タイトルなし

逢魔時奇譚【13話(9)】
天音は立ち止まり振り向く。しん…しかし其処には閑静な夜の住宅街が広がっているだけ。人っ子1人居らず。
「…何だ?空耳か」
天音は首を傾げて前へ向き直し、再び歩き出す。カツン…、…コツン…カツン…、…コツン…
「!!」
まだ、歩き続ける。だが、確実に自分と同じ歩調でもう1人分の足音が重なって聞こえている。カツン…、…コツン…カツン…、…コツン…、歩調は変えず。振り返らず。気付いたと勘付かれないよう平常心を保ち。歩く天音だが、頬に冷や汗が一筋伝う。
ーー悪魔か!?いや、にしては悪魔の気配が感じられねぇ!なら人間か!?クソッ!由輝の姿からじゃあ迂闊に変身できねぇじゃねぇか!これなら天音の姿に変身してから帰るべきだったぜ!ーー
カツン…、…コツン…カツン…、…コツン…、まだついてくる足音。天音は歩調は変えず、曲がり角を左へ曲がる。
■毎日沢山拍手ありがとうございます!普段全くTV見ない私が今、たまたまTV見たらやってたイッテQで出川イングリッシュを久々に涙出る程笑いましたww

タイトルなし

逢魔時奇譚【13話(8)】
「由〜輝ちゃ〜ん。恋愛。するなら、うちらみたいに週刊誌に撮られないようにしないとヤバイよ〜?特に。熱愛を知った熱狂的ファンは推しメンに何するか分かんないからね?」
「なっ…、何の事?私、そういうの…、」
「由輝ちゃん鈍いから。警告💓してあげたんだよ💓」
「そ…、そっ…か。でも私、そういうのしてないし、そういう相手居…、居ないから大丈夫だよっ!」
パタン、扉が閉まると、眼鏡は顔を見合わせて微笑を浮かべていた。美香は肩を竦める。
「…まっ。これがトップアイドルならネタを週刊誌に売り込んでたところだけどね〜。何せ不人気アイドル由輝ちゃんだし。ネタにも取り上げてもらえないし。売りもしないけど〜」
「それに真凛ちゃんのイケメン彼氏と違って、相手があんな冴えないドルオタだからね〜」
「言えてる言えてる!あ〜疲れた!女子会して帰ろ〜」
「いいねいいね〜」

駅裏の住宅街ーーーー
「ったく!!美香もあいつら全員女の意地悪さが滲み出過ぎだっつーの!真凛の次はあいつらかよ!あいつら全員クソだ!クソ!クソ!」
賑やかなハラエ区の駅裏通りを歩く天音。不人気…とはいえ一応ハラエを拠点としたアイドルだから帽子を目深にかぶり、大きなレンズの伊達眼鏡をかけてマスクをつけて変装中。カツン…、…コツン…カツン…、…コツン…、
「!」
誰も居ない住宅街の夜道。天音の足音に重なってもう1人分の足音が少し離れた背後から聞こえた。

タイトルなし

逢魔時奇譚【13話(7)】
19:02、HRE26楽屋ーーーーーー
「はーーあっ。キモオタ共の相手疲っかれた〜。帰ったら手を除菌しなくちゃね〜」
「美香それ言い過ぎ〜。これもお仕事お仕事〜」
「けど、除菌は言えてるよねー!今度から見えない透明な手袋つけて握手会したいー」
「ていうかもう握手会無くしてほしい〜!」
「それだわそれ!」
「きゃはははー!」
握手会に居たメンバーと同メンバーかと目を疑う彼女らの素顔。魔女さながらの笑い声が響く中。
ーー…こいつらも真凛みたいに全員悪魔憑いてそうじゃね?ーー
話の輪には入らず、部屋の隅で着替え支度をしながらそんな事を内心呟いている天音。
「ねぇねぇ由輝ちゃ〜ん。10枚くらい握手券を買って由輝ちゃんと握手してたマスクした男の子。この前、真凛ちゃんの悪魔を祓いに来てたエクソシストの男の子だよね〜?」
ドンガラガッシャーーン!!あからさまにロッカー内のバッグ、衣装、私服を盛大に落としてしまった由輝に、さすがのメンバー全員も苦笑い。
ーー分かりやすっー…ーー
「そそそそうだっけ!?」
「ゆ…由輝ちゃん…顔…真っ赤…」
「あ、あああ!これ!?私今日微熱があるから!!それのせいだよ!?!」

