「妹に彼氏が出来たら? 家の敷居を跨がせません。それからそいつをぶん殴って、一人で枕を濡らします」
「俺はシスコンではありませんよ? 自分の半身を極限まで大切にしているだけです」
「俺は夜麻登。櫻井夜麻登。古事記や日本書紀では当時の日本をこう表記したのですよ。だから名前の意味は『大和』と同じです」
「ほらほらテスト前だけ俺に泣き付かない。全く……普段から言って下さればみっちり勉強を教えて差し上げましたものを……」
「好きな色……ですか。そうですね、俺は緑色が好きですね。癒しの色です。赤とは補色関係ですね。そうそう、一般的に赤はエネルギッシュで青は冷静なイメージがあり、相反する色ですよね。その二色の要素を併せ持つが故に、二面性があるのが紫色。その紫と補色関係にあり、他の色とも相性が良いのが黄色です」
「あのー、止めて下さいよー。『女の子だと思ったら実は男だった時の絶望感は異常』とか本人の眼前で言うのは」
「女装はしますけれども、それはあくまで妹に化けているに過ぎません。ですから、俺は所謂『男の娘』ではありません。女装男子です」
「ゆ、由弥那……? 由弥那? 落ち着きましょう由弥那!?」
「まあまあ、お茶でもどうぞ。栗羊羮もありますよ。自信作です」
「生徒会長、今日の総会は第二会議室ですよ」
「先生から許可を得たので、僭越ながら俺が司会進行させていただきます」
「剣道を止めたのは小六だったでしょうか。稽古をつけていた父から『お前はもう剣を握るな』と言われ、目の前が真っ暗になったのは。……今回想すると、どんな家ですかーって話ですけれども」
「流石にブランクあるとキツいですね……」
「い、今、妹に何か不幸があったような気が……!?」
「……もしもし、夜麻登です。はい、流夏? ……何ですか流夏!? 『ユミナっちが大概と叫んで倒れて終わった』って何ですか!? 『熱射病かも』!? それを先に言って下さい、今そっち行きますから!!」
「流夏、あなたはよく漫画やアニメの様なスリルを望んでいますよね。日常は退屈ですか? ですが、今の俺達がいるこの日常こそ、漫画やアニメの中の彼らが望んでも叶わなかった『何も起こらなかった平和な世界』だとは思いませんか?」
「千織はもうわかってますよね」
「ええと、そろそろ自覚するべきだと思いますよ、千織? 後悔先に立たずと言うではないですか」
「舞鶴君の写真は……その、何て言ったらいいかわかりませんが、最初見た時は普通だと……思ったんですよ……」
「舞鶴君は眼鏡を外すと性格が豹変しますよ! なんちゃって」
「宇治川君は誰かの手を引くよりも、後ろから背中を押すタイプですよね」
「流石は爆弾狂こと宇治川君。破壊と再構築はお手の物ですか」
「うちの妹は自分に関しては疎いと言いますか、無自覚ですからね。色々と」
「バレンタインデーって妹がチョコレート貰って『兄さん、食べきれないんで手伝って下さい』とかほざく日ですよね? うちの妹、貰う側で定着していてこの人生で一度たりとも俺にチョコレートをくれたことが無いのですが」
「自主性も無く無為に過ごすだけで周囲が勝手に自分を高評価してくれる? あっはは。そんなイージーモード人生なんか、俺は御免ですねぇ!!」
「俺はとても弱い人間です。どんなに強がりを言っても一人では戦えない。だから皆に助けを乞います。どうか、俺に力を貸して頂けますか……?」
* *
夜麻登「俺、別にシスコンとか妹萌えではないですからね」
千織「あー、はいはい」
舞鶴「なんか櫻井さんも同じようなこと言ってたような……」
流夏「スルーよ! んで、話変えちゃうけど、ヤマトはいちいちセリフが長いわねん?」
千「ヤマトは真面目なんだよ。あんたは意味不明ワード叫びすぎだっての」
宇治川「なぁーんかよぉ、櫻井妹は溌剌って感じがしたけど、櫻井兄は落ち着いた喋り方だな?」
舞「……たまに妹関連でエキサイトするけどね」
由弥那「でも私、兄さんがいるから安心して動けるんですよ?」
流「ヤマトは真面目キャラかと思えば、意外とノリが良くて、ぽろっとヒドイ発言もするし、オールマイティーよねん」
夜「俺は自覚あるからいいんです」
由「『俺は』って何ですか!? 私は兄さんと違ってヒドイ発言なんてしないですよ!?」
宇「さて問題でーす。本当にタチが悪いのはだぁーれだー?」