ラザは喋れない。犬だから
台詞っていうか、心の中で思ったこと


「(わたしはラザ。犬だ)」

「(……朝か……。おはようフラン、今日も元気だね)」

「(おやすみ、フラン)」

「(うだる……暑いのは苦手だ……)」

「(汗ひとつかかずに『暑い暑い』とは嫌味かフラン……)」

「(どうしてわたしはケーキやアイスを食べてはいけないんだ……?)」

「(思ってない思ってない、わたしはそんなこと思ってない)」

「(フランには同年代の友達も必要だと思うんだ)」

「(フランとは子犬の頃からの付き合いだよ。まだ小さかったわたしの世話をしてくれたんだ)」

「(フラン、あまり他人を邪険にするな)」

「(正直、『わん太』というあだ名はどうなんだ)」

「(ヘリオス、敷地内に何者かが侵入した)」

「(ここまで無防備なヘリオスは初めて見るな……)」

「(エオスは苦手だ。たまに『グラムあたりいくらかしら?』という目で見てくる)」

「(……喰われる!)」

「(なんだかんだで、セレネのマッサージが一番気持ちいいな……。慣れた手つきだ。とすれば、人間だけを相手にする医師ではないのかもしれない)」

「(この家はそれなりに心地いい)」

「(わたしは恩に報いたいんだ)」

「(ロジー、フランと仲良くしてくれてありがとう)」

「(ラツィ……、勝手に心を読むな)」

「(おまえ、やっぱり心を読んでいるだろう!)」

「(ラツィの物語はどうしてこうもわたしたちを惹きつけるのか)」

「(昼寝でもしたい気分だ)」

「(べたべた撫でくり回されるのは、あまり気分がいいものじゃないな)」

「(わたしは怖くないよ)」

「(たまには運動しないと太ってしまう)」

「(優しいにおい……。なんだか安心する)」

「(人間だって魔法を使えるのだから、犬が使えたって変ではないだろう)」

「(フランに指一本でも触れてみろ! おまえたちの喉笛を喰いちぎってくれる!!)」

「(もしもわたしが人間に生まれていたら、どうなっていただろう。……いや、人間になりたいわけじゃない。もしもの話だ)」

「(フラン……まさか、暑さも寒さも痛みさえも感じていないのか!? そんな状態で生きてきたのか!?)」

「(フラン、わたしは喋れないけど、おまえと語り合うことはできないけど、いつだっておまえのそばにいるよ)」


 喋れないけど、常に周囲の人間達に語りかけている。
 大人の男性のような口調で、声を荒げることはめったにない。