「ちおりん、七草粥を食べるわよ!」

「は? なに? 七草?」

毎度のごとく人の家に合鍵で上がり込んだルカは、開口一番にそう言い放った。人の部屋で仁王立ちをするなっつーに。

「今日は七草粥の日よん。だから今夜うちに食べに来なさい!」

「あー、うん」

「何よ、テンション低いわねん」

「明日で冬休みが終るってのにテンション上がるかよ」

明後日から新学期だ。
中学最後の三ヶ月。正確にはもっと短い。きっと、あっという間に過ぎてしまう。

「受験もあるってことわかってんの?」

「だから今日もこうやって、勉強道具を持って来たわん!」

「あそー」

筆記用具を掲げ無意味にポーズを取るルカに冷ややかな視線を送っておく。
受験生という言葉がのし掛かってくるようだった。お互い同じ志望校。どうなるやら。
この一年近く、いつもルカがいたせいで、それまではどう過ごしていたのかがさっぱり思い出せない。唯一確かなのは、ルカと離れがたいということ。
寂しさに似た感情を覚え、わざと別のことを口にした。

「七草ってじいちゃん生きてる時も食べたことないんだけど、この辺自生してんの?」

「昔は生えてたらしいけどねん。うちは八百屋で買ってるわ」

ルカもオレと同じような顔をして笑った。