吉良の頭を撫でる。
「顔を上げ、イヅル」
そっと顔の前に手の甲を差し出せば嬉しそうに吉良は其処に口付けた。
(ただ一人、貴方に誓おう、忠誠を)
◆
お天道様も高い真っ昼間から、天下の往来で堂々とセクラハかましてきた上官の腕を引っ掴むと、暗がりに連れ込む。
衿元を鷲掴むと顔を寄せその薄い唇に自分のそれを重ねた。開いた口に舌を押し込むと簡単に絡みとられ唾液ごとキツく吸われる。漸く離された時には散々嬲られた舌はじんじん痺れ、抱き込まれたまま力の入らない身体を預ける。
「も、こんな時間から何盛ってるんですか」
「キスしてきたんイヅルやん」
「貴方の事になると我慢出来なくなるのは僕も同じなんですから、せめて隊舎に戻るまで我慢して下さい」
「外は嫌?」
「当たり前です!」
朱い顔のまま顔を背けるとくつくつと笑みが落ちてきた。なんですかと睨み付ければそれはそれは愉しげな市丸の姿が。
「ほんならさっさと帰って続きしよか」
「……仕事を」
して下さいと続けるつもりだった唇はいとも簡単に奪われて、吉良はその言葉を飲み込んだ。
(なんて事ない日が幸せで涙が出そうになった)
◆
はらはらと涙を零す綺麗な子のその淡い金色の髪を撫でる。
「なんや、お月さんが泣いてるみたいやね」
「……月は泣きませんよ」
「そやね、イヅルはボクだけの可愛い蝶やしね」
「もう翅もありませんけどね」
「せやからボクから離れたあかんよ」
濡れてもたら大変や。綺麗な眸から零れるそれを丁寧に舐めとって、市丸は大切に大切に金色を抱き締めた。
(死神じゃなくなった日)
◆
「いつも思うんですけど」
「ん?」
「それ、開け過ぎじゃないですか?」
半目になりながら吉良は市丸の白の装束を指差す。
「どや? 大人の色気ムンムンやろ」
「目のやり場に困るんですけど」
「ボクの裸なんかイヅルいつも見てるやないの。それともなあに? 今のボクそんなエロい?」
「貴方が如何わしいのはいつもの事じゃないですか……」
げっそりしながら大胆に開かれたそこを正す。白く細い指が丁寧に衿を整えるのを眺めながら、市丸は舌舐めずりする。
「やっぱイヅルの方がエロいわ」
「何を見てそう思い至ったんですか」
「イヅルの指見てたら欲情してもた」
「変態」
「要、ギンは?」
「先程吉良を抱えたまま自宮の方へ帰って行きました。会議は欠席すると」
「……後で私の部屋に来るよう伝えてくれ」
「畏まりました」
(可愛い君と居る世界線)
◆
「隊長、市丸隊長」
「なあにイヅル」
「……」
「ん?」
「これからは、ずっと一緒ですよね」
「うん。ずっと一緒や」
「離さないで下さいね」
「イヅルが嫌がったって離したらんから安心しぃ」
「はい」
「……イヅル」
「はい」
「愛しとるよ」
「僕も、愛しています」
(重ねた掌を握り締めて、僕たちはそっとキスをした)