また一人、人が異形へと変貌していく。

「エラム様!? 何故こん……な……」

ローブの男の部下の魔術師が『腕』に包まれ、ぶちゅぶちゅとした湿り気のある音と断末魔を奏でながら裏返しになり、やがて粘性の蠢く肉塊へ成り果てて行く。
ケトルの内に込み上げて来る物があった。怒りだ。感情の儘に叫ぶ。

「手下もお構い無しかよ!? さっきまで儀式に協力していた人達じゃないか!!」

分かっていた事だが、男の返答は先程と変わらなかった。

「儀式は終わり、この様に私の目的は果たされた。プリンセス以外に用は無い。そもそも、そこの魔女が彼等を昏倒させていなければさっさと逃げられた筈だがな。異界の洗礼を受ける直前に起きるとは、あやつも運が良いのか悪いのか……」

他人の命に此処まで無関心な者がいるのか――ケトルは背筋が凍る思いがした。

「私は遺跡の魔法と同期したのだよ。つまりだ、私に攻撃を加えてもこの様に外傷は修復される」

「ふうん。じゃあ修復不可能なくらいギッタギタにしたらどう?」

「……流石は魔女、暴力の嵐の如き発想だ。だが無駄だとも。少し時間はかかるだろうが、周囲に魔力さえあれば私は復活する! これは最早不死身の肉体と言っても過言では無いだろう!!」

「ふううん……」

テロルの声が調子を落とした。

「あたしの親友ならこう言うでしょうね。『やってみなくちゃ、わからんなぁ』って!!」

ローブの男の眼前で光が炸裂する。