『オイレンシュピーゲル参 Blue Murder』読了

冲方丁


再読。


君の腎臓を食べたい。

一巻と同じくそれぞれにスポットを当てた短編×三、貫くテーマは初出撃時の記憶――「仲間殺し」――そして「レベル3」とは。

『スプライトシュピーゲル』ではお馴染みの犠脳体兵器がこっちでも登場。しかも遠隔操作でハッキング系というのが厄介です。涼月でなくともああなりますよ…。
登場するたびに吹雪の献身の凄まじさが明らかになっていくの、純愛で済ませて良いのかわからなくなりました。
陽炎と未成年娼婦のやり取りが良いです。名前も出ていないのに良いキャラすぎます。
夕霧が恋をして、凄くお似合いのカップルで、可愛いー可愛いーってしたいのに不穏さが積み上げられていくのがひたすらに辛かったです。恋した夕霧の視点から見る世界は一面にロマンチックな幸せであふれていたのに…。文章がふわふわした書き方になっているのも個人的にはポイント高いです。

今回はなんだかいつもよりも恋愛要素が強めでした。
今回は三人一緒なのに別のことを考えていることが多く、ばらばらで、だから最後のシーンが…。何故彼女達はチームなのか、ケルベロスは三頭の犬であるの訓示は何のためのものなのか、その結びつきの必要性を示してきた巻でした。

巻末のおまけでどんな顔すればいいのか。触手とはマニアックだな吹雪君。というか解説役としての陽炎の汎用性が高すぎます。

『スプライトシュピーゲルU Seven Angels Coming』読了

冲方丁


再読。

『オイレンシュピーゲル』で事件の概要を把握した後に『スプライトシュピーゲル』で全体像を知るという読み方を今回はしています。
そんなわけで、ロシアの人工衛星落下から始まるバベルの塔崩落事件を別視点で描いています。

チーム一丸となって対処にあたる少女達。
一般人キャラだった冬真が人質に取られ放射能汚染の危機に晒されたりと、展開は一巻よりもハードに。鳳が「お前の生身はどこまでだ」と敵に言われるシーン、ワルガキな乙が良き師に出会うシーン、雛の物騒極まりない天使祝詞のシーンなど見どころ満載。紅い特甲児童を始めとしてミハイル中隊長が登場するなど『オイレンシュピーゲル』とのリンクもより増量しています。

個人的にはターナー・カルテンボーンの不気味さ、愚かさ、罵倒の語彙の無さが好きです。

『オイレンシュピーゲル弐 FRAGILE!!/壊れもの注意!!』読了

冲方丁


再読。


ミリオポリスにロシアの人工衛星が墜落し、事態の対応の為に涼月/陽炎/夕霧はそれぞれ個別の任務に就く。

ここまでシリウスコミックスで漫画化されているので小説読むのが怠い人は二階堂ヒカル版コミックスを読んで欲しいです。
最初から最後まで熱量。都市をぶっ通してテロ組織がリレー開催、仲間と引き離されてひとりで事件に向き合う少女達の三者三葉、十二人の怒れるロシア人、崩壊する塔――そして別組織の空飛ぶ特甲児童。
個人的にはオイレンシュピーゲルではこの巻が一番好きです。

今読むとやばそうなワード頻出でそのネタ使っていいのかとなります。実際数年前はシリウスコミックス版の連載が最後まで続くか危惧したりもしましたが、小説シリーズも完結したので気にしません。面白いんだけどなぁ。

『左門くんはサモナー』

沼駿


最終巻です。
一巻を踏襲する表紙の構図、しかしあの頃よりも格段に賑やかになりました。

「いい人だね」から始まって「悪い女だな」で終わるお話。


ううん…、まだ上手く呑み込めていないです。最終回が唐突に数年後に飛んだように、取って付けたように思えてしまって。

ネビロスさんと左門くんの関係性の描写やその決着、アンリさんと左門くんの関係の掘り下げなんかは良かったのですが。あと九頭竜くんとの友情の発展も。
天使ヶ原さんとの関係性がよくわからないまま終わったなと。アンリさんのいつか抱いた「こいつら気持ち悪っ」という、なんとも言語に変換しにくいものから変化したようには見えなくて、でもそれで良かったのかもしれないとかなんとか。上手くまとまりません。
とにかく、天使ヶ原さんがどんな人生を送ろうと最期には左門くんが現れて一緒に地獄へ行くのが確定ということで良いんですよね。ここを読み違えていたら恥ずかしいですね。

中盤以降から好みではない話が増え、それとは別にネタ切れやマンネリ化や中弛みを感じずにはいられませんでしたが、これは自分の趣味嗜好だからどうしようもないです。でも私が惹かれたのは間違いなく一巻のあの雰囲気でした。
毎週感想文を漁っていると、男女で感想が割れていたのが面白かったです。自分のマイノリティさが浮き彫りになってのたうち回った日もありましたが。

思うところも結構ありましたが、何だかんだで楽しんだのもまた事実。ロジックで作られた作品は正直読んでいて気持ちが良かったです。
主人公のキャラ特性的に少年漫画として連載するにはかなりのバランス感覚が必要だったのではないかと思いました。

あなたの宝貝はどこから?

私はろくごまるにの『封仙娘娘追宝録』と藤崎竜の『封神演義』を同時期に読んでいたのでどちらかわかりません。

なんか勘違いしている人がいましたが、似たモチーフの作品がたまたま同じような時期に世に出たというだけで、内容も全然違います。

ただ、中華ファンタジー(SF要素あり)が好きな人にはどっちもオススメです。
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