『血界戦線』はアニメ未視聴、原作未読、せいぜい主要キャラの顔と名前が一致する程度の知識しかないのですが、『魔術士オーフェン』の秋田禎信氏がノベライズ担当と聞いて購入しました。
なにせ私、好きな文体を問われたら、秋田節と答えるくらい秋田氏の文体が好きでして。だから感想はだいぶファンの欲目が入っているかと思いますが、何卒ご了承下さい。

あ、でもこの感想書く前に、ニコニコで無料配信されている一話を視聴してきました。だからすこーし知識量増えましたよ!


では、以下感想です。極力ネタバレしない方向でいきます。
はっきり言って面白かったです。

レオがツェッドさんに「ザップさんのことをいい人だって言った少女、バレリー・バーマ」のエピソードを語ります。
つまりこのお話は、レオの視点で見たザップさんのことなんですね。

というわけで主役はザップさん。私はこの人のこと屑だって聞いていたのですが、なんだか普通に格好良くないですか?いや、充分ダメダメな部分もありますが、それを帳消しにして余りある精神力を見せつけられました。単に強いから格好いいのではなく、強くあるための姿勢があるから格好いいのかなって。バレリーとのやりとりも、段々仲良くなっていくのが微笑ましかったです。公園で自転車に乗る二人が可愛いです。

レオは視点キャラに終始していました。
しかしちょいちょい地味ながらも実力を見せつけてくれます。
通行人から自転車を借りつつもしっかり返しているあたりで好感度が上がり、妹がいるからバレリーにも慣れた態度で対応するシーンでまた好感度が上がり…。
中々やりますね、彼は。
最初にアニメで見た時は、目が綺麗な人(だからもっと開いて欲しい)という印象だったのですが。ここまで見ていて気持ち良い性格だとは。

クラウスさんは今回、出番は少ないけれどもライブラのリーダーとして決める場面はしっかり決めていました。
可愛かったのはボックス席に入るシーンで、格好良かったのはライブラの矜持を見せるシーンです。

K.K.さんは任務の傍ら、お母さんとしての顔を見せるのが良かったです。貴重なポジションだと思います。もっとバレリーと絡んで欲しかったかも。
序盤の「なんでパパばっかりなのよ〜」の辺りの台詞が好きです。

スティーブンさんは渋かったです。色々と騒動に慣れている空気を出していましたね。
遺伝子鑑定の結果を告げた後即座にレオにベルなんとか風生物の話題を振るシーンがツボでした。切り替え早すぎます。

チェインは話の都合上、ザップさんを煽るシーンだけでしたが、私は別に気になりませんでした。キャラクター紹介を見る限り、一歩引いた立ち位置なんだと思っていたからかもしれません。間違っていたらご指摘下さい。
広報誌はなんかもう、犬猿の仲なんだなーと。

そしてバレリー。今回のゲストキャラクターにしてヒロイン、十年後の未来から来たザップさんの娘…と自称する少女。ライブラは彼女を送り込んだ黒幕と対決するわけですがさておき。
バレリーの印象は、年齢相応ながらもしっかりした子だなぁと。これは生育環境の影響なのでしょうが。あと台詞回しが面白い。性格が無理のある感じではなく、普通の女の子って感じで、だけど普通の十歳よりも強い子だと感じました。そこが可愛い。
この性格結構好きなのですが、なんて形容したものか迷います。正直ですね、ありがちな「話を動かすために馬鹿な言動をするキャラクター」でなかっただけでだいぶ好感度高いです。
個人的にはレオとお友達になるシーンが好きです。レオとの距離の詰め方が良かったです。


キャラクター以外では、HLの風景描写が印象的でした。
例えば、朝のオフィスでザップさんとレオが会話するシーン。霧がかかった街並みや、ひんやりとした朝の空気の感触がまざまざと感じられました。
また、月の下で会話するバレリーとレオの静けさと、寝たフリをするザップさんの優しさ。まろやかで包み込むような、家族の空気感を感じました。ペイパームーンというタイトルにかかるシーンだと思います。
夜に全ての決着を付け、朝の静寂の中で物寂しさを抱えて語らう描写に、あぁ秋田先生だなぁと思いました。このじんわりした余韻の書き方本当に好きなんです。

秋田先生らしさといえば、普通にHLの風景を描写する中でさらりと「ヘンゲモネンギャコボラブツトルンデグがギャッキャウテベン風にガボクスラッパリラしていた」という描写がナチュラルに挟まれたあたりも凄くらしかったです。
というか不意打ち止めて下さい。通勤中の電車内なのに吹きました。

髭医者といい、こういうシュールさがいいですね。面白かったです。