entry title:
偶然 2
Aは無理に笑って言う。
「この俺の怖い話は…あっ、絶対ここにおるもんだけの秘密やけん。」
「…ふざけんな…ヤバすぎるやろうが。」
「…っつか…昔のその女て誰なん?気になるし。」
「知らんでいいよ。」
「怖えけん話せや…。」
「無理やな…お前らには関係ないもん。」
「っつかお前よく、そんな話したな…。」
「キショイけん、やめれ!」
「はぁ?何が?」
「イヤ、気持ち悪いって…。」
「それって霊園池に関係しとん?」
するとそれまで無口だったCが小さな声で喋りだした。
「…やめて。」
俺らは好奇心からAを問い詰めてでも事の真相を知りたがったが、それ以上は聞けなかった。
ハッキリ言って全員、無茶苦茶ビビってたからだ。
夜の山と言うシチュエーション…それが怖かったんだと思う。
幽霊がどうとかって話じゃない。
何か嫌だった。
静まりかえった暗い小屋。
俺は場の空気を変えようと、とりあえずタバコに火をつけた。
その火の明かりで一瞬、正面に座るAの顔が見えた。
Aは小屋の外に何かを見つけたような、ハッとした顔をした。
「おいA!もう怖がらせんでいいて。」
「やめろ!」
「外を見て俺らをビビらせようとすんな!」
「う、うん。」
「別に何も見えてねぇし。」
「見えてないって、なんだよ…。」
もう誰も喋らない。
喋れない。
時刻は午前二時を回る。
俺はAの話が怖すぎて、ずっとその話を引きずっていた。
ただでさえ小心者なのに、話がリアルすぎて怖かった。
小屋にはもう居たくなかった。
しかし外にも出たくなかった。
もう帰りたい。
俺は変なもん見ないように、目を閉じて考えないようにしてた…。
そして俺はいつの間にか眠っていた。
…キ
パキ…
バキバキ…
変な音が聞こえる。
怖くて感覚が敏感になっていた俺は、すぐに目が覚めた。
バキ…
外から聞こえる。
木の枝が折れてるような音。
背筋がゾクッとした。
俺は横にいるBを起こした。
「おいちゃ!起きれ!」
「…何よ?もう。」
「おい!外からバキバキ聞こえるて!起きろ!」
「もう…ビビり過ぎ。」
「何も聞こえんや…ん。」
バキ
「おい…!?今、何の音?」
「ちょいヤバイて!今の何の音よ?」
「わからんけど、木が折れる音じゃね?」
俺らのやり取りにDも目が覚めていた。
「…ちょい待て!お前ら喋んな!黙れ!」
バキバキ…
確かに音が聞こえる。
静まりかえった山では、響くように…。
俺の膝はガクガク。
とりあえず一服して気を落ち着かせる。
その時、ある事に気づいてしまったが、あえて言わなかった。
何か怖くなったからだ。
「ヤバイ!逃げるぞ!」
「ソッコー!逃げよ!」
「AとC起こして!」
「え!?あっ?」
「は?おらんやん!どこ行った!?」
そう、AとCがいない事に俺は気づいたんだ。
「…あいつらの仕業?」
「なんで!?何のためよ!」
とりあえず俺らは外へ出て、絶景スポットがある広い原っぱまで突っ走って逃げた。
「AとCはどうするん?」
「待っとこう!」
俺らは一服しながら待った。
二十分後…。
向こうから誰か来た。
Cだ。
「何処行ってたん!?」
「う、うん…小便。」
「小屋に戻ったら、誰もおらんかったから…捜したわ。」
「おいC!Aは?」
「一緒に小便してたよ。」
「っつかバキバキって音、聞こえたやろ?」
「イヤ・・・聞いてない。」
「どんだけよ、お前!」
「で、Aは?」
「…。」
「イヤ、Aは?って…?」
「…ん?」
「は?Aじゃ!ボケ!ふざけんな!」
「…知らん。」
「あ?意味わからんて!何処や、Aは?」
「お前、Aと小便しよったんやろうが!」
「…。」
「お前、Aと小便しよったて言ったろうが!」
「…言ってない。」
「え!?ウザイな!コイツ!」
「お前ぇ、言ったろう!?」
「あ、あぁ…Aね、あいつは先に小屋に戻るって言ってたよ」
なんだかC様子が変だ。
なんだこのCの意味不明な発言は!?
ともかく俺らは二人ずつに別れてAを捜すハメになった。
時刻は午前四時を回る。
「あのガキャ!マヂ、イライラするわ!」
「何処おるんや。」
「気味悪りぃのに…!」
「…。」
「っつかお前、何か知っとんかよ!」
「…知らんて。」
「何?お前…喧嘩売っとん?」
「…。」
「あっ!わかった!ドッキリやろ?」
「もう、ウゼー…ビビらせようとしとんやろ。」
「…ごめん。」
「あのさ…実はさ、俺さ。」
「Aと小便してないんよね。」
「は?どういう事?」
「ちょ!やめてや…怖いし!」
「キレるよ?」
「…ごめん、全部話すわ…。」
そしてCは話し始めた。
実は小屋の中で皆眠ってた時、Aが小屋の外に出て行くのを見たらしい。
Cは気になってAの後をついて行った。
Aはボロボロの鳥居をくぐり、神社の前ですぐ止まった。
すると神社の前でAは何か、誰かに話しかけるように手を合わせて喋っていたらしい。
ニヤニヤと笑いながら…。
次にAは神社の横にある木の枝を折りだした。
手頃な棒を探すように。
折っては捨て、折っては捨て。
調度良い長さの棒きれになったのだろうか…。
Aは折るのを止め、次にポケットから数枚の紙切れを取り出し、棒に貼り付けていった。
次の瞬間…。
Aが振り向き、Cに向かって走ってきた。
category:
呪われし勇者達の死ぬ程怖い話