話題:素直な気持ち

眠っている姿にいとおしさを感じる。寝返りをうち、派手なイビキをかく姿さえも微笑ましく感じる。彼と一緒にいる時間のなかで愛を肌で感じるのは、眠っているときや一緒にいない時間だった。話していたり、ごはんを食べたり、でかけたりする時間はたのしさやうれしさに包まれて、ついわすれてしまう。恋人というより、その瞬間は親友にちかいようなそんな感覚がする。何年という時間をともにしても知らないことはあり、発見することがある。一緒に暮らすようになってからはとても。きらいな食べ物ややりたくないことをするときの彼のこの世が終わったかのような絶望的な表情、すきな食べ物ややりたいことをしたときの無邪気さ、ここまでわかりやすくて、よくソープへ行くものだとこの間みつけた、いつのかわからない名刺と生々しいメッセージを思いだし、無心になる。すき、きらい、そのふたつだけでは計れない感情がある。それは、信じるとか期待とも似ていて、祈りにいちばんちかい。パーフェクトなんてない、けれど、それだけはって思ってしまう。恋をして、バグって、バージョンアップさせて、バグって、愛になることを待っている。今年で27歳になるあたしたちに神様はどんな道のりを用意しているのであろう。



過ぎた時間に思いを馳せることはすくなくなった。けれど、不意打ちででくわす過去の象徴に胸がえぐられ、フラッシュバックする光景がある。ああ、あたしは恋をしていだ。こんなにもあのとき、あのひとのことがすきだったんだ。どんなにひどいひとでも、どんなにやさしいひとでも、あたしは想い、全身で恋をした。恋をしたり、されたり、実らなかった想いが無意味なようにみえて、実はこころを豊かにしていたり。失恋もなみだも、そういうのがなければ、また恋をしようとは思えないのかもしれない。あまくてにがい、過去の恋。ときおり、再生させては愛を噛む。味のしなくなったチューインガムのように、当時のあまさもにがさも思い出せなくなればいいのに。