引き続きろくごまるに御大の作品を再読中です。


季節は冬、雪の降る季節です。
ここから作中時間はずっと、冬真っ只中です。


カラー口絵でまさかの女性キャラの温泉ですよ。ろくご作品のサービスシーンなんてここくらいしかありませんぜ、皆様方。


さて、この巻では和穂と殷雷を巡り、具体的なことは何一つ不明ですが何か大きな陰謀が動き始めているような描写がありました。
そう、宝貝を集める正体不明の組織の登場です。
全貌がわからないことからくる不気味さがいい感じです。
そして組織からの刺客が放たれて、どうするどうなる!?というあらすじですね。


若干のラブコメの気配を感知しつつも、和穂の精神性によりその気配は霧散。
「恵潤に嫉妬する=殷雷に全てを任せているだけの女」と判断した恵潤さん。深霜さんにも聞かせてやって下さい。
和穂と殷雷の関係の在り方は、恋愛沙汰とは別のところにあるような気がします。今後どうなるかはわかりませんが、今のところは。

今読み返すと、殷雷の態度がのっけから泣かせてくれます。初めて読んだ時はこんな駄目駄目な殷雷は嫌だーなんて思っていたのに。
情に脆い欠陥が、作中で決して否定的に描かれていないんですよね。

しかし一方で、その欠陥を容赦無く描かれはするのですが。
殷雷刀と同じ四本刀の一振りである恵潤刀。彼女もまた、情によって判断を誤る欠陥を抱えていました。しかも致命的なレベルで周囲が見えなくなってしまいます。

どうしてこの刀達はこうも人間味に溢れているのでしょうか。

違う製法でどれだけ似た能力を持たせられるか、という実験から生まれた四本刀ですが、情に振り回されるという欠陥も似ているのは何故なのでしょうか。兄弟刀ではなくご近所さん的な位置付けだという話ですが、揃いも揃って、という感じではあります。
また、一振りだけ情に関する欠陥の無さそうに見える刀もいますが、その刀は性格以前の欠陥を抱えてしまったのは何故なのでしょうか。

武器に人格を与える意味は、今までの殷雷を見ているとなんとなくわかるのですが。


あとは、剛始と剛終兄弟みたいな考え方の人は多いだろうなーとか。
珍しく(航昇以来でしょうか?)同情の余地の無い悪役でした。
狂った宝貝は怖いのですが、正直ゾクゾクしました。


復讐に燃える勇吾少年が登場する一方で、復讐なんてするほど暇じゃないと言ってのける梨乱の格好良さが際立ちます。
仲の悪い姉妹に例える言語センスの見事さ!これだからろくごまるにはやめられません。

最初に読んだ時は捜魂環の態度がシビアに感じられたのですが、再読してみて違いました。道具にしては充分に義理立てしていますよ、これ。どちらにも極力角を立てないようにしていると感じました。

なんとなく、今回は道具としてのアイデンティティについても描いているのかなーと思ってみたりもしました。