大佐の誕生日準備のあとがき

こんばんは〜^_^
大佐シリーズ如何でしたか?
なんか、大佐の周りの縁を描きたい!そんな気持ちでえがいたらこうなりました。肝心のトゥールシャが主人公になってないという‥。
アッシュもそうですが、トゥールシャも主人公にしにくかったりします。
サシスの過去とフィックスとアルーラの過去書くの、あーやっと書けたー!!って思います。
明日は休みー。
トゥールシャの誕生日に向けて伏線を回収したいかと思います^ ^

大佐の誕生日準備*フィックスの場合

生きることは、なんだ?
死ぬことは、なんだ?

西大陸から北大陸に来るまで何度も自問自答してきた。
自分は割と昔から運がいいほうで、何回も命が危険に晒される前に逃げ延びてきた。
西大陸人の大半が難民と移民。
砂漠化が進んでいて、他大陸人のように豊かではない。北大陸のように車なんてものはないし、学校も娯楽施設もない。
北大陸人が占領してる西大陸のランドラマなんてとくに酷い。
子どもの頃から奴隷として働かされる。
俺もその一人だ。
なんでも、車や機械を使うための素材がランドラマには備わっているみたいだ。
詳しいことは、知らない。
ただ、俺らは素材を取るだけだ。
ここの環境は最悪だ。

「はーもうダメやー」
真面目に働いては、すぐにサボるのが俺の悪い癖でもある。それに引き換え隣の男は凄かった。皆んながバテてる中でもせっせと働いてる。
身体は、細くて紫色の髪。藍色の瞳。
日焼けしている肌。
黙々と全身汗水を垂らしている。
ある日俺は聞いた。
「名前なんて言うん?」
「‥名前なんて愛着がわくだけで、明日死ぬかもしれない奴に名乗るだけバカらしい」
「ということは、名前はあるんや。ええやん。俺の名前は、1508と呼ばれとう」
「‥悪かった」
そう、俺は管轄してる北大陸人が欲求を満たすために西大陸人を抱いて、孕んだ子供だ。こういう子供は沢山居て、番号として呼ばれる。親はいないからずっとここにいる。
「俺の名前は、アザシン。妹のために働いてる」
なるほど。こいつは、契約者だ。稼ぎ者のことを、契約者と呼んでる。
「そうか、誰かのために何か出来るのは羨やましいで」
俺は、目を閉じていう。
産まれてきた意味など知らない。記号として産まれて、ただ掘って、上のいいなりなってるだけだ。自分が死んでも誰も泣かないし自分が生きても、喜び尊いものにならない。
自分は誰かのためにいることはないのだ。
「‥‥」アザシンと名乗った男は考えながら掘っていた。
只管、掘り続けて適度にサボって1年目のことだった。
トロッコに、素材を積んでいると、3人位の男が近寄ってきた。
「お前あれだろ。契約者じゃなくて番号者。産まれた時から北大陸人の狗か」
「あはははは言えてる」
「狗は、サボらずに何度も掘っとけ」
とトロッコの素材を蹴飛ばされた。
ああ、ほんま五月蝿いわ。
消えて欲しいわ。
どっか行ってほしいわ。
上の管理者であるラストアルシャは、見世物のように笑ってる。
ちゃんと食べれんし、飲めへんし。
力出ぇへんから、もうここで亡うなっても誰も悲しまへんから‥ええかな。
その時一人の男をアザシンは殴った。
「なんだお前!」
「番号者も契約者も北の狗には間違いないだろう」
「よくも。」
と今度はアザシンに殴ろうとした。
「はいはい、そこまでにしといてくれるかな。働くの?働かないの?どっち?」
目を見開いた。青の軍服を着た茶髪の少年が軍手を着てここまできてる。幼い顔立ちに驚いた。
北大陸人がこんな遠路遥々くるなんて。
今迄このかた、こんな洞窟にまで来る北大陸人は居なかった。
北大陸人は、僕の取った素材を手にとって、微笑を浮かべた。
「‥いい仕事をしてるね君達は。君達のおかげで、いい素材が手に入るんだ感謝しないといけないね」
「皮肉を言いにきたんですが?北大陸人の軍人さん」
アザシンは、睨んでる。
「いや、本当のことでしょ」
北大陸人は、軍服を脱ぎ、シャツ一枚になるとつるはしでガンガンと掘り出した。さすがのアザシンはこれには驚いた。
さっきまで、にまにまと笑っていたラストアルシャは、顔が真っ青になっていた。
「なにされてるんですか!?トゥールシャ様!貴方様のような身分の高い方がこんな所で‥お前たち!?この方に無礼を働いてないだろうな!!」
俺たちを管轄をしてる大柄の男、ラストアルシャがくる。ああ、こいつによく奴隷扱いされてたっけ。
「ああ、こんにちは。ラストアルシャ殿。
父の部下‥そのうち僕の部下になるだろう者の報告を受けて、こちらの素晴らしい西大陸人様達の働き方を見直しにこちらまでお伺い致しました。
ところが、こんな素晴らしい職をされているというのに、
見た所、奴隷者が1万人。
記号者と呼ばれる方が1900人。
契約者が、15人。
そんなに、我々が与える資本は少ないですかね?いやね、僕は軍人ですがもともと資本家ですので、ここの制度の見直しをするのも大陸国家の仕事でしてね。なんでも、ミシュルトが管轄している莫大な資本を独り占めしてるとか。
まぁ、そんなことはどうでもいいんですが。
それより、今時、休憩時間がない仕事なんて仕事効率が悪いし奴隷者が1万人なんて馬鹿ですか貴方は。古いやり方なんだよ。ちゃんとお金を与えてるのがたった15人ってどういうことなの?これは立派な仕事だ。奴隷とかってじゃあなに?僕も今してるけど、僕奴隷なの?ん?」
「〜っっ」
「ぷはっ」
アザシンはつい笑った。怒られると思った。だけど、トゥールシャは、怒らずにずっと見てる。
「今すぐ貴方を北大陸中央都市に戻して、僕の書類整理でもしてくれるかな?ん?」
「あ‥あのはい」
「あ、それと。なにこの番号?北大陸人が粗相した人間の数かな?あーそうか北大陸人の失態数だ。あー。気持ち悪いね。糞だね」
アザシンはとうとう笑い転げた。俺は呆然として、トゥールシャを見た。
トゥールシャが、俺に近付いてくる。
そして、目線合わせて頭を下げた。
「北大陸人として代表として申します。貴方達はなにも罪はありません。恥ずべき行動をしてるのは我々北大陸人だ。先人達が、大変申し訳ないことをした。申し訳御座いません。謝って済む問題ではないことは承知の上です。我々がしたことを改正していきます」
あぁ、はじめて。
はじめてだ。
人間扱いをしてくれた。
俺は。
生きてるんだ‥。
ちゃんと生きてるんだ。
俺は涙を流してひざまづいた。

