ケトルはほぼ無意識に動いていた。かわせないと悟り、テロルを抱え後方に転がる。直後、背中に衝撃が走る。視界が何度も回転し、次に気付いた時には壁に背を打ち付けていた。

「テロル!」

ネコモドキの呼び掛けに、

「いたた……」

テロルが小さく呻く。それから彼女は首だけで周囲を見渡し、体勢を起こした。

「ありがと……」

会釈の後、テロルはケトルの頭を凝視した。その口調が鋭くなる。

「一応礼は言うけど、別にあたしのことは庇わなくていいからね?むしろ、あんたはちゃんと自分の身を守りなさい」

ケトルが自分の額に触れると、ぬるりとした感触がした。自覚すると同時にズキズキとした痛みが襲ってくる。

「ちょっと擦りむいただけだよ!」

勢い込んでみたが、テロルの視線は厳しい。