広さの割には人がいないとケトルは思った。いくつかの部屋を覗いたが、何かの器具や薬剤が積まれている物置らしき部屋や、無人の小部屋ばかりである。通路の一部は水路にもなっているようだが今は水が流れていない。見かける人間は警備係を除けば魔法使いか、あるいは家事使用人らしき格好をしている。
ケトルは頭の中で円型の皿を思い浮かべながら進む。時折姿を見せる鼠や虫の類を剣で威嚇し追い払う。
そうするうちに、ふと、怒鳴り声が聞こえた。ケトルが部屋を覗くと、ローブを着た中年の男が武装した家事使用人を相手に怒鳴り散らしていた。