何だろうな……嫌な予感がする
俺は傷口塗塩。
黒柴犬の血の入った人間だ。
同級の千名章センナ アキラの部屋から帰宅して……今は自分の部屋の前にいる
何だろうな……このいやーな予感
俺は首をかしげる。
部屋からはいい匂いが漂ってる。
同室の綺月沙夜キヅキ シャヤが夕御飯を作ってるんだろう
シャヤは人形のような相当な美形で色白でミステリアスな雰囲気の切れ長の目付きだ。
身長は俺より少し高く隈がある。
モテるだろうに左手薬指には俺やアキラもそうだが純潔の証の黒い帯状の線が指輪のように入ってる
ちなみに純潔でなくなるとこの黒い帯状の線は指輪と化すため線は消える
話が逸れた
シャヤの趣味は料理と歌、ヘヴンズゲームというバンドのボーカルをしている。
ヘヴィメタで度々和ゴスだったりする。
シルバーアクセと動物の骸骨が好きでゴシック系や和ゴスのファッションを好んでる。
ちなみに骸骨コレクションはランプにして飾っている。
髪は長髪で銀髪。ところどころ黒色メッシュがあり、また紺色の幅の狭いミツアミを両再度にゆんでいる。爪には黒のマニキュア、耳には片耳3つずつピアス、一番下は8字架だ。8字架というのは俺たちの世界の宗教のシンボルだ。これはいつか説明しよう
シャヤの目は金色……月のような色をしている…
ちなみに魔術科だ。
得意な闇の魔術を専門に研究してる。
俺は一度ため息……いや深呼吸をして思いきってドアを開け……
ガチャ。
ドアが開いた
*お帰りトシオ!待ってたよ!*
シャヤがドアを開けて俺にいった
*えっ何で分かったんだ*
俺は戸惑う
*そろそろ帰ってくるかなって思ってたし
何か人の気配したから!*
*ああそうなんだ……ってその前にシャヤ……*
嫌な予感は的中した。
*何だい*
*何だその格好は!!*
*知らないの?裸エプロンだよ*
*知ってるわ!いやそうじゃなくて……何で……そんな格好を…………*
*トシオの為にだよ!ご飯にするお風呂にするそれとも……*
*冗談はよせ!*
顔が赤くなっていくのが自分で分かる
シャヤは本当に美人だ。
そんな美人がそんな格好をしている。
俺に限らず見たら赤面するだろう。
俺は目をそらして床を見ながらシャヤに言う。
*そうキリキリするなってぇ
今4月の世界でしょお。暑くて暑くて敵わなくて!*
*おいおいまだ4月だぞ*
高校は動いているし4月の世界に停泊したいるだけなのでまだという表現は変かもしれない。
いや、それよりこいつ、じゃあ夏の世界に行ったらどんな格好になるんだよ
俺は危惧する
俺はシャヤを恐る恐る見る
エプロンの裾をバタバタさせている
下着……穿いてなさそうだ
こいつ…………
俺は動揺する
*まあいいだろトシオ〜
それより飼い主に愛情表現はぁ?*
*俺はあんたの飼い犬じゃない!*
*なかなか反抗的な犬だなぁ。よしよし。*
シャヤは俺に抱きつき頭を撫でる
悔しいが頭を撫でられるのは好きだ
大変悔しいがシャヤに撫でられるのは一番好きだ
※一文消去
*トシオはいい子だねぇ*
*噛むぞ*
俺は睨み付けて言う
*まあまあ部屋に入って!
夕御飯食べよう!
今日はビーフシチューだよ
トシオが駄目な玉ねぎは抜いてある!*
*有難う。ただ頼むから服着てくれ……*
俺は部屋に入って言う
*服ねぇ……Tシャツだけでもいい?*
シャヤがエプロンの上側だけを身体から外す。
スラーとした上半身が丸見えだ
あまりの色気に俺はまた目をそらす
*言い方を変えよう下着を着てくれ*
*しょうがないなァー*
渋々と言った感じでシャヤが棚から服を出す
裸エプロンではあるがゴツゴツしたシルバーアクセは外していない
シャヤは下着と服-真っ黒で一筋の切り傷が入り流血している模様の長袖の服と真っ黒なズボン…腰に蜘蛛の巣の柄の赤いオーバースカート付きだ… に着替えて夕御飯を机に準備する。
美味しそうなビーフシチューだ
ご飯に海藻サラダも用意されている
相方が料理好きでよかった、俺は思う
テーブルは丸いこたつ台だ。今は布団はさすがにない。
座布団に座って合掌をしてご飯を食べる
シャヤの料理は本当に美味い。
俺はあまり料理は得意ではないので料理はシャヤに任せっきりだ。
*トシオ、ご飯食べたら散歩に連れていってあげ……
*だからあんたの飼い犬ではないって!*
料理上手だが……他人を何だと思ってるんだ……いや犬だと思ってるのか……
散歩……いつも夕御飯、今日は休みだから夕御飯だが基本的に夜ご飯だ、を食べてしばらくしたら2人で散歩に出る
犬に思われてるのは不快だがシャヤと散歩というのは悪い気はしない。
というのもシャヤと散歩するといつも周りがうらめしそうに見る
シャヤはモテる。
そんなシャヤとの散歩。なかなか気分がいい
残念なのがシャヤにとってはただの犬の散歩でしかないことだが……
俺は複雑な気分になって思わず顔をしかめる
*ワンワン、ご飯まずかったかい?*
*誰がワンワンだ!!
美味い、美味いけどワンワンはやめろ!*
*俺はねー犬が大好きでいつか飼うのが夢だったんだぁ〜
まさか高校で犬飼えるなんて嬉しいよ!*
そう言ってシャヤは俺にくっついて再び頭を撫でる
*むむむ……犬だけど……俺は人間のつもり……*
*1年留年するはめになったのはショックだけど……トシオに会えて嬉しいよ*
シャヤは本当なら2年だ
病弱で欠席日数が多かった上に去年流行した幾つかの病気に尽く感染、悪化して長期入院を繰り返し出席日数が足りなくなり留年となったらしい。
初めて会った時もベッドで真っ青な顔してぐったりしていた。
今は調子が良さそうだ。この調子であってほしい。
*トシオにじゃなくて犬にだろ*
俺はムッとして言う
*お手!*
バッ!と思わずシャヤの手の上に手を出してしまった
顔がカーッと赤くなる
シャヤはにっこり笑って俺を抱き寄せて耳を撫でたり尻尾をなでる
……悔しい。
しかしもし俺がただの人間だったらシャヤはきっと俺にこんなに親近感を持って近づくことはなかっただろう。
シャヤは明るいがなんと言うか取っつきにくい。
俺の勝手な印象だが他人に対して興味が無さそうだ
他人に興味が無さそうだとはいってもナルシストという感じはしない
ただ他人に関心がない、そんな印象だ
シャヤは俺が犬だからこそこんなに優しくしてくれる
俺が犬だからこそ…笑顔を見せてくれる
俺はふと疑問を持つ
だから何だ?
俺が人間でシャヤが俺に対して興味を持たなくても別にいいだろう
シャヤは相変わらず俺に抱きついたまま頭を撫でている
俺の尻尾は反射的に喜びを表している
犬だからこそ……
犬でなくて人間なら……
暑いと言ってたわりに冷たいシャヤの腕の中……今日も移りそうだな、シャヤの香水…ミステリアスさを助長させる不思議な優しい甘い匂い……
そんなどうでもいいことを俺は考える……
人間のつもりなのに俺は今日もただの犬。
悔しさは強いがしかし…それでもいい
シャヤの腕の中が心地いいから…………