でてくるひとたち
ゆめ、うつつ?
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「んで、そっち、左」
「左?」
ゆうが聞き返す。
休みの日のお昼前、並んで街を歩く。ゆうと2回目に会った時のお話。初めて出会った夜は、ただお酒を飲んで、笑って、話して、それでばいばいした。連絡先は交換したけれど、お互い下の名前しか知らなかった。…というか、それは今もだけど。
けれど、逆に知らないことって名前くらいじゃないの?って思えるくらい、知ってることはたくさん。
そして、この関係に何と名前がつくのかは考えたこともなかった頃。
「そう、そっちに行くねやってば」
普段、方向音痴なんて言い方でおさまらないくらいの致命的な方向感覚しかないわたしが、人に道を説明しているのが可笑しかった。
ゆうはいつもおっきな車に乗っているから、細い道のこと、抜け道のこと、ぜんぜん知らない。
口で言って指差しても、左に行かないゆうにも笑えた。信用してないね、わたしのこと?
「だから、ここやって!左」
そう言いながら、わたしの左側にいたゆうの方に進む。距離が縮まる。腕が触れる。
手をつなぐ。
数歩歩いて、ゆうがほんのわずかに、わたしたちの間にあった空気の質を変えたのを感じとる。
そこではじめて、「ああ、手をつないだことに驚いてるの?」と気づいた。
ゆうの手を握ったことは、本当に本当に無意識で、わたしの方としては純粋にその事実に驚いた。
つなげた手は振りほどかれない。別にそのことに触れるわけでもない。
でも空気の色がくすんだのは明確で、それはわかるのに結局ゆうの言いたいことはわからないままなのが、不思議だった。いやなの?それとも…?
不思議。
でも、考えてみればそうだよね。だってまだ会うのは2回目なんだもんね。
知っていることが多すぎて、よく知っている人だと錯覚する。
ねえ、ゆうは何を気にする?
わたしとそんなに親しくないこと?わたしに求めているのはただの友だちという肩書き?わたしに彼氏がいること?知り合いに見つかるかもしれないこと?
それともわたしの想像の範囲をこえたこと?
そしてふとしたきっかけで、つないでいた手を離す。
でも、わたしのやりたいようにやろうと決めた。
また無意識に手をつないでしまうかもしれない。わざとに手をつなぐことだってできる。
言葉にするのは難しい感覚。
もう求めすぎて、期待して、なくして、ダメージを受けるのはやめる。
どうにでもなれ、と思う。
決して、マイナスのニュアンスではなくって、ね。
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