トゥールシャは俺達が、ガンガン働いてるにもかかわらず短時間でトロッコ一台分に素材を乗せて俺に渡した。

「さぁて、僕の仕事は大変そうだな」

俺には、難しいことは分からないが、トゥールシャという北大陸人が来て、上の人物がラドニアールという西大陸人になってからこの町の改革がされた。まず、奴隷制度が廃止され8時間の労働と1時間15分の休憩時間が労働基準法が発案された。また、栄養バランスがある食事と水の提供と、衛生完備の整った砂漠に強い建物を建設し、働きやすい環境にした。勿論全て簡単に行くわけがない。色々問題が出て来たし、長きに渡って奴隷化した人間の心理状態や砂漠化の問題もあったが、ラドニアールが北大陸と交渉してランドラマの町が住みやすくなった。

ある日、ラドニアールが俺をみた。
「君の名前はなんというかね」
「1508番。名前なんてあらへん。やけど、名前頂いたんです」
「‥そうか‥。なんて名前?」
「フィックスです」
「君は北大陸人を恨んでるかね?」
「‥‥よくわかりません。 やけど、トゥールシャって人はなんか違います。初めて自分が息しとうってことがわかりました。
初めて人間にしてくれました。
初めてご飯と水と寝床と休息を頂きました。
後、アザシンの笑顔もみれました」
「トゥールシャ様に恩がある人間は沢山おる。世界中おる。わしもその一人はじゃ。
だから、わしは絶対この町中心に西大陸を変えていきたいと思ってる。
勿論あの方が、困っている時は手をかしたいと思ってる」
「‥北大陸。どんな所ですかね。というかどんな方か気になります」
「‥また行ってみるといい」
その後、ラドニアールから北大陸の話やトゥールシャの活躍を聞き、いつしか憧れと尊敬を持つようになっていた。

