タイトルなし

逢魔時奇譚【13話(4)】
「…ってお前ぇええ!?」
"お前ぇええ!?"の部分はちゃんと小声に切り替えた天音の前には、また、奏が現れた。だから、周囲をキョロキョロ見回しながら天音は左手で自分の口を隠しながらヒソヒソ話す。
「お前は新規ファンだから握手会の仕組みっつーもんが分かんねぇんだろうけどな!握手券は1枚につき1人1回なんだよ!だから1枚で2回やってんのがバレる前にお前帰れ!」
フルフル首を横に振る奏。
「あ?何だよ。それどういう意、」
奏は右手を開き、手の中には"神堂由輝"の名が書かれた握手券10枚があった。
「?!!」
「…券が売れた枚数…カウントされる…よね…。そうすれは…アンタの人気…ちょっとは…上がる…かなっ…、て…」
「〜〜!!」
天音は左手で、奏の左手を握った。
「HRE26握手会ルール。握手は1人20秒。だから」
由輝スマイルの天音。
「君は3分10秒、私と握手できるねっ!」
「…3分20秒…でしょ…馬鹿…?」
ドスッ!!
「〜〜…!!」
周囲に気付かれぬよう奏の足を思い切り踏んだ天音。激痛に言葉が出ない奏と、何事も無かったかのようにニコニコ笑顔を絶やさない天音。
「教えてくれてありがとぉ〜💓由輝頭悪いから計算間違えちゃったぁ💓許してくれるよねぇ?💓」
「…は…、はいっ…」
悪魔が憑いているのではないか?!というくらい恐ろしい天音の笑顔に、奏は逆らえなかった…。

タイトルなし

逢魔時奇譚【13話(3)】
きゅっ!
「〜〜…!?!」
由輝スマイルを浮かべて天音が握れば、奏はビックウゥ!!として明らかに地面から1cm浮いた。
「はいっ!由輝に会いに来てくれてありがとう☆これからも由輝推しでいてねっ☆」
天音のいつものドスの効いた声ではなく、由輝の可愛い声で首を傾けながら言い、手が放れると…奏は逃げるようにパタパタと走り去る。ドッスーーン!!運動が苦手な奏は案の定足が縺れて盛大に転倒していたが。他のメンバーのファンはクスクス笑う。
「うっわ。ダッセェ」
「引きこもってて運動苦手系のファンじゃね?」
「大丈夫かい君!?」
スタッフに駆け寄られると、コクコク頷き逃げるように走り去って行く奏だった。
「あいつ…バトルの時あんなじゃねぇのに普段はまだ運動オンチかよ…。バトルの時どんだけアドラメレクのパワーに頼ってんだ…」
そんな彼を、天音は口角をヒクヒクさせて苦笑いで見ていた。
『……。好き……ですっ…』
ボンッ!!先日奏に言われた言葉を思い出した天音は耳まで真っ赤になり赤面。天音は本日二度目の頭から湯気を噴出。
ーーだーーーっ!何でまた眼帯を思い出していやがるんだよアタシーー!!アレは!!昨日のアレは!!嫌いな食べ物より〜っつー意味で!!握手会に来たのだって、アタシの仇な眼帯はせめてアイドルのアタシの人気を上げてやるっていうあいつなりの償いなだけで!!別に他意は無い!無いからな!!ーー
スッ…、
「!」
すると、15分置きに来ていたファンがまだ5分しか経過していないというのにやって来て左手を差し出したから、天音はまた由輝スマイルに切り替えた顔を上げた。
「由輝に来てくれてありがとう☆握…、」

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逢魔時奇譚【13話(2)】
「っ…!!」
思い出した両親の姿で目から溢れ出そうになるモノがあるから。だから、唯一の左手を震えるくらい強く握り締めた。
スッ…
「!」
下を向いていたから、目線の先に差し出された男性の左手が視界に入った。だから、ハッ!とした天音は咄嗟にアイドルスマイルへ切り替えて顔を上げて左手を差し出す。
「ごめんなさいっ!考え事しちゃってて!由輝に来てくれてありがとう!握手しー、」
天音の言葉が止まったのは、握手会へやって来たファンが、キャップを目深にかぶってマスクをした…
「…眼帯?」
「…!?」
ビクゥッ!!としたファンは、奏。バレバレなのだが、一応彼なりに完璧な変装をしたのに瞬殺でバレてしまい、左手を差し出しながらも顔はぷいっと背けてしまう。冷や汗ダラダラで。人気上位メンバーの周りにはスタッフがついているが、天音に一番近いスタッフで10mは離れている。それでも一応周囲のスタッフやファンやメンバーには聞こえないよう小声で話す天音。
「…ぷっ!何だよそれ。変装したつもりか?バレッバレなんだけど」
「〜〜…!!」
「つかお前わざわさ握手券買ったのかよ?」
「〜〜…!」
「ビンボーエクソシストのクセに無理すんなよな〜。ほいっ!」
更にぐいっ、と差し出された左手に、奏がドキッ!とするから、天音はまた笑う。
「お前なぁ!握手券買っといて、手ぇ出されてキョドるって意味分かんねー」

