ろくごまるに氏の著作を再読中です。


前巻からの時間経過は不明です。季節がわかりそうな描写は枯れ葉くらい。秋ですよ。


表紙可愛い。


さて、今回の話は光と影の戦い――というほど大袈裟な話ではないですが、対比される二者の存在が軸になっています。前巻が入れ子的な物語構成に対しての、二極構成です。

あと今回はボス戦時に殷雷刀が不在のため、珍しく、飛び道具vs飛び道具の戦いです。ちょっと思い返してみたのですが、飛び道具同士のバトルは長編と短編含めてもこれだけのような気が?
おっと、「飛び道具同士」とか言いましたが、正確には片方は飛び道具ではありません。じゃあ何なのか、というのはネタバレなので伏せます。
…いやぁ、龍華師匠は無茶しますね(目反らし)

記憶喪失ネタもありますよ。
自分が何の宝貝だったのか忘れてしまった宝貝、綜現台が登場します。彼の正体はヒントありまくりですし、名は体を表すを地で行く能力なので推理してみて下さい。
私は初読時の記憶がおねショタに吹っ飛ばされて残っていないので、綜現の正体を当てたかどうかも覚えていません。当時はおねショタなんて言葉がなかったというのに、時代を先取りし過ぎです、御大。
流麗が綜現に告白をする場面で何故かドギマギしてしまう和穂も、年齢相応で良いですね。新鮮です。

ところでこの作品、というか作者、「ピンチの時に(都合良く)秘めた力が覚醒」という描写を避ける傾向にあるように見えます。
主人公の和穂にしたって「土壇場で封印を解いて仙術を使う」なんてことは神農の不手際でも無い限りは絶対に無いわけで。そして、神農の格を保つためには、そんな不手際はあり得ないのです。(ついでに、和穂の血筋が特別という設定もやらないだろうという安心感があります。今更扱うには遅すぎる設定ですし、血筋云々でなんとかなるなら今までの彼女の努力はなんだったのでしょうかという話になるので)
脱線から戻しますが、つまり今回はそういう「土壇場で覚醒、からの無双」ネタをやろうとしたのかもしれないと思いました。これは個人的に、和穂や殷雷でやられていたら白けていたかもしれません。ですが、ゲストキャラなら気になりませんでしたし、何より覚醒していきなり無双しなかったところも好感触です。
この作品は小手先の技術と知恵で戦況をひっくり返すのがいいですね。


他に気になった箇所がいくつか。

冒頭の牛車と馬車が混ざっているのは誤植でしょうか。

読み返して気付きました。流麗って殷雷よりも少しだけ背が高いんですね。そして殷雷は和穂よりも頭ひとつ分くらい高い。
…ふむ。

栄秋の台詞がやたらに脳内でアテレコされると思ったら、あれです、『千と千尋の神隠し』の銭婆の声で再生されるんです。がめついお婆さん。
栄秋も弾勁も、ラストの会話を読んで一気に好きになりました。この後どうするんでしょう、想像はつきますけども…。

弾勁といえば、肉体を自在に変形させるあたりが凄くツボだと読み返していて気付きました。
目を焼くシーンは初読当時から興奮していましたが。

おっと。

塁磨杵とか豪角刃とか、良いキャラが多いのは良いです。でも塁磨再登場であんな性格とは思いませんでしたよ。