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逢魔時奇譚【12話(6)】
天人は彼らしくない声を荒げたまま続ける。
「お前さぁ…!俺が昨日お前の手を振り払って無視したの、どういう意味か全ッッ然分かっていねぇのな!!お前に腹立ってるって意味なんだよ!!もっと言えば、お前とはもう関わらないって意味なんだよ!!高1になったならそのくらい察しろよ!!」
「……」
「そのくらいの相手の感情すら読み取れないとお前このままずっと独りぼっちになるだろ!?ただでさえ引っ込み思案で、昔っから俺としか喋らないんだからさ!!つーか何だよ。何で9年も経った今更!あの日叔父さんと叔母を殺したのが母さんだ、って暴露した!?どうして今迄9年間ずっと隠してた!?お前、犯人の顔は見てなかったって言ってたよな。9年間ずっと嘘ついてたって事だよな!?叔父さんと叔母さんが殺されてからお前は尼子家に引き取られた。その間ずっとお前は、自分の両親を殺した母さんと暮してて何とも思わなかったのかよ!?犯人だっつーのに、かなに辛く当たる母さんに対して怨み辛みは湧き上がらなかったのかよ!?」
「……」
「自分の母親が殺人犯で悪魔憑きだとも知らず、ヘラヘラ生きてる俺をお前は、馬鹿で!愚かで!脳天気な奴だ!って心の中でずっと嘲笑ってたんだろ!?そうなんだろ!?何がヒーローだ、って嘲笑ってたんだよな!?9年間もずっと俺を嘲笑ってたんだろ!?さぞ楽しかっただろうな!!…くっそ!!ふざけんな!いい加減に、」
「…ち…がぅ…、ひっく…」
幼い頃、いつも金魚の糞のように自分の後ろをぴったりくっついてきて…自分の服の裾を掴んで、少し離れただけでボロボロ涙を流して見上げてくるあの頃と変わらない奏が居た。
「…天…、ひっく…言ったら…、天人…に…嫌われ…るって…思ったから…っ。天人…が…知ったら…悲しむと思った…から…。でも…昨日…言っちゃって…ごめんね…ひっく。ずっと…言わないままに…すれば良かったのに…昨日…叔母さんの目が恐かった…から…つい…言っちゃって…ごめんね…嫌いにならないでっ…天人…。僕の家族…もう…天人しか…居ないから…嫌いにならないでっ…!」
「かな…。なるわけな〜いでしょーが。寧ろお前は今迄よく俺を嫌いにならなかったな」
ポン、天人が奏の頭に手を置く。キョトンとした奏が見上げると、其処にはいつもの明るい天人の笑顔があった。
「お前は俺を思って、9年間もずっと内緒にしてくれていたんだな。なのに俺はお前をあんな風に言って本当にごめん。大事なお前を疑って、こんなに泣かせるなんて。ダメなヒーローだな、俺は。悪魔でも憑いてんのかってくらいのサイテー野郎だよ俺は。…なのに今から我儘言うけどごめん。かな。お前と同じで俺にももうかなしか家族が居ないんだよ。こんなダメ兄ちゃんだけど俺の事嫌いにならないでいてくれるか?」
「…うん…!!」
「お前なぁ〜いい子過ぎっ!叔父さんと叔母さん殺した犯人と一つ屋根の下で暮して9年間も黙ってるなんてお前がパンクしちゃうだろ?かなは内気だからな。我慢ばっかりしてると病気になっちゃうんだぞ〜?決ーめた!今迄ずっーと我慢していた分、今日からかなは極力我慢しない事!全部我慢しないってのはさすがにダメだからね〜」
「…うん…」
「オッケー?」
「…うん…。じゃあ…」
「んん〜?どったの?」
「…天人…うざい…」
「いきなり我慢しなさ過ぎーー!!」
昔と変わらぬ笑顔が戻った2人からは、楽しい笑い声が聞こえた。

