「凄い物だな、魔法使いの力というものは」

感嘆を漏らせば、少女は激しくかぶりを振った。

「違います! ……わたしは人間です。……そのはずだったんです」

組んだ指先に力が籠る。

「わたしにとってはこんなにも示されている事柄を誰も気付かないのが不思議でなりません。それとも、気付いて無視しているのですか?」

少女の細い肩が小刻みに震えてる。その顔は恐怖に染まっていた。

「遺跡は最初からわたしに語り掛けてくれました。遺跡は生きているのです。命が脈打っているのです」

「すま、ない。少し、ついていけない」

宥めるように言うと、少女は青い顔で震えた。

「サイードさん、あなたはこれからここで何が行われるかご存知なのですか? わたしはもうおそろしくて……」