雷火の魔女が次々と放つ魔術をかわし、相殺し、受け流す。儀式に用いている呪具を破壊されないようにしなければならない為、必然的にこちらの陣営は防御に回る。

「――燃えなさい!!」

「こんな狭い空間で火炎なんて……!!」

部下が叫ぶと同時に発現した障壁が炎を呑み込み、跡形も無く消滅させた。別の部下が呼んだ無数の影が触手の様に伸び、魔女を拘束せんと取り囲む。

「光よ!!」

魔女が唱えると光球が煌めき、影を消す。

「囲め! 相手は一人だ! 怯むな!!」

叫びつつ、エラムは脂汗をかいていた。エラムは儀式の為に動けず、この場にいる魔術師達は儀式の為に集めた戦闘を不得手とする者達。しかも、

「雷火の魔女は、対魔術師の戦闘を得意としている……!」

暗闇の中で誰かが呪文を唱え、誰かが走り、誰かが悲鳴を上げ、誰かが倒れる音がする。

そして、

「はぁい? お元気かしら。顔面蒼白に見えるわよ?」

諸悪の根源が儀式用の魔力ケーブルを引きちぎり、エラムに向かって来ていた。