「やっほ。ミナセじゃん、久しぶりー」

「ああ、いつ以来だっけ」

「ねーえ、たまにはこっちの教室にも顔出してよ」

「わり、よその教室って入りにくいんだよ……」

「えーナニソレー」

「でも、ちょっとわかるかも」

「そおー?」

千織が廊下で女の子と話している。しかも二人。どちらも去年千織と同じクラスだった人。名前は知らない。
……で、なんたってあたしは隠れて立ち聞きなんてしてんのかしら。
柱の影から千織達を伺いながら、溜息をひとつ。こんな怪しいことしてないで、さっさと出ていくなりなんなりして会話に加わればいいのに。

「……駄目ねん」

例えばユミナっちあたりが相手ならそうしていた。
今それができずにいるのは、あの二人が共通の知り合いではないから。
会話の邪魔をしたくないけど、会話の内容は気になる。
だってあたしは一年生と二年生の時の千織をよく知らない。小学校まではよく遊んでいたけど、中学生になってから生活環境の違いで疎遠になった。それが三年生になって同じクラスで、付き合いが復活したのが現状。

「でもこれまるっきりストーカーだわ……」

「高槻さん、何してるの?」

背後からの声にあたしは肩を跳ね上げた。