1年後アザシンは言った。
「今日で、契約が切れる。俺は、妹と一緒に違う街に行く。長いこと世話になったな」
「ああ、達者で暮らせや。なぁ、アザ」
「なんだ、フィックス」
「わいも、もうちょっと金集めて、ここにちょっと貢献出来たら北大陸に行こうと思っとう」
「‥それは?」
「お礼言おう思って。トゥールシャ様に」
「そうか‥覚えてくれたらいいのにな」
「忘れとったとしても思い出してもらうように頑張ろうと思ってな」
「頑張れ」
アザシンはそう言って去った。
その一年後、俺は北大陸へ向かう船の切符を手に入れることは出来なかった。だけど、偶然にも海賊になったアザシン‥現在はアルーラと再会し、ある北大陸人に出会った。その人は、シュワン・ド・リード・フィリファルという男だ。
シュワンに北大陸に行くことを話したら、「やめといた方がいい」と止められたが首をふって「どうしても会いたい、俺はトゥールシャ様の元で働きたい」と俺は言った。
シュワンは、渋っていたのにトゥールシャの話題を出すと喜びに激変した。
「トゥールシャ‥トゥールシャ!!ああ、それはいい!いい!あの、ミシュルトなのに、礼儀正しい子!あの子だったらいいよ!寧ろなに!?世間せっまーはは。フィックス!」と俺の肩をたたかれた。
「なにが!?」
「俺の息子に会えっ!それが一番近道だ。地図を書いてやる」

なっ?俺の、人生運がいいやろ?
その後は、極寒の寒さやったけど、ラッキーなことが何度も続いて、アッシュさんの世話役になってから憧れのトゥールシャ大佐の元で働いとう。
「俺の人生は、トゥールシャ大佐のおかげでもっと好転してるんやで」
椅子に座って目を閉じてるトゥールシャ大佐を見て俺は微笑する。

人間は単純で複雑な生き物だ。
死とは何か。
生とは何か。
それは、分からん。
やけど言えることは、
生命の源なんや。
死も、生も表裏一体。
生は、もがき苦しく
死も、もがき苦しい。
だけど。
生は、健やかに眠れ
死は、安心して永眠することはも出来る。
そうやって人は存在する。

フィックスという名前の由来。
大佐はこういった。

フィックスは、修理、修正、固定‥色んな意味があるんだよ。
君は、どんな可能性を修理し修正して心固定できる才能をもってると僕は思うよ。
無限の可能性がある。
「君の生きる場所」を見つけてほしい。

