何かが焦げる音がする。その音の中、ケトルは確かに呪詛のような声を聞いた。
水黽の上半身が起き上がり、祭壇に突進を試みる。

「思ったより速いヨー!」

テロルの周囲に風の刃が出現する。

「こっちに来るだろうって思ってたわよ!」

無数の風の刃に阻まれ、ぐらぐら揺れていた首がアメンボの上半身から落ちた。
沈黙が辺りを包む。
テロルは荒く息を吐く。
ケトルの緊張が緩んだ。

「終わった……」

その時。
もぞり、と。首が動いた。どういう力なのか、首だけで飛んで来る。尖った口吻はミーナに狙いを定めていた。

「……え?」

「まだ剣下ろすなヨー!!」

双剣使いからの叱責に慌てて剣を構え直す。

「うわっ!?」

音が響く。
剣の腹で口吻の刺突を受けた。想像していたよりも重い一撃。ケトルは後ろに引くことも前に進むことも出来ずに焦る。

「だめ……!!」

唐突に、背後から光の奔流が来た。