タイトルなし

逢魔時奇譚【14話(15)】
「き、君は本当にエクソシ、…あ!待ちなさい君!?」  
タァン!警察官や野次馬達の頭上を跳び上がった。天音が居る部屋の窓を目掛けて。

一方、天音ーーーーーー
ドンドンドンドン!!ガン!ガン!ドンドン!!扉が変形するくらい廊下側から誰かに蹴られ叩かれている。短気な天音が変身装置をまず片頬に取り付けた。
「今も行くっつって、全然来ねぇじゃねぇか!くっそ!待ってられねぇ!アタシはバトるぜ!」
「…だから…絶対ダメ…って…言った…よね…」
「どぅわあああぁああ!?」
小窓から顔を出してジト目でこちらを見ている奏に、今ようやく気付いた天音は、素っ頓狂な声を上げる。
ドガァアン!!
「…!」
「!」
控室の扉が外側から蹴飛ばされた。
「ゆきにゃああん会いたかったよぉおお〜ゆきにゃあああん!」
悪魔に取り憑かれワニ化した和夫が扉を破壊して部屋へ入ってきた。

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逢魔時奇譚【14話(14)】
電話の向こうの奏にも聞こえるくらい、扉の外を叩く激しい音。奏は目を見開き焦るのに、当の本人の天音は笑っていて余裕。ドン!!ドンドン!
「なぁ。アタシらしくねぇ事言っても良いか?」
「…そういう話…後にして…!本当に…開けたら…ダメだから…!…駄目…!絶対…!開けないで…!」
「待ってるよ、眼帯」

一方の奏。スタジオの外には既に悪魔に乗っ取られ姿がワニ化した和夫から逃げ出していたHRE26メンバーやスタッフ等…、明らかに天音以外全員が逃げ出していた。周囲には赤色灯を回しているパトカー5台と警察官と野次馬。
「中に人は!?」
「メンバーの1人神堂由輝がまだ…!」
警察官とスタッフのやり取りが聞こえて、奏は歯をギリッ…!と噛み締めた。「っ…!!」
ーー…自分達ばっかり…真っ先に逃げて…どうして…誰も助けに行こうと…しないんだ…!ーー
「…!君は!?」
傘をさした警察官達とメンバーやスタッフの間に、奏が着地。下を向いたまま奏が、keep outの黄色い線が張られた先を進もうとしたが、「何をやっているんだね君は!」案の定、警察官に腕を掴まれた。それでも下を向いたままの奏の髪から滴る雨水。
「早く下がりなさい!HRE26のファンの子か何だか知らないが、此処は君のような子供が入ってきて良い場所じゃないんだ!早く下がり、」
「…あっ!君、この前うちらを悪魔から助けに来てくれたエクソシスト君じゃん!」
「なっ…!?」
「…!」
HRE26メンバー美香の一言で奏も驚くし、警察官や野次馬やスタッフや他メンバーも驚き、一気に騒がしくなる。
「え?あの小さな子供がエクソシスト!?」
「まさかぁ…」

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逢魔時奇譚【14話(13)】
カツン、コツン、扉へ近付く天音の足音。
「…出たら…!アンタ…エクソシストだって…皆にバレる…!」
「だなぁ。ま。そういう日が来ちまったと思うしかねぇだろ」
「…っ…、本当に…!出ないで…!そいつ…!アンタを殺すって…言って…!」
「そりゃあ悪魔なんざ全員、人間をぶち殺そうと思っていやがるだろーが。大丈夫ダイジョーブ。生憎アタシはお前より強ぇエクソシストだからな」
「…っ…!」
ガチャッ…、スマホを肩と頬で挟みながら、天音は扉のノブを回した。その音が筒抜けな奏は電話の向こうで歯を噛み締めた。
「僕は!!横田さん達があんなになってから!!アンタを守りたいってより一層思ったんだ!!だからその扉を開けるな!!アンタを守りたいから!!お願いだからその扉を開けるな!!」
「…!」
ピタッ…、ノブを半回転したところで手を止めると。天音はガチャッ…、と中から鍵をかけた。

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逢魔時奇譚【14話(12)】
同時刻、スタジオ控室ーーーー
スムーズに撮影が進み、通常より2時間も早く終わった撮影。他メンバーが隣の控室で、彼氏の愚痴やら何やら話しながら帰り支度をしている声が聞こえる。天音はいつも通り1人の控室で、かれこれ1時間前から奏にメールを送っている。パイプ椅子に体育座りをして、今もまたメールを送り、スマホをいじりながら口を尖らせていた。♪〜♪〜♪
「うおぉおう?!」
スマホから大音量で着信音が鳴った為、椅子から引っくり返りそうになる程驚いた天音。
「な、何だよっ眼帯っ」
「遅い…!」
「あァ!?うるせぇ!!だっ、大体てめぇがいきなり電話かけてくるのが悪りぃんだろーが!!でっ、電話だと緊張するじゃねぇか…って!!別に眼帯てめぇに緊張してるって意味じゃ、」
「…早く…スタジオに居る…人達と一緒に…外へ…逃げて…」
「あ?どういうこった、そりゃ?」
「アンタを狙った悪魔が…そっちに向かったんだ…!!」
「アタシを?何で、」
コンコン、
「お?誰か来たな」
「…!!」
電話越しでも奏に聞こえた。控室をノックする音が。だから、電話の向こうで通話しながら屋根伝いに跳んでスタジオを目指して飛んでいる奏が顔面蒼白になる。一方の天音は、奏の気も知らずに暢気にスマホで通話をしたまま扉へと歩き出す。
「この来訪者が、お前の言ってる悪魔ってか?」
「…出ないで…!絶対に…!」
「バーカ。アタシはエクソシストだぜ?敵前逃亡なんてしてられっかっての。アタシを狙った悪魔なら尚更な」

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逢魔時奇譚【14話(11)】
変わり果てた息子を見上げ、放心状態の母目掛けて和夫は口を大きく開き…
「まずはお前から殺しテやろうかァ目障りなババァ!!」
ゴウッ…!!噴き出した火の塊が母目掛けて噴き出す。ドガン!!しかし母の前に立ちはだかり、黒い光で炎を弾き飛ばした奏。
「あぁ…!君はさっきの坊やかい!?助けてくれてありがとうねぇ…!」
「ヒャヒャヒャヒャ!」
「…ハッ!」
振り向くと、いつの間にか和夫の姿は忽然と消えていて、彼の笑い声だけが真っ暗な雨降りの空に響いていた。
「くっ…!」
「うちの馬鹿息子が…迷惑をかけて…ごめんねぇ…?…それを言った矢先にこんな事を言うのも…母親失格なのだけれど…。あんな子でも…ひとりっ子で…私達の宝物…なんだ…。あの子がどうしてあんな風になったかは分からないよ…。けれど…」
「……」
「あの子を…、助けてくれる…かい…?」奏は下を向くと、呟いた。
「…僕は…、その為の…エクソシストですから…」
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