傭兵達は数組に別れ、それぞれの組で扉を囲むように陣形を組んでいた。司令塔役を務める鎧兜の男の指示に従い、サイードはその中のひとつ、位置関係上雷火の魔女が突入してくる可能性が最も高い扉の後列に待機する。
儀式の決行まで半刻を切った。魔女が攻め入るならそろそろだろうと皆が判断していた。
それは正解だった。
鋭利な風の刃が一閃。外側から扉の閂が切断される。重厚な金属がさながらバターの様に滑らかな切断面を晒す頃には、爆風が前衛にいた者達を一斉に吹き飛ばしていた。
風の中には小柄な人影。

「――雷火の魔女!」

体勢を崩していた後列の者達が武器を振るう。
その間隙を縫って蜂蜜色の髪の少年がサイードを目掛けて向かって来た。