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逢魔時奇譚【13話ジェラシー(1)】
HRE26握手会ーーーーーー
一番隅では案の定、列に1人…2人…と、15分置きにファンが握手に来るだけで閑散としている神堂由輝ブース。
「なぁ。アレ見て」
「うっわ。ガラッガラじゃん(笑)」
「この前ネットで人気投票ゆきにゃんが1位になってたのって、どうせ1人のファンが大量に投票しまくっただけっしょ?」
「若しくは自分で投票」
「あるわ(笑)」
隣のメンバーの列からは、ガラガラの天音のブースを見ながらヒソヒソ話す声がする。こんな光景は毎回だ。だから慣れっこな天音は、ニコニコ笑顔を振り撒いて神堂由輝を演じている。…が、いくら慣れっことはいえ超絶短気な天音の内心は、毎回額に青筋をビキビキ立てて怒りフルバースト。
ーー聞!こ!え!る!ように言ってんじゃねぇぞクソ野郎共がぁああ!!思っても口に出すんじゃねぇ!!しかも男が女相手に陰口とは、男の風上にも置けねぇクズ野郎だな!ー
…と、内心はぶん殴りたいくらい毎回怒り狂っている天音だった。
「いらなくね?」
「あんだけ毎回ガラガラならさ」
「卒業〜って名目で、人気無いから解雇にされそう」
「アイドルの握手会であれだけガラガラとか逆にレア。写メってSNSにアップしよ(笑)」
「てゆーか事故で右手無くなったのは可哀想だけど、それでまだよく居座るよね〜」
「普通さぁ…やめない?がめついよね〜」
やはりまだ聞こえて来る、他メンバーファンからの心無い声に、ニコニコ笑顔…だった天音の表情も曇り空。少しだけ、下を向いてしまう。
「……」
『あまねねー!お歌も好きー!かわいいお洋服たくさん着たい!だからねー、あいどるになりたいのーっ!』
『天音は毎日お歌を歌って踊っているからな』
『けどアイドルなんて皆が皆人気者になれるわけじゃないんだぜ?それでもなりたいか?』
『うんっ!だからねー!あまねが、あいどるになったら、おとーと、おかーと、おにぃをしょーたいするのっ!』
『そりゃ楽しみだな!』
『はっはっは!その頃には俺らもアイドルの父親母親か!楽しみだなぁ!』
テレビで毎日見ていたアイドルに憧れていた。玩具のマイク片手にテレビの前で歌ってくるくる踊っていた幼少期の自分と、それを応援してくれる両親の姿が蘇る

タイトルなし

逢魔時奇譚【12話(7)】
「ほー。なるほど。それで、ね」
マンションロビーに降りて天音用のサイダーを自動販売機で購入する奏と天人。天音が居ないのを良い事に、エレベーターに乗っている最中、奏は天音の右手が無いのは兄・聖弥のせいで、聖弥が天音にしてきた今迄の非道な行いも全て話した。
「ちゃんあまは、神堂隊長の名前を聞いただけであんな調子になっちゃったってワケか」
「…僕が言った…って…」
「内緒にするに決まってるでしょ〜が。天人クン良い子だからね〜。にしても。実の妹にそこまでやるとは、マジで神堂隊長こそ悪魔憑きじゃねーの?って感じだよな。ま。憑いてないから隊長やってるんだろうけど。そんなえげつない事までして憑いてないとか逆にすげーわ」
「…うん…」
「ならさクソ兄貴から、かなが、ちゃんあまを守ってやんないと。だなっ!」
「…ううん…」

その頃、祓本部大会議室ーーーーーー
「宜しいのですか元帥。実の妹の右手を切断。そして例の疑惑が有る神堂聖弥を、横田隊長が復帰するまで一時の間とはいえ彼らの隊長にして」
「ふむ。椎名が居れば天音も大丈夫じゃろう。それに、神堂を椎名と同じ隊に組ませてこそ、神堂の疑惑が白か黒か判明し易いしな」
「…承知致しました。…しかし神堂聖弥は何故あのような嘘を…」
「…からじゃろう」
「え?」
元帥はとある1名の書類を眺めた。
「横田達と居たにも関わらず自分だけ生気を吸い取られなかった事を儂らに疑われる。故に、己だけは別行動をとっていた、と嘘を吐いた。それ以上でも以下でもないじゃろう」
「…この事実を椎名が元帥に教えてくれたお陰ですね」
「うむ。…神堂。お主が白か黒か、はっきりさせてもらうぞい」
元帥のグレーの瞳には、顔写真付きの聖弥の書類が映っていた
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