「結局、サシスだけ来てくれたの」
案の定、夢羽愛はむすっとして言った。
「ごめんな、夢羽愛ちゃん」
「サシスは悪くないのよ。ちゃんと声掛けできなかった狸が悪いんだし」
「わいのせいか。っていうか狸って」
「まぁ、期待はしてなかったけどねー。まあ、2人で食べなよ」
夢羽愛が2人に渡したフルーツゼリーケーキだった。りんご、パイナップル、いちご、みかんなどフルーツをゼラチンで固めたケーキ。生クリームがたっぷり入っていて果物と生クリームの甘味が絶妙だった。
「美味いー。夏らしくてええわー」
「美味いぜ、夢羽愛ちゃん。ありがとうな」
「そう、良かったよ。愛歌は来ると思ったけどね」
「魔技さんと話してたぜ」
「魔技に会ったの?凄いじゃん。魔技と喋れた?」
くすっと夢羽愛は笑う。
「‥いや、無理や。なんやろ。神々しいっていうか。なんか、恥ずかしくなって逃げでもた」
「仲良くなろうとしたんだが会釈だけだな。くっく。少し苦手だ」
誰に対しても友好的なサシスが苦手意識を持つのは珍しく夢羽愛は声をあげて笑う。
「多分普通の人は喋られないよ。あの数字は。なぜなら、彼奴は全ての世界最強の数字を持ってる世界最強のエキスパートだからね」
「なんや、それ‥めっちゃ強いってことなん?」
「あの男こそ世界最強だよ。あんたの知り合いでいうヒカリよりも神よりも強い」
「ヒカリ‥」
つまり魔法が使えるシェアラー族よりも全知全能の神よりも強い人間だということだ。
「そんな、人間おるんやなぁ」
「魔技にはうちら世界最強も沢山助けてもらってる。機会があれば、あんたらも喋れるといいね」
サシスは苦笑する。
「そうなることを願うばかりだなぁ」
「後、大佐の事で悩んでたでしょう。あんた」とタルに向かって夢羽愛は話を切り出す。
「え、あ。うん。折角の誕生日になんで祝って欲しくないんやろって思って」
「‥人には、触れられたくない思い出ってもんがある。あたしも、自分の誕生日は嫌な思い出があるからね。大佐にもそれがあってそれを思い出すのが嫌なのかもね。まっ、あたしが知っちゃこっちゃないんだけど」
「‥せやか」
タルは、目の前にあるゼリーケーキをフォークでプルンとさせた。
普段、素っ気ないし気が荒いけど、アップルパイやゼリーケーキを作ってくれたり、大佐の事をずっと気にしてた事を答えてくれたり実は伊沙坂識夢羽愛は優しい人かもしれない。
「別にあたし優しくないからね」
心を読まれた。タルはびくっとして、フルーツゼリーを床に落とした。夢羽愛に怒られたのは言うまでもない。