ーー


少なくとも、俺の生きる場所は、大佐に忠誠を誓うことー‥。


つづく

大佐の誕生日準備*夢羽愛の場合


8月13日0時

「もう一軒行くか?サシス」
「おっいいね」
サシスの昔話を聞いて、黒斗は次の呑み屋に行くことを勧めた。
「いつも、悪いから今日は俺が払うぜ」
「いやいや、ここは俺が」
「じゃあ割り勘で」
酒が回っているのか、2人は笑って割り勘という選択をした。
バーを出て外。黒斗は、腕時計をみると深夜23時59分。歩いて少したった0時。
「ねぇ」
「わぁっ」
女の声がして、驚いて二人は後ろを振り向くと伊沙坂識夢羽愛が仁王立ちして立っていた。
「‥随分長かったわね。何時間さっきまでいたの?」
「関わったことがないが相も変わらず、目つき悪い姉ちゃんだな。いい身体してるのによ」
「へぇ。あたしの身体が目当てだったらいつでも相手してあげるけど?でも、その前に怖い旦那を相手することになるけど」
「じゃ、遠慮しとくわ」
黒斗は、頭をかき言った。
「残念だね」
「くく。興味深い話だが、どうかしたのか?美しい女性がこんな深夜に出回るのは紳士道を貫く俺にとってはいただけないなぁ。危ねぇぜ」サシスは言った。
「まぁ、この世界最強の悪魔に向かって襲うなんて馬鹿いないと思うけど。
ねぇ、それよりさ。新月‥じゃなくてママの親友の誕生日祝うんでしょ?」
「ママって誰だよ」
「くくっ。アシュラさんのことだよな?」
「うんそうそう。」
夢羽愛は、腕をあげる。
「ねぇ、あたしも仲間に入れてよ。
とっておきのアップルパイ作ってあげるから」
「アップルパイ‥いいな」
黒斗は、普段から濔音の作った甘いケーキを食べているのであっさり味もいいかもしれないと感じた。
「でさ、あんたかサシスにお願いがあるんだけどいい?」
「お、なんだ?」サシスは機嫌良く聞く。
「あたし、0だからさ。買った物をあげると、全て0にしちゃうからさ。あたしの分までプレゼント買ってきてくれる?」
「全てを0に?どういうことだ?」
「ああ‥つまりさ」
と近くにあった自動販売機にコインを入れて、缶をとり出すと消えた。
「!マジか」
さすがの黒斗も驚く。
「自然から出来てるものは、新月様のおかげでちゃんと持てて料理とかは自分で出来るんだけど、物は買えないし絵とかは全て数字で見えるから、描けないんだ」
「新月様?」
「あたしのいる場所は新月を信仰してる星なんだ。新月は五穀豊穣と知恵と母性の神だからね。新月は始まりの月。0の月とも呼ばれてる。0にとっては感謝すべき信仰神ってわけ。ということで、どっちかプレゼント買ってきてね」
「ほいほい」
「ちゃんと買うんだよ!」
そう言って夢羽愛は行こうとした。
「セッションしようぜー夢羽愛ちゃん」
そして、止まる。
「いいよ。あんたのドラム最高だから」
0時1分になると、夢羽愛は去った。
「くくっ。相変わらず突風のようだったな」
「濔音は、捻くれものだがあの女は直球型だよな」
どうやら、あの腹黒大佐はとんでもない人物のようだ。黒斗は、そんなこと思いながら携帯に手を伸ばし濔音にメールを打った。
「おい、サシス」
「ん?どうした?」
「さっきの女の腹黒大佐へのプレゼントは任せろ。お前は他やることがあるんだろ」
「‥くっく。サンキュー。黒斗さん。ところで明日は、濔音ちゃんとデートか?」
「残念ながら人を愛する殺人鬼様は、色恋沙汰には興味ないからデートなんて甘いものは分からないらしい。残念だ。ああ残念だ」
「くく。黒斗さん実は酔ってるだろ」
「ああ‥ばれたか」

つづくー

大佐の誕生日準備*サシスの場合

8月12日
「黒斗さん。この後暇か?」
「おう、サシスじゃねぇか。暇だぜ」
「呑みに行くのかい?」
「悪いな。濔音ちゃん」
濔音が行った後、2人は、雰囲気のいいバーに立ち寄った。
「くく、まさか、大佐の誕生日が今月の28日なんてよ。いい年した大人が、誕生日会なんて喜ぶかは分かんねぇけど、なんでも楽しそうに受け止めてくれるから大丈夫だとは思うがな」
「はは、言えてる。前々から、祝いたいとか、御礼したいって言ってたもんな」
「ああ」
バーテンダーからもらった青と黄の混ざったカクテルをサシスは呑む。
黒斗は、バーテンダーから酒を貰い乾杯するのかと思ったが、珍しくサシスが自分から口を入れた。いつも、気遣い上手のサシスが、こんなヘマをするのは、気持ちが昂ぶってるということか。
「そんなに、奴に恩があるのか?」
「ああ」
サシスは、グラスを回しながら目を細めて微笑を浮かべた。なにかを思い出すかのように、口元を緩めていた。
「‥お前がそんな顔をするなんて聞きてぇな」
「くっくっ‥わかった。黒斗さんには特別に聞かせてやるよ。大佐と俺の昔話をな」


