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逢魔時奇譚【16話(25)】
「神堂聖弥を入団させたのはわたくしですから、今後神堂聖弥がどうなろうとわたくしが全て責任をとりますの!」
バタン、れいなが出て行くと、廃墟の館には彼女が走り去る足音だけが聞こえていた。
「……」
それを、ソファーに腰掛けたまま聞いている聖弥だった。

ドン!ドガン!!遠く遠くの丘からはあの青白い強大な光と、黒い光とがぶつかり合う様子が此処からでもよく見える。何せ周囲は何も無い田舎の牧草地だから。
「ふぅ。それにしても聖弥がまさか堕天使だったなんて。けれど!お祖父様でも気付けなかった聖弥の正体に気付けたなんて、さすがはわたくしですわ!」
走りながら、ムフフ!と笑む。
「今に見ておりなさい聖弥!すぐにわたくしが隊長になり!そしていずれ引退なさるお祖父様の跡を継ぎ、元帥となるのです!そうしたらもう雑魚や中級やポンコツなどとは呼ばせませんわよ〜!」
「おい」

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逢魔時奇譚【16話(24)】
「…悪魔との交戦中の光が見えるあちらの方角は悪魔憑き椎名奏が向かった教会ですわ」
「それが?」
「京都祓魔任務で聖弥は横田隊長達と居合わせていた筈なのに、聖弥だけ生気を吸い取られていないのはおかしい…とお祖父様に密告をしたのは椎名奏だとお祖父様は仰っておりましたの」
「やっぱりあの悪魔憑き雑魚かよ。あのクソガキ、舐め腐りやがって」
「だから今、椎名奏と悪魔が交戦している場へ聖弥が行ったらいけません。だから、わたくしはあちらへ行きますけれど、聖弥は絶対に来てはいけませんのよ。此処でお待ちなさい」
「行けっつったり行くなっつったり、どっちだよ」
「横田隊長達を救うお気持ちの無い聖弥が今教会へ行っても、聖杯を取りたがらなかったり悪魔を庇う言動をしてしまう可能性がありますでしょう?それに、悪魔が聖弥は自分達666の仲間だと洩らしてしまうかもしれませんわ。そうしたらまたその言動を椎名奏はきっとお祖父様へ密告致します。そうしたら、聖弥貴方は今度こそエクソシストではいられなく…いえ、もしかしたら命の危機さえ脅かされてしまうかもしれませんわ。だから、貴方が今まで通り祓のエクソシストとして平穏な生活を送る為に貴方は此処でお待ちなさい」
立ち上がると部屋を出ていこうとするれいな。
「ー…で、」
「何ですの?」
振り向くれいな。聖弥は下を向いたまま。 
「…全部知っても何で俺を庇うんだよ、馬ッ鹿じゃねぇの」
「お祖父様は悪魔憑きの椎名奏を最終的に入団させたのはご自分だから、今後椎名奏がどうなろうとご自分が全て責任をとると仰いましたわ。だから、」
「……」

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逢魔時奇譚【16話(23)】
「いいえ。寧ろわたくしはとても嬉しかったですわ。聖弥がご自分の生い立ちを話してくださって」
「…何が嬉しいんだよ。今の話で、お前に得になる話なんざ1つも無かっただろーが。意味分かんねー」
「ふふっ。鈍感ですわね」
「は?」
れいなの言葉の意味も、笑顔の意味も聖弥は分からないままだが、れいなは今はまだそれで良かった。カッ!窓から射し込むのは、遠く…そう奏とビアンキ…否、サタンが向かった教会から放たれる青白い強大な光。それが何なのか分からないれいなは、其処に正座をしたまま上半身を伸ばして窓から外を覗く。
「先程の悪魔…ですの?」
「さあな」
「行った方が良いですわ。でないと聖杯を奪われて横田隊長達が息絶えてしまいますもの!」
「もう2個は既に悪魔の手の内だ」
「えっ!ならば尚更残りの聖杯3個だけでも取らないと!横田隊長や聖弥貴方の部下まで死んでしまうのですよ!?」
「なら本望だ。増え過ぎた下等生物が減るなら好都合じゃねぇか」
「……。本当にそう思っているのですわね?」
「はッ。幻滅したか、れいな様?早く行けよ」
「行きますわ。けれど、その前に聖弥にお話がありますの」
「随分と悠長だな。残りの3個だけでも取らねぇとやべぇんじゃなかったのかよ」

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逢魔時奇譚【16話(22)】
「アイツは知らねぇけど、親父が天使でお袋が人間。俺は天使の力も引き継いだが、天使と人間のハーフっつー所謂生物学上の異端な化物だ。だから産まれた瞬間から天使でも人間でもねぇ半端モンの堕天使。けど天音は天使の力を引き継がなかったただの人間。まあ天使の血は混ざっているから、普通の人間と比べたら化物に変わりはねぇけどな。…って、何でお前にこんな事喋ってんだろ」
くしゃっ…、と自分の髪を掻く。バツが悪そうに。だから、れいなは嬉しそうに微笑む。

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逢魔時奇譚【16話(21)】
聖弥のその様子で、一目瞭然。れいなは驚いて目を丸めて、彼を見上げる。一方の聖弥は「…チィッ」と舌打ち。
「聖弥…貴方まさか…本当に…?」
「……」
「…貴方の横暴な振る舞いをお祖父様はいつも"神堂は悪魔に憑かれているのではないか"と仰っておりましたわ。けれど、何度視ても貴方に悪魔は憑いていない。…妹の右手を奪ったり666と関わりがあったり横暴だったり…けれど先程わたくしを悪魔から助けてくれたり…。今ようやく理解しましたわ。悪人な一面も善人な一面もあるからこそ聖弥は堕天使なのだと」
「…っはァー…」
ドスッ!観念したのか?聖弥は深い深い溜息を吐くとソファーに深く腰を下ろす。長い脚を組み、両腕は背もたれに預けて下を向いて。その横でれいなは床に正座したまま、彼を見上げる。
「このわたくしが床で、聖弥がソファーだなんておかしくありません事?」
「隊長がソファーで中級雑魚エクソシストが床なのは当然だろが」
「中級は雑魚ではありませんわ!」
「充分雑魚だろが」
「だってお祖父様でも見抜けなかった聖弥の正体を見抜いたのですから!」
「…うっぜ…」
「ふんふふん♪」と鼻歌交じりに得意気な笑みを浮かべるれいな。
「では天音も堕天使ですの?」
れいなは、ひょこっ、とソファーへ乗り、聖弥の隣に正座する。
「…アイツは違げぇよ。人間だ。俺と違って下等生物人間らしいポンコツだろ。違げぇからムカつくんだよ、アイツだけ人間だから昔から大ッ嫌いなんだ」
「では聖弥と天音は親が違いますのね!」
「同じだ」
れいなは顎に手をあてて難しそうな表情で首を傾げる。
「では何故ですの?」
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