マイトはふと、夜が薄くなっているきていることに気付いた。窓の外が夜明け前の青に包まれている。間もなく東の空は白み、早起きの鳥が囀り始める。

「もう今日は眠れそうにないし、だったら走ってスッキリしたい。寝間着を着替えたらすぐ行って来る。夜中なのに付き合ってくれてありがとな」

「お役に立てて光栄だ。僕もたまたま眠れなかったし気にしないで」

「おう」

少年はニカッと笑った。その表情に先程までの陰りは無い。
伸びをする少年に、マイトはなんとなく気になったことを聞いてみた。

「ところでケトル、もしミーナが本当に君のことを好きだったらどうするの?」

開いた扉の向こう、少年が肩越しに振り返る。

「ミーナか……。可愛くないわけじゃないんだけれど」

少しの思案の後、言った。

「英雄豪傑ってだいたい女絡みで悲惨な最期を迎えるじゃないか。おれはそうなりたくないなー」

マイトは頷き、意味を失い始めた燭台を扇ぎ消した。