手放した代償



大切な人を失った

心は抜け殻のようで
ただ仕事に打ち込むことで、気分を紛らわした。


彼と付き合い始めて、
もうすぐ4年経とうとしていた。

4年の月日を過ごしたなかで、
俺は彼の何を見ていたのだろう。
彼の心へ踏み込もうとしなかった。
知ろうともしなかった。
俺への言葉も聞いてこなかった。
それどころか、愛情を伝えることすら疎かになっていた。


交わした約束も、思い出も
そのとき限りで
何も、何も、繋いでこなかった…

関係を失いたくなくて出した言葉も、
自信の無さから、本音を飲み込み
綺麗な言葉に塗り替えた。

素直になれず
自分を見せないまま、
まともに話せない状態で
別れを告げられた。

愛しているから、別れたい
俺をこれ以上困らせたくない

それが、別れの理由だった。


最後の夜

電話越しに
泣いていたであろう彼の表情が、
叫びのような言葉が、
脳裏に焼き付いついて離れない。

俺は、去りゆく彼の手を掴まなかった。

これは自分の弱さが招いた代償だと…

心には、ただ、彼へぶつけてきた
独りよがりの感情だけがあった。
初めて彼に会ったときに向けた色とは違っていて、酷く醜い色をしていた。

こんな自分では、いけないことは分かっていた。分かっていたはずなのに…
向き合うことをやめ、逃げ出した。


こんな酷い自分でも、
未だ彼を諦められない、
諦めたくないのは

彼を、本当に愛していたからだ。

己が向き合うべき弱さと
向き合っていこう。

また、この手で
彼の手をとり、共に生きたい。

二度と、離さぬように…
≪≫


+こころわけ *心海*+:(0)







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