逢魔時奇譚【5話(10)】
ぐいっ!奏は天音の左腕を引っ張ったまま控室を飛び出し、劇場へ続く廊下を駆け出す。
「ちょ!?ふざけんな!!アタシはもう辞めるって決めたんだ!!今日のライブだって出ねぇって決めたんだ!!」
「……」
「うんとかすんとか言いやがれ眼帯!!」
「すん…」
「てめぇえええ!!」
ゲシッ!!天音は奏を思い切り蹴飛ばす。ギィッ…、2人が通り過ぎていった化粧室の扉が静かに開く。室内からは、HRE26トップ人気で先程天音に陰湿な嫌がらせをしていた真凛が顔を覗かせた。真凛の青い瞳に映るのは、廊下を駆け抜けて行く奏と天音の後ろ姿。
「今まで気付かなかったけれど…。ふぅん…聞こえてきた会話からして由輝ちゃん、エクソシストだったんだぁ…。てコトは連れの男の子もエクソシスト?にしては弱そうだけれど?…まぁ。今の心が弱音を吐いている由輝ちゃんなら憑きやすそうだし美味しそうねェ…?」
ペロリ…、長い舌を出して不敵に笑む真凛。しかしその声は、真凛の声に他の女の不気味な声が重なっていた。