先日、国立新美術館で開催中のミュシャ展に行ってきました。

ミュシャと言えば広告イラストが浮かびますが、今回の展示の目玉は「スラヴ叙事詩」という絵画です。スラヴ民族の伝説や歴史を時代考証を混ぜながら描いた連作。
全部揃ってチェコ国外で展示されるのは今回が初とのこと。つまり貴重な機会です。

とにかく巨大なので、混雑していても人の頭が邪魔になることはあまりありませんでした。絵によってはほぼ等身大の人物もいるので、まるで映画のエキストラに紛れ込んだかのような不思議な感覚でした。
ちなみに持ち運びをする時には巻物状態にするそうです。

画材は油絵とテンペラ(卵と顔料を混ぜたもの)が中心。

その他、パリ時代の広告イラストやアメリカ時代の作品等々。


まず思ったこと。
(職業的に当たり前のことなのですが)画力が高くて圧倒されました。展示ブースの後半にスケッチ等もあったのですが、あんなのをサラッと描いていそうで、プロの凄さを感じました。

一連の作品を見て気付いたのは、絵のどこかに必ず目をかっ開いたカメラ目線の人物がいるということと、平和的なテーマの時に輪っかを描き入れること。あと女の好み。
どんな群衆の中にも必ずこちらを見ている人物がいます。その目力の強さたるや!上手く言えないのですが、何かを突き付けられている気持ちになりました。


一般的にスラヴと呼ばれる地域の歴史的背景、作品が描かれた二十世紀初頭の民族運動のうねりといったものに馴染みがない人がほとんどだと思うので、音声ガイダンスを借りた方が理解の助けになると思いました。私は音声ガイダンスを利用するの初めてだったのですが、大分助かりました。あと、音楽が気分を盛り上げてくれました。

声の出演は女優の槙さんと声優の三宅健太さんでした。
三宅さんて『コンクリート・レボルティオ』のドンさんの人じゃないですかヤッター!あと四月から『僕のヒーローアカデミア』にも出演しますよね。


調べたところ、スラヴ叙事詩を描き始めてから欧州情勢がめぐるましく変わり、完成した頃にはミュシャの作風は前時代的だとされてしまったそうで、ちょっと切ないです。あんなに連作の最後を「スラヴ大勝利!」みたいな絵にしたのに。時は二十世紀に入って前衛芸術真っ只中だから、油彩はもう古いとか、本人がもう高齢だとか、そんな感じでしょうか?
しかし使われた技法は当時の最新のものだそうです。凄い…。老いても新しい技法を試すその意思が凄いと思いました。