「悪い女だね」とパンケーキを食べながら言われた。何が悪いの、と聞き返せばうまく言えないけど何となくだよと笑われて、明確な答えはないんだろうなと思いながらそっかと一緒に笑った。


たわいもない話をした。
音楽のこと、言葉のこと、昔の話、これからの話。流れるBGMが心地よかった。大して好きでもないコーヒーを片手に目の前の人を見る。ぼんやりと明日は雨なのだろうかと考えながら最後の一口飲み干した後は、本屋に行って二冊目の詩集を買った。



正しく生きていこうとずっと思っていた。その正しさの証明とは何かを追い求めていた。
正しさなんてひとつもなくて境界線がそこにはあるだけで、そんなこと、元々知っていたのに知らないふりをしていたのは自分だった。



やさしさにあふれていたら、だれかを傷つけなくて済むのかって言われたらそんなことはなくて、やさしさに傷つけられるから流されて止まれない。



罪悪感を飼いならすと空っぽな心が埋まった。
世界としての正しさと私としての正しさはどっちが本当に救われるのだろう。


私が悪い女でも悪い人でしょう、と微笑めばそんなことはないけどそうかもしれないね、と笑ってくれるから多分幸せなのだ。