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逢魔時奇譚【12話(5)】
「……。好き……ですっ…」
「…ふえっ?!」

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逢魔時奇譚【12話(4)】
「兄貴とは嫌でもこれから一緒に居なきゃなんないし!アタシ、お前が入団する前から変わり者ってよく言われてて浮いてたから、今更悪魔憑きの仲間とか何とか言われたって、へでもねぇし!だから…だっ!だから!」
「……」
「独りにすんじゃねぇよっ…!」
下を向いたまま、パーカーの裾掴む天音。天音が掴んでいる裾に幾重もの皺が寄っていく。
「…HRE26っ…て…他のアイドルと…同じ…で……恋愛禁止…なの…?」
「は!?」
奏の口から絶対聞く事は無いだろうと思っていた言葉が飛び出したので、天音は目を見開き驚くし、あまりに驚いた為かツインテールが浮き上がる。顔だって真っ赤になり、逆に天音が下を向いて目を反らしてしまった。
「…神堂さん…」
「…ん!?」
初めて"アンタ"呼び以外で呼ばれて、目を丸めた天音。混乱する天音に追い打ちをかけるように奏は天音の目を真っ直ぐ見て口を開いた。

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逢魔時奇譚【12話(3)】
「いい加減にしやがれよ!!それを言うならてめぇだろ悪魔憑き!!憑きモンがあるてめぇの方が怪しいだろが!」
「何なに?」
「喧嘩?」
階段を降りる際、たまたまこの階を通り掛かったエクソシスト達がチラチラこちらを見てくる。だから聖弥は「…チィッ!」と舌打ちをする。2人の脇をツカツカと通り過ぎて行く。
「あーあ。横田がやらかしたせいで、エリートな俺がポンコツ共を押し付けられる事になるなんざ、とんだとばっちりだぜ。横田が前線へ戻るまでの間。今日から俺がてめぇらの隊長だ。馬鹿な真似したら容赦しねぇからな」
「んなっ…!?」
「…!?」
通り過ぎ際に言った聖弥の言葉に、2人は目を見開いて振り向くのだった。

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逢魔時奇譚【12話(2)】
祓本部、病棟ーーーーーー
ピ…、ピッ…、5人分の心電図の音。室内が見えるが、医療班しか入れない集中治療室。しかし、透明な壁で作られている部屋だから、部屋の外の廊下から彼らを見舞う事はできる。室内には、口と鼻以外全てを黒い包帯で隠されまるでミイラ…のような姿に変わり果ててしまった横田、春日、瑞希、ロン、小梅が点滴と酸素マスクと心電図を付けてベッドで横たわっている。
京都で御子柴と遭遇してしまった彼らは御子柴に生気を吸い取られ、全身が年老いて皺だらけの肌で骨と皮だけの姿になってしまったのだ。ただ、民間人のように即死…ではなく、さすがはエクソシストになる人間なだけあって生存している。しかしずっと意識が戻らないし、医療班が点滴経由で栄養剤を送り込んでも、彼らの変わり果て、老いた身体はまだ元に戻らない。

天音を隠すように、奏が前に立つ。現れたのは、ポケットに両手を突っ込み不遜な態度の聖弥。
「眼帯…」
「あ?knight気取りかよ。悪魔憑きは俺と同じ空間に居合わせんなっつっただろーが」
「……」
「俺と会話しないようになったソレは合格だ」
「…アンタは…横田隊長達と一緒に居なかったの…」
「は?」
聖弥を凝視する奏の一言に、聖弥は眉間に皺を寄せて苛立つ。天音は、奏の後ろで目を丸めた。
「てめぇ!何が言いてぇんだよ!!」
「…別に…」
「お前らが尼子を連れて勝手に何処か行った後、追い掛ける為に俺、横田、春日隊、ロン&小梅の4手に分かれたんだ!てめぇのその言い方、俺がまるで666側についているみてぇじゃねぇか!!」
「…だって…アンタだけ…怪我…してないから…」
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