タイトルなし

逢魔時奇譚【13話(6)】
去り際、30歳代熱狂的ファンとも苦笑いだがちゃんと握手を続けている天音を奏はチラッ…と横目で見て、「……」
握手会会場を出て行った。

会場外ーーーーーー
「よーっす!かな!」
会場まで天人と来ていた奏。外で待っていた天人は、奏に手を振る。
「……」
奏の視線の先は天人…ではなく、天人と話していた女性2名。
「ごっめん!連れが来たからまたね!」
「うんっ💓後でLINE送ってね💓」
「私にもだよっ!」
「オッケー♪」
手を振り合い、去っていく女性2名。
「ちゃんあまと握手できたか?まっ!握手券代5500円返すのはバイトかエクソシストの給料出てからで良いからな〜」
「…チャラ男…」
「チャラ男!?誰が!?」
キョロキョロ見回す天人を指差す。
「俺!?」
「…しか…居ない…よね…」
「ナンパしただけでチャラ男とか理不尽ーー!!」
「…普通の人…は…ナンパ…しない…から…」
「男に産まれたからには最大限に男を活用しなくちゃでっしょーが!」
ぷいっと背を向けてさっさと歩いて行く奏。
「…帰る…」
「あー!ちょい待ちー!かなー!俺、逢魔時町の行き方まだ分かんないんだから先行くなってバカちん!!」

タイトルなし

逢魔時奇譚【13話(5)】
「…あの…!」
「あのさ!」
同時に上げた顔。同時に重なった声。ドキッ!とした2人は見合う。
「なっ…!?な、何だよ!?」
「…えっ…!?ア、アンタ…こそ…!」
「先に言えよ!あ〜!あと8秒!」
「〜〜…!!」
「言わねぇならアタシが言うぞ!?」
「…僕も言う…」
「それだと被るだろ!あぁ!けどあと5秒だし、ま、いっか!」
天音は周囲に聞こえないようヒソヒソ声。勿論、奏もヒソヒソ声。2人同時に口を開いた。奏の瞳には天音を、天音の瞳には奏を映して。
「…今日は…ありがとうっ…」
「今日はありがとなっ!」
ぴったり0秒。時間切れとなったから、奏からパッ!と手を放して背を向けて去る。当たり前だ。時間切れなのだから。だけど、天音は、遠ざかっていく奏の背を、口を開けたり閉じたりしながら見つめる。何かを言いたそうにしながら。
「〜〜ぁっ、あの、さ、」
「ゆきにゃーーん!💓」
「は、はいっ!」
奏の姿が隠れる程巨大な男性ファンが由輝ブースへやって来た。皮脂なのか汗なのか分からないテカテカしていかにもな30歳代のオタク。由輝の顔写真入りシャツを着ている。左手で汗を拭いながら、右手を差し出す。
「ゆきにゃん〜会いたかったよぉ〜💓はい!ぼく握手券20枚買ったから6分40秒握手してよねぇ〜💓何ならサービスで7分にしてくれても良いよぉ〜」
「あ、あはは〜…サービスはでき…ないなぁ〜。ごめんね…?」
「えぇ〜〜!ま、い〜やぁ!ねぇねぇ!ゆきにゃんが2ndシングル衣装なのはぁ、ぼくがその衣装好きだからだよね?ねっ!?」
「えっ!?た、たまたま〜偶然だよ〜」
「そうやって照れなくてイーんだよぉ〜!ぼくとゆきにゃんの仲だからねぇ〜💓あっ!でもHRE26は恋愛禁止だから、彼ピッピのぼくのコトは内緒にしなきゃだから、誤魔化したんだよねっ?!さっすが、ぼくのゆきにゃん〜!プロ魂だねぇ〜💓」
「あ…あはははー…」
笑顔!笑顔!と意識してもさすがに口角がヒクヒクしてしまい完全にドン引き笑顔な天音。
ーーぐおおぉおぉ!!臭ぇええーー!!彼ピッピって何だよぉおおーー!?ドラブルの新種のモンスターか!?あぁキメェ!!けど、我慢だ我慢!!妄想が激しいだけで別に悪さしてねぇただの熱狂的ファンだ!!これもトップアイドルになる為の修行と思えアタシ!!我慢我慢!我慢我慢だーーーーッッ!!ーー
自分を鼓舞する天音
前の記事へ 次の記事へ