「相変わらず混沌とした品揃えだな。繁盛しているのか?」

「失礼だなぁ。これでも生活を切り詰めなくてもいいくらいには、やっていけてるんよ」

「それは悪かったな。てっきりお前のことだから、客に言われるがままに値引きしてしまっているかと思ったのだが」

「う……」

「お、目を逸らしたな。図星ってところか」

「……そこまでじゃないけどなぁ。これでもテロルに鍛えられてそれなりに対抗できるようになったんよ」

「そうだろうとは思っていたが、あいつは親友の店でも買い叩くのだな」

「そこで手加減されるのも違うしなぁ。それになぁ、商売のイロハを教えてもらったからありがたいんよ」

大人達の会話はそこで一旦途切れた。フランとラザが見上げると、ヘリオスとフィルはカウンター代わりの小さな机を挟んでいながら、同じようにして苦笑を浮かべていた。

「テロルといえば、あいつ今どこにいるんだ?」

「また厄介事に巻き込まれてるって手紙が来たんよー」

二人の話題が共通の友人へと移行して行ったので、フランは上げた視線をそのまま一回転させた。

(ヘリオスさんが雑多って言うのもわかるわね)

魔法道具類を売るこの店は、床から天井まで数多くの商品が陳列されている。中には得体の知れない物も多く、今も、天井から吊り下げられた手足と顔のあるランプが目玉を光らせてフラン達のいるあたりを照らしている。

(ふつうのランプには目玉なんてないわ)

だがここは魔法のかかった道具を売る店である。不可思議な力を持つ道具なら何があってもおかしくはない。
そういう点も含めてフランはこの店が気に入っていた。尋常ならざる店内を見ているだけでも楽しいし、わくわくするからである。
だがフラン以上に、彼女の主人であるヘリオスの方がこの店を気に入っているようだった。友人の店ということもあるだろうが、何かにつけて立ち寄るのである。