黄昏ゆく街で

 
夕方
10月29日 17:07



12年前の今頃の時期の今ぐらいの時間だったな。
友人に頼まれて、友人カップルのパシりを
させられた。友人カップルのマクドナルドのおつかい。

それはただの口実で、
実は自分と自分の好きな子を二人きりにさせるため…という友人カップルの好意だった。

夕暮れに染まった街の中で
マクドナルドまでの道のりを
好きな子と二人歩いてく。
ゆっくり歩きながら行きたいと話す、好きな子の横顔に
高鳴る鼓動を抑えながら。


好きな子はよく夕方頃、学校で
一人塞ぎ込んでいた。
それがいつも心配で、しきりに心配していたけれど
その度、好きな子はいつも大丈夫、と言いながら気丈に笑った。


歩きながら好きな子は言った。
「夜考え事をしたら落ち込んでしまうから、夕方考えるようにしてるんだよ」

へー、そうなんだ

だなんて、ありきたりな返事しか出来なかったけど。
だから夜じゃなくて夕方頃いつもしんどそうに考え事をしてるんだなぁって思った。

いつもベランダから夕焼けを、夕空を、オレンジに染まる街を見ながら
時折ため息をつきつつ辛そうに俯いていた。
(その辛そうにしている原因が、実は友人カップルの彼氏を好きだったから……
と知ることになるのはそれより5年後になるが)


あの頃の、夕焼けの中で
憂いを秘めた表情で佇むあの子が好きだったなぁ。
あの子と過ごした、12年前のあの放課後の時間がずっと好きだった。

3階の日陰のベランダからは
夕空と夕焼け色に染まった街並みがよく見えてたなぁ。
青空から少しずつ少しずつ夕焼け色に変わっていく空が好きだった。

オレンジの街並みとオレンジに染まってく空と憂いた顔のあの子と
そしてそれを見ながら黄昏る自分と。


あの頃あそこで過ごす1時間は
短いようで長くて、長いようで短かった。

過ごしている間はとても長く感じて
一生時が止まってしまえばいいってずっと思ってた。
帰宅する頃には長いようで短かったなと物足りなく思った。

付き合えたわけじゃなかったけど、
あの頃の片想いは他のどの恋よりも純粋な気持ちだったよ。そして幸せだった。


あの頃の思い出はずっと忘れられない。
あの子の整った顔と、整ったショートの黒髪と、見つめるとなんだかイケない気持ちになった唇と、
そしてずっと好きだったあの子の特徴的な笑い声と。……………


だから秋が一番好きで、そして一番嫌いだ。


 comment 0


back   next






[このブログを購読する]


黄昏ゆく街で

-エムブロ-