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無題



あの日は突然
そう、わたしとしてはだけど
そうなってしまって
まさかそんなつもりなくて
だから最初に「なんで?」って口にしたのだけれど

『〇〇がいいから』
優しい声でそう言われたから
いっか
って思っちゃったんだ



手が冷たかった
ほんとにこれでいいの?って
何度か自分に問うて

あのひとは知る由もない

別に、知ったところでなんと思うのか
わたしには検討もつかないし
これが流れってやつなのかってぼんやり考えてた



キスの仕方
ホックを外すタイミング
動き方も
声も
顔も
全部違うのに


呼びそうになったあのひとの名前
間違えてしまわないように肩を噛んで

痛くない?

あのひとなら言わない言葉だなって
少しときめいて
ゆっくりしてね、って返す

優しく壊さないようにしてくれる彼と
直すために楽しく壊す彼と
やっぱり後者が好きだななんて思ってみたりして



他の人の腕の中で
違う人のことを想うなんてことは初めてで
しめつけるたび漏れる吐息もまるで他人なのに
なんだか悲しくて
重ねてしまいそうになったその人に
背を向けて眠った


愛おしそうに見つめてくれるけれど
なんにも嬉しくなくて
あのひとがそうしてくれた日を思い返して
とてもつらくて


あのひとがこの人みたいに簡単だったらいいのに

なんて最低なことを考えながら
果てて倒れ込んだ彼の肩にキスをした






.

無題




あの日、
なんてことなく知り合ったあなたと
またこうして会えることは
奇跡に少し近いくらいのことで
久しぶりに会うあなたに
顔を綻ばせるのは何度目だろう



手を繋ぐことはとても苦手だった
見知らぬ土地がそうさせるのか
会えない時間がそうさせたのか
自分よりも何回りも大きい手のひらに包まれる温かさは
冬の寒さを忘れさせた


変わらない笑顔に
変わらない穏やかな話し方
変わらないずるさと
変わらない余裕
わたしが勝てるとこなんてなくて
ずっとうまく扱われて
そんなところがやっぱり好きだと思った


抱きしめられて
一瞬でホックを外される
慣れた手つきが悔しいのに
身を委ねるのに時間はかからなくて
またわたしは情けなく敗北した

気持ちよさが苦しくて
やめてと懇願するわたしに
やめてあげると思う?と笑うあのひとが
どうしようもなく好きで



わたしはあのひとの素性を知らない
知る必要もないと思った
知って輪郭がはっきりしてしまうのを
恐れてるといえばそうなのかもしれない


あのひとは私の欲しい言葉をいつもくれた
きっとそうしてくれるとわたしも分かっていた
だからぽろぽろと色んなことを話した
後にも先にも他人に感情を垂れ流すことはない
あのひとの輪郭を鮮明にするよりも
自分という存在を知られてしまう方がこわかった

きっとあなたがすぐに忘れてしまっても
傷つかないために、大丈夫なように
そうやって保険をかけてきた



名前のない関係に
責任のない間柄に
意味を求めるのはバカらしくて

代わりに心地良さを選んできたわたしに
ツケがまわってくる日はあるんだろうか


潜在意識としてわかってたんだ
手の届かない人だということを
到底わたしなんかじゃ及ばないことを
彼の望むものをわたしは与えられない

だから
その笑顔に、温もりに、しあわせを感じても
わたしの気持ちを重ねることだけは絶対にしない

いつまで続くか分からないひとときを
あなたが少し覚えてくれていたらそれでいい

こんな愚かなわたしを
仕方ない子だね、と笑っていて




.

無題




10代の頃なんて

愛という名のエゴをめちゃくちゃに押し付けて
なんでわかってくれないのと泣いて
なんでわたしだけじゃダメなのと責めたてて



今や

涙なんて流れなくて
理解してほしいなんて期待も
好きだよなんて言う可愛げも
まるで無くなってしまった


好きなんて分かってしまえば
期待してしまうし
同じ熱量を求めてしまうし
つらいだけだからと
今は気づかないふりをしているだけなのかもしれない

自分の昂る感情に目を塞いで耳を塞いで
見つかってしまわないように
自分を失わないように
心を仕舞い込んで



そりゃあかっこいいんだもん
そりゃあ優しいんだもん
そりゃあじょうずなんだもん

モテるでしょ、なんて至極当たり前なこと
言えるわけなかった

いいなって思うのが自分だけなわけないんだから
そんな人に気持ちを燃やしたところで
何もかも燃やし尽くして灰になるだけだって
わかってたから


だから上辺のきれいなところだけ
おいしいところだけとって
わたしは都合よくやり過ごしてきた

そのツケなんだろうけど



綺麗すぎて完璧すぎるものに
自分が相応しくないこと
実感してしまうのが怖くて
こんなところに気持ちを吐露して
今日もまた
なんとなくやり過ごしちゃってる


無責任に人を愛せたらいいのにね





.

無題

誰かが言ってた

いい男は「いい顔」をしてるって
それは言うなれば顔の整い方ではなくて
表情のことをいうんだけど


あのひとはいいカオをしてた

迎え入れてくれる時も
じゃれあっている時も
まじめな話をしている時も

なんだろうな、人間味があった


そんな人だったから
握られた手を振りほどけなかったし
見つめられた目を離せなかった


くしゃっとした笑顔に
好印象を抱いたのを今でも覚えてるよ


だけれど

嘘をつかれるときだけは顔を見れなかった
どんな顔をしてその言葉を吐くのか
あまり見たくなかったな


あのひとにはひみつがあった
わたしはそれでもいい男だったと思う
人から何かを搾取するわけでなく
与えられる人だったから

空気感だとか、言葉の間だとか
そんなちょっとしたところに
魅力が散りばめられていて
憧れずにはいられなかったな


わたしはもういい大人だし
あのひとは少しわるい人だったから
不都合なことには目をつむって
しあわせなひとときに
身を委ねてればよかった


だから「好き」が
「執着」に変わることもなかった





思い出す曲聴いちゃって

また心苦しめてる?

好きだったなって

何ともない顔をして

一日をやり過ごしてる?





しあわせの指標があれば
誰も苦労なんてしないのに、ね






.

無題



ひさしぶりにつらい夜だな


抱かれた男のことを想って
ちょっと泣いちゃうなんていつぶりかな


別にいまさら
何かを期待してたわけじゃなかったし
その時が満たされてればしあわせで
それが終わっちゃうなら仕方がないから
受け入れてきたつもりで


誰かを特別に想う気持ちなんて忘れちゃってる

つもりだったし

好きじゃなかったつもりなのか

ってそんなのこわい



わたしなんて
一瞬その人を通り過ぎた人間でしかなくて
ちゃんと分かってたよ


それでも特別に想いたかった

身体を許すことも
時間をけずって会いに行くことも
浮き足立って行った美容室も
好みに合わせて選んだ少し可愛らしい服も


彼にとってはそれも
居心地がいい
都合がいい
いつもと違うな

なんて言葉で収まることだったんだろうな


あなたにはいつか
大切な人ができてしまうのかな
みんなに平等に与えてた優しさも
愛も
誰かひとりにだけ、あげちゃうのかな


そんなの当たり前に
わたしが独り占めしたかった

誰のものでもあってもいいけど
誰かのものだけにはならないでほしい




まだつよがりながら会いたいなって思う


わたしの悪い癖をあの日みたいに笑ってほしい




.