メモ

大凶。

今年最後の1月、誰もいない境内でその文字を見つめた。

何年か前に初詣で一度行ったきりの寺で、初めての運試し。
神様って冷たいな、なんて思ったが自分に置き換えれば2度来ただけの人間にそこまで親切にしてやる義理もない。

ご利益が与えられるのは、頻繁に足を運んで、手を合わせて、神様との交友を深めた、敬虔な信者であってほしい。
与えられるべきは、毎日の行いに努力を惜しまない人間であってほしい。

そんな風に細々と何かと繋がっていく行為が苦手だ。
そこそこの頻度で寺に行く事に限らず、小さいものを、長く外に向かって出し続けることがとても億劫だった。
なにより俺自身が、そんなことをされて嬉しいとは全然思わなかった。
そんなもので喜ぶやつが小物に見えたし、媚を売ってるとすら思った。軽蔑すらしていた。
与えるなら、一度に大きいものを。あってもなくても困らないような物を貰ったってなんの意味もない。
そう信じていた。

自分が神様だと思ってたのか。
人間が一度に他人に渡せる量が、そもそも少なかったのだ。
俺が渡したかったものは、コツコツ与え続けてやっとたどり着く物というだけの話だった。
そうして、誰にも何もしてやれなかった人間がここにいる。
全ては自業自得だよ、との天啓も受けて。

薄々、義務って訳じゃないけどやるべきことを飛ばし飛ばしにしてきた事をずっと前から分かっていた。
自分だけ置いていかれている気がする。そうやって今更焦っても、俺には何の貯金も貯まっていないことを知らされた。

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