地響きと巨大な装置の稼働音。魔力を帯びた水が広間に流れ込み、魔法陣を描き上げる。
始まった、とエラムはほくそ笑む。
磔の少女がか細い悲鳴を上げた。

「……悪趣味ね」

雷火の魔女が少女を一瞥する。その顔に僅かな嫌悪が滲んでいた。
エラムは腕を振るう。

「私の望みを叶える為だ! 必要な犠牲だったのだ!!」

「ああそう」

魔女の周囲に魔力が渦を巻く。落雷の直前に似た音がする。

「正直言ってどうでもいいわね!!」

魔女が吐き捨て、彼女の術が完成する。視界を埋め尽くす程の光を伴う放電現象――雷火の魔女の異名其の侭に。

「くっ……!」

四方に障壁を展開する。雷が障壁の表面を舐め上げる。

「押し負ける……!」

焦りに駆られるエラムの前に、魔法陣が表示された。

《転移魔法を発動しますか?》

エラムは迷わず魔法陣に触れた。