ーーー

さっちゃん‥君に会えて‥感謝してる。
‥俺の分まで‥生き‥て

ガキのころ相方だったユウヤの最期の言葉だった。


「意識は戻ったかな?少年」
「ここは?」
「あたしのうちだよ。子ども達の為の施設をやってる」
薄っすらと、景色が見えてきた。
暖炉。何個もあるベット。寝室だ。扉が開いててその先には、ピアノ。遠くから聞こえる子どもたちの笑い声。
金の髪をしている美しい女性が、外の雪を眺めて外を見ていた。四肢を起きあげ、眼球を動かすと美しく橙混じった金の髪の男の子がベットに頭をつけ寝息をたてていた。
「それは、あたしのガキ。アッシュっていうの。あんた、運がいいね。少佐が来なかったら、あんたも御陀仏だったよ」
「少佐?」
「北大陸軍を率いてる最年少のミシュルトの坊ちゃん。名前くらいは聞いたことはあるでしょ?」
俺は首をかしげた。
女性は、眉を動かした。
「あらあら。世間知らずの坊ちゃんもいたことだねぇ。まぁ、いいわ。あんたの、命の恩人の名前教えてあげる。
トゥールシャ・ミシュルト。
本当いい男になったものねぇ」
「トゥールシャ・ミシュルト‥14歳の若さで、落とせない国を無血開城した人‥?」
「そうそう。軍人は、あたしは大嫌いさ。だけど、あの少佐は別口さ。あたしは、革命軍だけど、あいつだったら話を聞いてやらんこともないさ」
話をしていたら、うっすらとユウヤを思い出してきた。
ユウヤ‥。
記憶があるころにはもうすでに親がいなくて、気づいたらずっと2歳位年上のユウヤに育ててもらっていた。2人とも身寄りがいなかったので、古びたバーで働かせてもらいながらなんとか生きていた。とはいえ、俺は身体が弱いからすぐに倒れていた。俺は主人には、荷物扱いされていたが、ユウヤは、優秀でよく働いていたので
「さっちゃんを追い出すんだったら、俺も出て行くよ」と庇ってくれていた。
これ以上、ユウヤに迷惑をかけたくなかったので、容姿が良いことを武器に客引きや、酒の作り方、女性の口説き方を学び集客をしていた。
だが、体力がないし、風邪をよくひくのでなかなか酒は作れなかった。
ある日、バーにピアノが入ってきた。
やってきた美しいピアニストに、
「あなた、風邪をひいてるわりにいい声してる。歌ってみない?」
「さっちゃんは、俺のギターに合わせて歌ってくれたらいいの」
とユウヤには止められたが、あいつが寝ている
うちに美しいピアニストから歌を教わった。ユウヤからギターに合わせて歌ったことはあるけど、本格的には指導を受けたことがなかった。

歌は、客にウケた。
「天使の歌声だ」
「いい声だ、聞かせてくれてありがとう」
沢山の拍手と歓声に心が踊った。
俺がこのバーで音楽をするきっかけになった。

ピアノが、遠くから見えてる。

「聞いてるかい?」
はっとして、また目線を彼女に戻した。
「‥あ、あ。あのさ、聞いていいか?‥‥もう1人男を知らないか?俺より‥2歳年上の」
俺は喉に手をやり、ゴホゴホと咳こむ。

ああ、そうだ。
死んだんだ。
抗争に巻き込まれて。
病気で身体がいうこと効かなくなった俺を庇い、血塗れなったユウヤを俺は優しく包みこんで‥。泣きながら歌ったんだ。

「まだもう少し寝ていな。あんた‥」
女性は、俺を優しく抱きしめた。
「そんな身体でよく生きてたね‥ごめん。世間知らずなんて言って悪かったよ」
恥ずかしかった。だけど、突き飛ばすことは出来ずそのあたたかさを受け入れ涙を流し抱きしめた。
あの環境でも、俺が捻くれないで優しさを受け入れることが出来るのはユウヤの存在と音楽を求めて来る人々のおかげかもしれない。

落ち着いてきた後、優しく離した。
「じゃあ、もう少し寝ていな。医者を連れてくる」
女性が行った後、今度は少年がむくっと起きてきて、ハワイアンブルーの瞳で俺を覗きこむ。
「身体大丈夫か?」
不思議と咳が止まる。
「‥ああ」
「良かったなぁ。俺の名前はアッシュだ。宜しくな」
「宜しくな、サシスだ」
つられて俺も涙を拭いて笑う。
「アッシュさん、お願いがあるんだ」
「ん?なんだ?」
「行きたい所があるんだ。そこまで連れて行って欲しい」
「‥体は大丈夫?義母が休めって言ってなかったか?」
「でも」
行きたい所は一つだ。抗争があった場所。
アッシュさんに駄目元でお願いをしてみる。

「‥。ジャシューじゃぁーしゅー」
眼鏡をかけた青年が顔を出した。
「はい。なんでしょうか?」
「行きたいとこがあるんだって。義母にみつからないようにそっと車まで行けるかな?」
「いいんですか?」
「ん?いいんじゃないか?どこ行きたいんだ?」
「ビアウンタウンまで」
「「ビアウンタウン!?」」
「‥?」
「わぁ‥はは。マジかビアウンタウンか」
「危ない都市No.1ですね」
「でも、丁度俺も行きたかったんだよな。ナイスサシス」
アッシュさんは、俺の肩をたたいた。
ジャシュさんは俺とアッシュさんを持って二階から大木に飛び移り車に乗り込んだ。


セルから車で一時間弱で行ける場所だ。いつもより、北大陸軍が多いように思える。
「俺は慣れてるけど、アッシュさんたち危ないよ」
「ああ、気にしないでくれ」
車から降り、俺は首を傾げながら走った。
ユウヤせめて脱け殻だけでも‥。

路地裏に入った。
いつも、働いているバーから500メートル離れてるところ。錆びた鉄ビルと、古びた機械が沢山ある。
通称ー死の摩天楼ー。
バーに訪れた旅人達は、口々にその名を告げた。小雪も、吹雪になりそうな天候だ。
「異臭が酷い」
ジャシュが、鼻梁に乗る眼鏡を上にし、ハンカチで覆い隠す。アッシュは、すでにマスクを装着していた。
「さ、貴方も」
俺にも、マスクを渡そうとした。
その時だ。
ゾクッ
寒気がした。

100メートル先にマントを羽織り随分と痩せ細った男が見てる。
目線なんてあわない。右目の眼球は、飛び出てる。麻薬密輸や裏取引をして人一人殺してそうな男だ。
にやっと笑う。
後を引いた。
小太刀を持ち俺の所に目掛けて走ってくる。
「サシス!」
目を閉じた。
重なり合う金属音。目を開けると、アッシュさんが俺の四肢を覆いかくしてる。また目を瞑った。重なる金属音。誰かが俺たちを守って闘ってる。
だが、次に目を開ける時はあっという間に男は捕まっていた。他の軍人が駆け寄り、男を連行していく。
目を見開いた。捕まえたのは、まだ少年でジャシュさんよりも小さく、女性のような柔らかい雰囲気を持つ子どもなのだ。

「‥ったく。どうして、こんなところまで来てるの?保護者失格もいいところだよ。ジャシュ」
「すみません。アッシュがどうしてもと」
「トゥールシャ」
アッシュさんは、俺から離れるとトゥールシャさんに抱きついた。
「トゥールシャ!会えたー!!」
「アッシュ!!なんでこんな所まで来たの!?危ないでしょ!!」
「ビアウンタウンにいるって、中央軍の皆んなから聞いたから」
「やつらめ‥」
そして、少佐は俺を見る。そして、目線を合わせて言った。
「身体大丈夫かな?君の心配もしたいのだけれどまだここは危険区域だ。早々立ち去った方がいい」
「あ、あの少佐。聞きたいことがあるんだ。ユウヤの‥ユウヤの遺体は‥」
トゥールシャ少佐は、俺にポケットから小さな紙を出して居場所が書いてある所を渡した。
「北大陸軍には見つからないようにね。ジャシュ頼むよ」
当時の俺は言っている意味がよく分からなかった。自分は北大陸軍の少佐なのに、見つからないようにしてくれとはどういうことだろうか。
「ジャシュ。アッシュと彼を宜しく頼むよ」
「あの‥」
トゥールシャ少佐は俺を見た。
少佐は、俺の肩をたたく。
「君は強いな‥」
俺よりも、トゥールシャ少佐の方が強いのに。
少佐は、優しく瞼を細めて微笑した。
「もし、親友を亡くしたら僕は現実から目を離し、逃げようとすると思う。
だけど、君は泣かずにここまで‥こんな危ない場所までまた戻って来た。現実に立ち向かい、亡き友人のためにきたんだ。そんな君を誇りに思うよ」
なんだろう。
もし、少佐ではなくジャシュさんに言われたらここまで心が飛び跳ねただろうか?心が弾んだんだろうか。不安、孤独、寂しさ、辛さが一瞬忘れた。
迫り来る危険を敏感に反応したのか、トゥールシャ少佐は柄を手にとり続けて言った。

「アッシュは、僕の親友なんだ。
良かったら、僕の親友を宜しく頼むよ」
トゥールシャ少佐は、微笑を浮かべ、剣を振りかざすと10oぐらいの弾丸を縦に割っていた。速くて見えなかった。
退路を作ってくれて、すぐに車へ駆けこんだ。走りながら見た少佐の剣技は俺の目では速すぎて見えなかったが、交わる剣と鈍い金属音。
楽譜にすると、何拍子になるのだろうか。
銃声は、不協和音で雑音にしか聴こえない。だけど、剣で斬ったら雑音が無くなる。
安堵の溜息をついた。

ポケットにいれた紙をみた。
書いてた場所は、ラドリエ家と薄く書かれていた。インターホンを鳴らすとでてきたのは、銀髪色の少女。少女はアッシュさんをみると、少し頬を赤らめさせた。少女は俺たちを地下に案内する。
「ここにユウヤがいるのか?」
「‥ユウヤさんって‥いうんですね」
少女は優しく微笑を浮かべた。
ユウヤは、傷跡もなくまるで眠るように眠っていた。
「なんか‥眠っているみたいだ‥」
「少佐の御決断で、遺体を綺麗にさせて頂きました。軍に遺体を渡してしまったら遺体は何に使うか分からないので、内密ということで。我々が管轄させて頂きました」と少女は、目を伏せ言った。
俺はユウヤの身体を優しく触れ抱きしめた。
「おやすみ、ユウヤ」
アッシュさんが、ユウヤの頭を撫でた。
その時、ユウヤの遺体がほわっと消えていく。
俺は目を丸くして、驚いた。
「どういうことだ‥」
「ど、どういうことなんだろう」
アッシュさんも驚いた。
無くなってしまった遺体に、透明の宝石が落ちていた。俺は、その宝石を拾い見て首を傾げる。
「もしかしたら、北大陸に近し魔法の島がこの先にはあります。魔法の島はセントセレア島と言って神を信仰してる土地で、北大陸は神界に近し国だと云われております。稀に、神に愛されし者は、遺体が消えそのまま天に逝くという言い伝えが御座います。もしかしたら、ユウヤさんは、神に愛された人間で、天に召されたのかもしれません」
とジャシュさんが言った。
「そうか」俺は目を瞑った。
「お墓どうしましょうか?少佐が、良かったらどうかと‥」
「いいや。こいつでいい」
と俺は優しく微笑を浮かべて透明の宝石を見せた。

ーーー
「その後、施設で過ごさせてもらって、そこでリアースに会って‥北大陸へ出ることになった時もトゥールシャ大佐には沢山援助してもらってさ。アッシュさんにも、大佐にも御礼がしたいんだよな。
だけど、「御礼なんかいい、君達が楽しく音楽を表現してくれるだけで嬉しい」って言ってくれただけで全く何も出来なかったんだ。
そう、簡単に大佐は会える方ではないから
だから、機会を与えてくれてありがとう」
「‥成程な。今のお前があるのは腹黒大佐のおかげか」
カランッとカクテルを鳴らして言う。
「しかし、不思議なこともあるんだな。透明な宝石になったって」
「あぁ、まぁな」
言葉を濁しつつ苦笑した。
「ああ」
黒斗は、咳払いをした。
「まぁ、とにかくいい誕生日にしようぜ。話してくれてありがとうな」
黒斗はサシスの肩を微笑しながら叩いた。
「悪かった。湿っぽくてなっちまった」
「いいじゃねぇか。いい話聞けた」
黒斗は、優しく微笑を浮かべた。



つづくー

大佐の誕生日準備*黒みーの場合

8月13日の朝。
紫木月濔音は、準備して自分を盗んだ男を公園で待っていた。
濔音は、ため息をついた。
どうして、あの眼帯男を待っているのだろうか。
悪態をつくのもそろそろにしてやるか。
「やっときたか。人を愛する殺人鬼様」
「‥なにを言っているんだい?僕が君を待っていたんだよ」
どうやら、この男は、僕が指示した反対側で待っていたみたいだ。
濔音は、とりあえず眼帯男の隣に来て見上げた。無駄に長い足と、眼帯。腕には時計をしていた。
黒白黒斗。男の名前だ。普段ならこの男とずっと一緒なのだが、今日に限って違う。
昨日、皆と集まった後、バンドマンであるサシスと飲みにいった。濔音は、そのまま帰り、今日の朝にこの公園で待ち合わせをした。
まぁ、そのままこの男から逃げ出すのも可能だったのだが、約束をしたのだ。
ーいつも、世話になっているトゥールシャ・ミシュルトの誕生日プレゼントを買う為に、この公園で待ち合わせをしようー。ー
「まぁ、いいか」
黒斗は、欠伸をしながら歩く。
「‥ん」
街並を静かに歩く。黒斗は、気を遣ってか、濔音の歩幅に合わせる。道路側を歩き、真っ直ぐ歩いている。
手は繋いでないものの、振り返る女性は黒斗を見てる。ショーウィンドウに映った自分の姿と黒斗の組み合わせを見て少し恥ずかしくなってきた。何時もは、夜の街並を歩いているので、かなりある身長差に気付かなかった。そして、普段着ている真っ黒な服ではなく、夏らしく涼しそうなシャツを着ている。いつもとは違う雰囲気に少しのまれそうになる。
ドクンドクン。
おかしい。
なにかおかしい。
1日会ってないだけなのに、何故この男をマジマジ見ているのかわからない。
この男は、いつもはマジマジと僕を見てるのに、店を見ている。
「‥‥今日はやけに静かじゃないかい?」
ポーカフェイスを装いながら濔音は言った。
「それは、俺の台詞だよな。いつもの調子じゃないぜ?人を愛する殺人鬼様よ」
意地悪っぽい顔を向けて黒斗は笑う。
ドクンドクンとした音が落ち着く。
「ふふ、そうかい?」
黒斗は、黙ってそっぽを向きまた静かに歩く。
「‥」
ー黒斗くんも変だ。さっきまで歩幅を合わせてくれたのに少し早歩きになった。
濔音は、頬をかいて、空を見上げる。
「‥黒斗くん。一つ聞いていいかい?」
「‥ん?」
黒斗は、足を遅める。
「どうして、トゥールシャ大佐の誕生日を祝おうと思ったんだい?」
「‥‥。お前が誕生日知りたいって言ってたから言ったまでだけど?」
「‥‥」
だったら、なんで愛歌の言葉を覚えてたんだ?と聞こうとしたが、はっと止めた。こんな質問したら、また嫌な笑みを浮かべて「ヤキモチか?」なんて揶揄われるに決まっている。
そうじゃない。
僕が聞きたいのは、僕以外に興味をしめしたトゥールシャ大佐をどう思っているのかを純粋に聞きたかったわけで、ヤキモチなんてものなんかない。でも、そんなことを聞いたらこの男は、揶揄い続けるだろう。
濔音は、ムスッとした。だんだん腹たってきた。濔音は、先に歩く。
「そうかい」
黒斗は、濔音の腕を掴む。
「濔音」
「なんだい?」
「‥‥。‥‥。あの腹黒大佐の誕プレとかどうでもいいっつたら、怒るか?」
「最低だと思う」
濔音は、黒斗の足を踏む。
「イテッ」
「嘘つきは嫌いだよ。どうでもいいと思う人間に君が誕生日を覚えているわけないじゃないかい?いつもは、僕を見てるくせにお店を探してる。真剣に大佐の誕生日プレゼントを考えてる証拠だ」
なのに僕は、この男ばかり見ている。これじゃまるで僕がこの男に構って欲しいと思ってるようじゃないかい。
黒斗は、目を丸くし、大きく笑った。
「くくっ。はっ、あの腹黒の為に真剣にか。‥まあ、そうだわな。ダチの頼みだったらな」
「?へっ?」
予想していた言葉とは違っていた。
ーあの腹黒大佐の為に真剣に?誰がーとかなんとか言い訳をすると思っていた。
「昨日、サシスと呑みに行っただろ?その時頭下げて感謝されたんだよ。どんな形でもいい機会を作ってくれてありがとうって」
「へ?サシスくんに?でもどうして?」
「‥なんでも、昔命を救ってくれたり、夢を叶えるために手伝ってくれたらしいぜ。それで、ずっと、大佐に礼がしたかったんだってよ。
まぁ、他にも、あのフィックスや世界屋、愛歌や、あの銃ぶちかます夢羽愛だっけ?全員、大佐には何かしら恩があり感謝してるらしいぜ。
昨日、俺に何人かプレゼントの買い物を頼みやがった」
「‥へぇ、僕自身も大佐には感謝することがある」
夏祭りの時、襲われそうになったことがある。その時に助けてくれたのが大佐だ。あの時震えたが、大佐が来た時顔には見せなかったが安心した。どれだけ、感謝したかは分からない。
黒斗は、笑う。
「絶対、あの腹黒大佐驚かせてやろうぜ」
濔音は、意地悪でもないやんちゃでもない、優しく笑う黒斗にまた見てしまった。
「‥まったく、君は憎めない奴だね」
「褒め言葉として受けとってやるよ」
濔音のおでこにある三日月跡を撫でた。頬を優しく撫で耳たぶを持ち頬にキスをされそうになった時に手をしりのぞける。
「さっ行くよ」

つづくー

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